SNS全盛時代にスマホ中毒にならないための“デジタル・デトックス”とは

ライフハック

 連絡業務やコミュニケーションにおいてデジタルへの依存度がますます高まっていると実感する人も多いと思うが、そういう人物は決して人づきあいが億劫なのではなく、実はその逆で“超社交的”な人物であることが報告されている。

■“SNS中毒”の原因は“超社交性”

 人との繋がりがもっぱらメールやSNSのメッセージだけに偏ってしまっている向きも少なくないだろう。さしたる急用もないのについついメールやメッセージを確認してしまうというネット環境に大きく依存してしまっている実態に、折に触れて危機感を感じることがあるかもしれない。

、もっと社交的かつ直接的なコミュニケーションを図らなければならないという懸念や自戒を抱くかもしれないが、実のところ“SNS中毒”は非社交的なものではなく、人との交わりを積極的に求める“超社交的”な性質であることが最近の研究で指摘されている。ネガティブな印象の“SNS中毒”は、イメージに反して社会的存在である人間にとって自然なコミュニケーション欲求から生じているものなのだ。

 カナダ・マギル大学のサムュエル・ヴェイシエレ教授によれば、家族や親族、あるいは友人知人の近況を知りたいとという欲求は我々が進化の過程で身につけてきた欲望であるという。人間がより深みのある密接な社会を築き上げていくうえで、他者の動向を把握したいという欲望が自然に培われてきたのである。

「工業化した後の社会では食品が豊富で容易に入手可能になったおかげで、一部では食欲に歯止めがかからなくなり肥満、糖尿病、心臓病をこじらせています。同じようにコミュニケーションの氾濫は“超社交的”な欲望を満たす賑やか過ぎる“劇場”を作り出しています」(サムュエル・ヴェイシエレ教授)

 多くの人々との交流を深め、きめ細かく繋がる社会を築きあげようとする我々の健全な社会的欲求が、今日の革新的な情報機器の登場で飛躍的に肥大化している。この圧倒的な情報量が脳の報酬系に変化を起して“SNS中毒”に人を導いているということだ。

 ある意味で一部のユーザーは否応なく“SNS中毒”にさせられている側面もあるということで、教授らの研究チームは個人にも組織にもコミュニケーションツールの利用を規制するレギュレーションを設定することを推奨している。例えば夕方以降や休日はメッセージのやりとりを一切行なわないなどの措置だ。いずれにしてもSNS全盛の時代にあって理解が求められる話題だ。

■スマホ操作の40%が単なる“時間の浪費”

 では現状で平均的な我々はいったどれほどの“SNS中毒”であり“スマホ中毒”なのか? 2017年12月に発表されたレポートでは衝撃の数字が示されている。

 オンラインカジノのサイト「Casumo」がイギリス人のスマホユーザー2000人を対象に行なった調査で、年間にして4000回、ユーザーはさしたる要件もなくスマホを確認・操作している実態が浮き彫りになった。つまり“手癖”でついついスマホに手が伸びてしまっているのだ。

「我々にとってスマホをチェックし、しかるべき操作をすることはもはや第2の生理現象になってしまっています。しかしながら、やむにやまれぬ強迫観念に駆られてスマホに手を伸ばしているケースはこれまで考えられてきたよりもはるかに多いのです。スマホは忙しい日常生活の補佐役であると共に、いつでもどこでもエンターテインメントを楽しむことをユーザーに習慣化させてきました」とCasumo社のグレッグ・タットン・ブラウン氏は語る。

 同調査によれば、スマホを確認する作業は1日平均28回、年間にして1万回以上となる。そしてそのうちの4割は、特に明確な理由はないのについつい衝動的に手が伸びてスマホを操作しているのである。

 スマホユーザーの3分の1が自分が“スマホ依存症”であると自覚しており、平均的なスマホユーザーは1日28回の利用で約1時間を費やしている。一方でヘビーユーザーの上位10%は1日60回以上、スマホを確認・操作しているということだ。

 また最近の別の調査結果はもっと驚くべきもので、スマホユーザーは1日で平均33回スマホをチェックしており、一方で10代の若者に関しては1日平均90回もスマホを操作しているという報告もある。

 ともあれ平均的なスマホユーザーであっても、いかにスマホに費やす時間が長いのかが改めて確認できる話題である。しかもその40%はなんら生産性のない“時間の浪費”なのだ。これもまた“スマホ依存症”、“スマホ中毒”が身近な現象であることを実感する話題だ。

■“デジタル・デトックス”に繋がる4つの心がけ

 何気なく目にしたネット上のコンテンツにのめり込み、気づいたらかなりの時間を浪費してしまい深く後悔した経験を持つ人も少なくないだろう。多くにとってネット環境を手放すことはできない以上、今日のネット社会、SNS全盛時代にうまく適応していかなければならない。

 テキサスクリスチャン大学のアシュリー・イングリッシュ助教授は今日求められているのは“デジタル・デトックス”であると提唱し、その4つのポイントを解説している。

1.最も利用時間が長いアプリをスマホから削除する
 スマホを使う主な用途になっているアプリをまず削除するべきであるという。イングリッシュ氏にとってそれはフェイスブックであった。

 それまではスマホを持ち歩いている主目的のひとつがフェイスブックだったのだが、まさに“逆転の発想”で最も多用しているアプリこそスマホから削除すべきであるということだ。つまりフェイスブックは帰宅後の家のPCからでしかアクセスしないことで、スマホへの依存度を大幅に緩和できて“デジタル・デトックス”に繋がる。

2.“手持ち無沙汰”な時間は尊いものである
 時間が空いた時でも安易にスマホを手にしないとすれば、ややもすれば“手持ち無沙汰”になってしまうだろう。しかしこの手持ち無沙汰な時間こそ有意義なものであることを深く理解することが求められているということだ。

 ぽっかり開いた時間にスマホを見ないことで、過去の出来事を検証したり今後の計画を練ったり、あるいは運動をしたり読書をしたりとより充実した時間を過ごすことができる。

3.あらゆる「通知」をオフにする
 仕事にも関係しているため最低限のSNSは手放せないというケースもあるだろうが、その場合は各種の通知機能を解除しておく。こうすることでスマホに“追われる”ことがなくなり、自分のペースを取り戻すことができる。

4.意識的に紙のメモと音声通話に戻る
 仕事関係では難しいかもしれないが、家族や友人との連絡などではなるべく音声通話に戻すことを心がける。かけるタイミングなどもを考慮しなければならない音声通話では、そのぶんコミュニケーションも誠実で健全なものになりやすいだろう。またしばらく会っていない人物に対して郵送の年賀状や暑中見舞いなどを復活させてみてもよい。

 そしてSNSを利用するうえで重要なのは、ソーシャルな繋がりのある人々に、自分がすぐに返信やレスポンスをする人物ではないことを態度をもって示すことだという。基本的に“放置プレイヤー”であることを自他共に認めることで、スマホ依存を回避できるのだ。これらの“デジタル・デトックス”を心がけて各種のデジタルデバイスを活用したいものだ。

参考:「McGill University」、「Yahoo! News」、「The Dallas Morning News」ほか

文=仲田しんじ

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