YouTube動画を見すぎると自信過剰になる!? 興味深い研究が報告されている。
■YouTube動画を見すぎると自信過剰になる!?
興味関心のある趣味やアクティビティをテーマにしたYouTube動画はついつい時間を忘れて見てしまうものだ。実体験がない趣味であったとしても、うまく解説されている動画を見ればやってみようという気にさせられるかもしれない。
世界が広がる体験をもたらしてくれるYouTube動画の数々だが、気になる研究も報告されている。物事をうまくこなす他者の動作を見るほどに、人は“自信過剰”になるというのだ。
アメリカ・シカゴ大学の研究チームが2月に心理学系ジャーナル「Psychological Science」で発表した研究では、6つの実験を通じて、他者の動作を見る回数が多いほど当人にその動作ができる自信が高まることが報告されている。しかしその自信は“幻想”で、実際の技量はまったく向上はしてないという。
実験のひとつでは、193人の実験参加者にダーツ投げを解説するビデオを見てもらった。その際に2グループに分け、Aグループには解説ビデオを1回だけ見てもらい、Bグループには20回繰り返して見てもらったのだ。そして自分がどれくらいの得点を得られるのかそれぞれ予測してもらったのだが、ビデオを20回見たBグループのほうが予想得点を高く申告している傾向が浮き彫りになった。
その後実際にダーツを投げてもらったのだが、両グループの間に有意な技量の差は見られなかった。つまりビデオを繰り返し見たBグループは“自信過剰”になっていたのである。
同様のほかの実験では、テーブルに置かれた物を落とさずに勢いよくテーブルクロスだけを引き抜く「テーブルクロス抜き」のビデオを実験参加者に見せたのだが、ここでもビデオを20回見たグループは自分にもできると申告する者が多くなった。しかし実際にはその多くはほかの未経験者と同じように失敗している。
解説ビデオを数多く見れば確かにより多くの知識を吸収できるが、感覚を伴わない体験であるため実際の技量の向上には直接結びつくものではないことを研究チームは指摘している。そしてビデオの人物と自分を同一視する度合いも高まり“自信過剰”になってしまうのだ。
特にプライベートな映像が多いYouTube動画は、撮影者の身になって楽しめるものも少なくない。動画を見すぎることで“身のほどを忘れる”ことがないようにしたいものだ。
■YouTubeは最大の“宿題の敵”
子どもたちの“なりたい職業”にユーチューバーがランクインするほど、我々大人が考えている以上にYouTubeは子どもたちの間でメジャーなコンテンツであるようだ。
オンラインの学習支援サイト「Firefly Learning」が11歳から15歳の小中学生2000人以上に、宿題についての実態を探るアンケート調査を行なっている。家で宿題をするに際して妨げになっているものを挙げてもらったところ、YouTubeが最も“宿題の敵”であることが浮き彫りになっている。
回答した子どもたちの24%がYouTubeが最も宿題の妨げになると答えていて、続いてテレビとスナップチャットが18%、フェイスブックが12%、インスタグラムが6%となっている。子どもたちへの影響力という点で、YouTubeが頭ひとつ抜きん出ていることになる。すでにテレビを抜いていることも特筆すべきであろう。
アンケート調査では、公立学校の生徒よりも私立学校の生徒のほうが宿題をやり遂げる割合が高いことも明らかになっている。ともあれYouTubeがこれほどまでに子どもたちの間でメジャーだということは、不適切な投稿動画にはこれまで以上のチェック体制が必要になるだろう。
YouTubeはiPhoneやAndroidスマートフォンで、子ども向けの動画だけを楽しむことができる「YouTube Kids」(ユーチューブキッズ)をリリースして世の親たちから好評を博している。しかし一方でこのYouTube Kidsをすり抜ける子ども向けのコンテンツを装った不適切な動画が組織的に投稿されている実態も明らかになり、AIと人力によるチェック体勢の強化にも余念がない。
人力の監視メンバーである「Trusted Flaggers」のあるボランティア監視員からは、YouTubeの親会社であるグーグルは子どもたちを守ることを“システム的に失敗”していると主張しシステム上の欠陥を指摘している。子どもたちへの影響力が増しているYouTubeだけにまだまだ見過ごせない課題があるようだ。
■テレビを見てはいけない11の理由
テレビに加えてYouTube動画と、我々の生活の中にますます多くの映像コンテンツが取り揃えられてきている。ニールセンの調査では、アメリカ人は週に平均34時間をテレビ(YouTubeなども含む)の視聴に費やしているということだ。
これほどの時間がモニターの前で失われている実態に警鐘を鳴らすべくライフスタイル研究専門家のクレイグ・デュー氏はテレビ(動画を含む)を見るべきではない11の理由を解説している。
1.時間の浪費である
当たり前すぎる大前提としてテレビは時間の浪費である。ドリンクを飲んだりスナックを口に運ぶ以外はテレビの前では基本的には何もできないので、ほかにすべきことがある場合は貴重な時間を奪う“時間泥棒”になる。昼寝や仮眠をとったほうがまだましだ。
2.人との交流を妨げる
テレビに時間を奪われば単純に家庭内の会話も減るだろう。そして他者に接する機会も少なくなり人的交流も次第に失われていく。映像コンテンツの視聴が大切な人々との交流よりも楽しく感じられてきたら要注意と言えるだろう。
3.人をネガティブにする
テレビ番組には実はポジティブなメッセージはなく、視聴者をネガティブにするということだ。テレビCMも基本的には見た者に欠落感や不足感を感じさせてモノやサービスを売るという手法で作られている。したがってテレビを見続けているとどんどんネガティブなっていくのだ。
4.ものの見方を変える
テレビ番組では何かと極端な物事や現象が扱われる。またショッキングなニュースやスキャンダルも絶えることがない。テレビが持つこうした傾向が見る者の思考に悪い影響を及ぼす。
5.非現実的な期待を抱かせる
テレビによって現実認識が歪められる。目をみはる出来事や素晴らしい人物で満たされているテレビの世界が“標準”になってしまえば、現実認識が大きく損なわれる。
6.無力感を引き起こす
テレビドラマで描かれる生活が普通であるはずがない。もしテレビの世界が普通に思えるとすれば、自分の実生活がとても空虚なものに感じられ無力感、無能力感を引き起こす。
7.CMが潜在意識下に影響を及ぼす
テレビがなぜ存在するのか原点に立ち戻って考えてみれば、すべてはモノを売るためであることは明らかである。番組とCMの相乗効果で視聴者はモノを買いたくなるように潜在意識下でプログラムされているとも言えるのだ。
8.自己コントロールと自律心が失われる
テレビ視聴が習慣化しているということは、その時間内は自分の身をテレビに委ねていることになる。そしてこれが自己コントロールと自律心の喪失に繋がる。
9.健康への悪影響
テレビの視聴が長引けば当然、1日の中で動かない時間が長くなる。ただでさえ仕事で椅子に座りっぱなしの人が長時間テレビを視聴することは特に健康への悪影響が懸念されてくる。
10.子どもに受け継がれる
親がテレビ好きであればその子どももかなりの割合でテレビ好きになる。テレビはただでさえ勉強で座りっぱなしの子どもの健康に悪影響を及ぼす。
11.実はリラックスできていない
テレビの前で楽しいひと時を過ごすことで気分がリラックスできるイメージもあるが、実は神経や脳を疲れさせているということだ。快適な眠りのためにも別のことをしたほうがうよい。
要するにテレビの世界に安易に身を任せずに、自分が自分の生活の“責任者”になるということに尽きるのだろう。限りある時間を有効に使いたいものだ。
参考:「SAGE Journals」、「fireflylearning.com」、「Lifehack」ほか
文=仲田しんじ
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