90年代カルチャーで人生が前向き&クリエイティブに!

ライフハック

 ファッションの流行サイクルという話であれば、どの時代の流行も“古くて新しい”ということになるが、過度に昔を振り返ることは今日の激動の時代にあっては“後ろ向き”で逃避的ではないかという指摘もあるだろう。だが最近発表された研究は“甘酸っぱい”過去の思い出に浸るひと時は気分を晴れがましいものにし、メンタルヘルスに有益であると指摘している。思い出に浸ることは、必ずしも後ろ向きでネガティブな行為ではないということだ。

■甘酸っぱい“スイートメモリーズ”は人生を前向きにする

 イギリス・サウサンプトン大学のコンスタンチン・セディキデス教授らの研究チームが2015年に発表した研究によれば、過去の思い出に浸る行為は精神状態と活力を向上させるものであることを指摘している。

 研究では4つの実験を行なっている。そのうちの1つでは、実験参加者を2つに分けて短い物語を創作してもらうテストを行なった。その際にAグループには過去の“切ない”思い出を思い出してもらった。一方、Bグループには単なる過去の体験や、ハッピーな思い出を頭に浮かべて課題に取り組んでもらったのだ。

 課題を行なってもらった結果、甘酸っぱくて切ない、ノスタルジーに溢れる過去の体験を思い出してもらったAグループのほうが、過去の体験に対してポジティブな姿勢に立って、より社会性のあるストーリーを作り上げる傾向が浮き彫りになった。

 実らなかった恋や失恋など“甘酸っぱい”体験を思い出すことは、過去と今の自分をしっかりと結びつけて、現在の身の回りの人々との関わり合いをポジティブなものにしようとする原動力になるということである。つまりこれまでの“自分史”を自覚することで、その連続体である現在がより貴重なものに感じられ、積極的に“今”と関わろうという姿勢が生まれてくるということだろうか。

 意気消沈するような事態に直面したときなど、遠い記憶である“スイートメモリーズ”を思い起こしてしばし思い出に浸ってみても、それは決して“逃避”と非難されることはなさそうである。

■90年代の思い出でクリエイティブになれる!?

 もちろん時代が抱えるさまざまな問題はあったにせよ、振り返ってみればここ最近で最も安定した豊かな消費社会を実現していたのが1990年代だったと言えるのかもしれない。そしてこの充実した90年代のカルチャーに触れることで、クリエイティブな発想が生まれることを、3Dプリンター製品を扱う情報サイト「3Doodler」の記事が指摘している。

 もちろん60年代、70年代、そして80年代にもそれぞれ時代を象徴するカルチャーや社会現象があったが、90年代は最後の“美味しい”10年であったという。サンディエゴ州立大学のジーン・トゥエンジ教授によれば、90年代に充実した子ども時代を送った者の多くは、不幸にもその後の長引く不況やテロの危機に晒されて社会人になっているため、上の世代よりも90年代に対する思い入れが激しいということだ。

 昨今『X-ファイル』や『フラーハウス』など過去にヒットしたテレビシリーズが続々と復活している動きがあるのだが、その多くは90年代のものであるという。

 そして単に思い出に浸るだけでなく、90年代のアイコンを振り返ることでクリエイティブになれることを主に1980年前後に生まれた人々に対して指摘しているのが、コネチカット大学の教育心理学者、ジョナサン・プリュッカー氏だ。クリエイティブなアイディアは、まったく異なる2つのコンセプトを並べて比較したり組み合わせたりしたときに生まれやすく、その点で実際に肌で感じてきた刺激と示唆に富む90年代のアイコンの数々は、ユニークで新しい発想を生み出すための貴重な素材になるということだ。

「守られていた子ども時代の思い出からくる、生ぬるくてあいまいなノスタルジーは、昔の情報をうまく扱うためのツールになります。ノスタルジーが新たな発想を得る有効な手段ということであればもちろん、クリエイティビティの向上に寄与するものであると断言することができます」(ジョナサン・プリュッカー氏)

 90年代に多感な時期を過ごし、そのカルチャーを骨身に染みて知っている人々はまさに“宝の山”を持っていると言えるのかもしれない。今後どんな“90年代インスパイア”の動きが生まれてくるのかにも注目したい。

参考:「Scientific American」、「3Doodler」ほか

文=仲田しんじ

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