SNS時代の友だちの見つけ方と友情の育み方

サイエンス

 趣味の合う友人を作るにはどうすれば良いのか。同じ趣味のコミュニティに参加すれば趣味が共通する友人が作れる可能性はもちろん高まるのだが、その趣味のコミュニティ以外のグループでも“かぶって”いる人物とはさらに友人になりやすいことが最近の研究で指摘されている。狭く深い活動をするよりも、できる限り多くのコミュニティに参加するほうが友人が作りやすくなるというのだ。

■友人を増やしたいなら“浅く広く多く”の活動を

 あるコミュニティで“コア”なメンバーになろうとする人々もいるだろうが、友人を作りたいと思うのなら広く浅く多くのコミュニティに参加したほうが良さそうだ。

 米・ライス大学の研究チームが2018年9月に発表した研究では、6つのSNSの数百万単位のユーザーを分析して、ユーザー間の友情形成の実態を探っている。

「もし友人を作りたいと思うなら、できる限り多くのコミュニティで活動すべきです。さらに特定の人物と友だちになりたいと考えるなら、その人物が属しているすべてのグループに同じように属するのです」と研究チームのアンシュマリ・シュリバスタバ助教授は語る。

 もちろん同じ趣味を持つ人物とは友だちになる可能性はあるが、その特定の趣味に専念して友人を探そうとするよりも、できるだけ多くのコミュニティに参加して“かぶる”ことが多い人物ほど友人になりやすいというのである。

「古いことわざの“同じ羽の鳥は群をなす”(類は友を呼ぶ)です。そして、より類似点のある人が友人になる可能性が高いというアイデアは、友情形成において幅広く研究されている概念であるホモフィリー(Homophily)のと呼ばれる考え方に体現されています」(アンシュマリ・シュリバスタバ助教授)

 ある1つの趣味が共通する人物と共に趣味を深めていくことで友情が結ばれることもあるのだろうが、他方で人間にはさまざまな属性がある。居住地の地域的条件から食べ物やお酒の好み、音楽や映画の嗜好など、多くの属性が重なり合う人物ほど友情が結ばれやすいというのは確かに納得のいく話だ。

 ひとつのコミュニティで長く活動すればそれなりに尊敬や信頼を得られるのだろうが、時間が許す限りは気分次第で興味のある活動に参加してみることで意外な出会いが待っているのかもしれない。

■知人が親友になるのに要する時間は?

 ある調査によれば平均的なアメリカ人の「友人」は10人から20人の間だという。そしてその中で「親友」はわずか2、3人であるということだ。

 なかなか寂しい話であると共にこれは深刻な問題でもある。なぜならこれまでの研究で、友人の存在を含めて社会との繋がりが弱い人はより短命であることが報告されているからだ。

 齢を重ねてからは友人を作るのは難しいというが、うまく友情を育む方法はないものだろうか。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究チームが2014年に発表した研究では、弱い繋がりの知人たちの重要性が指摘されている。

 研究では弱い繋がりの知人たちとの束の間の交流もまた生活の満足度(well-being)をかなり高めるものであることが報告されている。そしてこれらの弱い繋がりの知人たちは“友人”にもなり得るのだ。

 米・カンザス大学の研究チームが2018年3月に発表した研究では、友情を築くのに要する時間が導き出されている。それによれば知人との間に友好的関係を築くのに要する交流時間は50時間で、そこからさらに真の“友人”になるには40時間が追加され、最後に“親友”になるには加えて200時間が必要であるという。友人を作るには、単純に交流の時間を積み重ねていけば叶えられるという側面もあることになる。

“親友”を得るには知人と290時間の交流・交際を行なうことになるのだが、それぞれの生活がある中ではなかなかの“大事業”ではある。そこで注目したいのは、かつての友人たちである。転居などで自然に関係が薄くなってしまったかつての友人たちとの“復縁”は、ネット社会の今日、ますます行いやすくなっている。“ケンカ別れ”したわけではない限りにおいて、かつての友人たちもまた“親友”候補になり得るのだ。

 米・ラトガース大学の研究チームが2011年に発表した研究では、かつての友人との“復縁”による信頼回復は短時間で可能になるということだ。かつての友人が“親友”になるのにあまり時間はかからないのである。

 そして友情を育むための“秘訣”は、相手に自分のきわめて個人的な部分、あるいは“弱み”を見せることにあるという。“親友”を得ることは努力次第でいつになってもサイエンス的には可能であるようだ。

■SNSがもたらす“友情”への悪影響

 SNS全盛時代を迎えている今日、“友情”にも変化が訪れているという。SNSが友情に及ぼしている6つの悪影響が懸念されているうようだ。

●SNSが友人についての情報を飛躍的に増やしている
 SNSが普及する以前では、友人と会ったときにお互いの近況などを話し合っていたが、SNSでは友人たちの近況が刻々とアップデートされ把握するのも大変な量になっている。情報があり過ぎることで、友人たちとの関係に新鮮味が持てなくなるかも知れない。

●オンラインゲームへの参加リクエスト
 一般的なスポーツは現地に行かなくては参加できないが、オンラインゲームはネットに繋がっている限りいつでも参加が可能だ。そしてゲーム仲間から参加を要請するリクエストもいつでも伝えられてくる。ほかのことで忙しい時や、ゲームをプレイしたくない時にこうしたメッセージがいつでも簡単に届けられてしまう状況は、友情を壊すものにもなりかねない。

●リアルな交流で話題がなくなる
 SNSやインスタントメッセージで頻繁にやり取りをしている友人たちとはいつでも最新の情報をシェアできるのだが、場合によっては直接会った時には話題がなくなるかもしれない。

●不信感が生まれる
 SNSの投稿はあくまでも主観的なものである。自分の生活をよく見せたいと思えば羨ましがられる種類の投稿をするし、不平不満を晴らしたい場合は恨みや愚痴を投稿するかもしれない。しかしそれらの投稿から実際に何が起こっているのかを客観的に知るのはきわめて難しい。そして場合によってはこうした投稿をする友人に不信感を抱くことになるかもしれない。

●深い話し合いが行なわれない
 情報を共有するには便利なSNSだが、表面的な理解のままに交流が続いていくケースも起り得る。ある話題や問題に対して深い話し合いや議論ができなくなれば、その友情もまた薄っぺらい表面的なものになる。

●オンラインに偏らない交流が必要
 オンラインに偏らず直接会うことも含めてバランスの良いコミュケーションが求められている。オンラインのメッセージはコミュニケーションを補完するものであり、直接会って話し合うことはオンラインで代替できるものではないことをよく理解しなければならない。

 SNSや各種メッセージサービスは我々のコミュケーションを大きく変えたが、友情や交流を深めるにあたってはオンラインに偏ることがないようにしたいものだ。

参考:「Rice University」、「The Atlantic」ほか

文=仲田しんじ

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