50代で“復活”するために2、30代で何をすべきか?

ライフハック

「あの時、ああしていれば良かった」と後悔するのはたいていの場合、あまり意味のないことだろう。所詮は“あの時”の自分には“ああする”という考えがなかったのだ。まさに“後悔先に立たず”ということであるが、タイムマシンが開発されていない以上、過去の自分にアドバイスする術はなく、この悲劇は避けられないのかもしれない。だが、問題に真摯に向き合うのであれば、有効な手段がないわけではなさそうだ。それは“人生の先輩”からアドバイスを受けることだ。

■20~30代の人々に聞いてほしい“人生の先輩”からの3つのアドバイス

 心理学系メディア「Psychology Today」に掲載された、コーネル大学のカール・ピルマー博士のコラムが興味深い。『1000人のお年寄りに教わった30の知恵』(サンマーク出版)などの著作を手がけたピルマー博士のもとに「幸せな50代を迎えるために30代に何をしたらいいのか」という質問が寄せられたのだ。

 そこでこれまでに1500人もの“人生の先輩”であるお年寄りをインタビューしているピルマー博士は、この機会に多くの先達たちが共通して口にしている、若い人々(20~30代)にぜひ知ってもらいたいと望む3つのアドバイスを紹介している。年寄りのお節介、というなかれ、この3つのアドバイスは人生経験に裏打ちされた人生の“秘訣”なのだ。

●愛せる仕事でキャリアを積む
 まずは自分が愛せる仕事を早く見つけて欲しいということだ。それはお金のためだけに仕事をしてはならないということでもある。現在83歳で健康かつ活力溢れる日々を送る元高校教諭のウィリー・ブラッドフォードさんは、次のように語っている。

「私が若い人に最も言いたいことは、愛を持って関わることのできる仕事に身を投じて欲しいということです。その仕事が愛せるということは、あなたにその仕事の適正があるということなのです。お金を稼ぐことを一番の目的にすべきではありません。日々の仕事を愛することが最も重要なことで、これによって毎日前向きに社会生活を送ることができるのです」

●仕事の依頼は原則としてすべて受ける
 仕事に慣れてくるほどに細部の条件が見えてくるようになり、冒険を避ける傾向が生じてしまいがちだが、どう考えても不可能なもの以外、与えられた仕事は原則としてすべて受けるべきであるということだ。

 仕事では新たなチャレンジに取り組むべきであり、申し出にはできるかぎり“Yes”で応じるべきだという。チャンスがやってきてノックしているのに、ドアを開けないケースが多いのはとても残念だということだ。貧しい家庭に育ちながらエンジニアとしても起業家としても成功した現在79歳のジョー・シュルーターさんもまた、仕事の現場で“Yes”を発し続けることの重要性を説いている。

「私は仕事の申し出に“No”を言ったことはありません。もちろん引き受けた仕事がすべて楽しいわけではありませんが、取り組むうちに興味深いものになっていきます。『私にはできない』と言ってしまえば、その後にもたらされる多くのものを見送ることになります。人生は冒険であり、それを有利に進めるためには“Yes”で応じなければなりません」

●人情の理解と対応がすべての切り札になる
 晩年に幸せな生活を送りたいのならば、若いうちから対人関係を育む能力を磨くことが重要であるという。いわゆるコミュケーション能力、“コミュ力”や、心の知能指数とも呼ばれるEI(Emotional Intelligence、感情知性)などを含むソーシャルスキル全般の能力が欠かせないという。

 もちろん、仕事においては実力が最も評価されるわけだが、人生の先輩の知恵としてはどんなに実力を備えていても、やはり対人関係を処理する能力はその後の幸せな生活に深く関わってくるということだ。特に仕事のうえで一緒になる人々を理解し、適切な関係を結ぶことがきわめて大切であるという。第二次世界大戦に従軍した経歴を持つラリー・タイス氏は、戦火の中でいかに同僚との関係構築が大切であるかを話している。

「近所がみんな親戚みたいな田舎町から、知らない人間ばかりの海軍に入隊して、集団の中で周囲とうまくやっていくことを学んだんだ。この経験はその後の人生の宝になった。お互いによく理解し合い友情を育む暇はない。常に社交的な態度で、仕事を通じて人と結びついてうまくやっていくことだ」

 これらの人生の先輩の知恵は単なるビジネスの格言以上に、人生全体に影響を及ぼすもののようだ。あまりピンとこない向きもあるかもしれないが、いずれも人生の先輩が決して偉ぶるわけでもなく、若者のことを思って伝えているアドバイスだ。この機会にぜひ参考にすべきだろう。

■50歳を越えて大きく開花した10人

 これら人生の先輩の知恵に耳を傾けて幸せな50代を迎えることができれば、それが人生の優秀の美を飾るゴールとなるのだろうか。いや、まだまだフィニッシュラインは先にありそうだ。50歳を越えて開花する人も決して珍しい存在ではないのである。

 ライフスタイル系メディア「Mental Floss」では、50歳を越えて新たな分野に進出して頭角を現した10人(夫妻1組)を紹介している。いずれの人物にとっても、50代はまだまだチャレンジの季節なのである。

●カーネル・サンダース(起業家)
 ケンタッキーフライドチキンの創業者であるカーネル・サンダースは、10歳の頃からさまざまな仕事に就いて社会に揉まれ、40種類以上の職業を経験したといわれている。30代後半に知人の勧めでガソリンスタンドの経営に乗り出し、一角にカフェを設けて自分で切り盛りし、外食産業の面白さを知る。幾多の浮き沈み経てケンタッキーフライドチキンのチェーン展開を成功させたのは50歳どころか70歳になろうという時期だったのだ。

●ローラ・インガルス・ワイルダー(作家)
 ローラ・インガルス・ワイルダーは小学校教諭として若き日々を過ごし、中年期には娘のローズと共に文芸創作の道を志す。その後、幼年期の体験に基づいた子どものための家族史小説シリーズに取り組む。本格的に作家活動をはじめたのは65歳を越えてからであり、代表作の『大きな森の小さな家』が出版されたのは彼女が68歳の時だった。

●ザガット夫妻(レストラン評価システム)
 ニューヨークの弁護士ティム・ザガット氏、ニーナ・ザガット氏の夫妻によって発行されたレストラン評価システム「ザガットサーベイ」が本格的な刊行体制を整えたのは、ザガット夫妻が50歳を越えてからのことである。

●森泰吉郎(森ビル創業者)
 長らく教育畑で教鞭を執っていた森泰吉郎氏だが、不動産投資家になったのは55歳からである。

●アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(画家)
 アメリカ国民のおばあちゃん“グランマ・モーゼス”ことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスはまさに国民的画家である。70歳を越えて絵を描きはじめ、76歳で本格的にアーティスト活動を開始。最初に個展を開いたのは80歳のときのことだ。

●A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダ(宗教家、翻訳者)
 インド人のヒンドゥー教徒であるA・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダは後年にヒンドゥー教典の英訳と英語解説に専念し、国際的舞台で影響力を持ったのは69歳の時のことであった。

●エドモンド・ホイル(著述家)
 トランプ、バックギャモン、チェスなどのゲームの解説書を世に著し、“ホイスト・ゲームの生みの親”であるエドモンド・ホイルの執筆活動の最盛期は70歳前後の頃であった。

●ジャック・カーヴァー(スタンガン開発者)
 核物理学者としてNASAなどの国家機関に勤務していたカーヴァー氏だが1970年に50歳で独立して「Taser」社を創設し、スタンガンの製造、販売に乗り出した。1980年に同社をロサンゼルス警察に売却するまで積極的にスタンガンの普及に務め、45カ国の治安当局に正式採用されている。 

●ロナルド・レーガン(元米大統領)
 1980年の大統領選に勝利し、1981年の就任時には69歳349日という米大統領として図抜けた最年長記録をマークした。就任直後には暗殺未遂事件で負傷したが、その後回復を遂げて二期8年を務め上げた。

 ご存知のように日本をはじめ先進国は世界史上かつてない長寿社会へ突入しつつある。これら先人たちの時代以上に、50歳以降もまだまだ現役真っ最中という人々が今後ますます増えてきそうだ。

■心身の健康に気を配り55歳の“復活”を目指す

 幸せな50代を送るには、やはり心身の健康面にも気をつけなければならないようだ。30代後半から40代の“人生の消耗戦”をうまく乗り切った人々は、55歳前後で再び活力を取り戻しているという。

 体力面において最もエネルギッシュに活躍できるのは20代後半から30代前半というデータが昨年、イギリスのサプリメントメーカー「Healthspan」の研究で発表されている。特に意外な感じはなく、30歳前後の人々が仕事においてもプライベートにおいても最も活発に動き回っていることに、多くは納得できるのではないだろうか。

 人々の実感もこのデータを裏付けており、イギリス人の41%は30代前半でエネルギーの高まりを感じ、仕事でも家庭でもやるべきことが多く、最も幸せを感じていることが明らかになった。つまり周囲から“必要とされている”という実感が、ヤル気と活力を高め、忙しく充実した日々を過ごすことで満足感が得られているのだ。

 しかし問題はその後だ。忙しく充実した日々はヤル気と活力をもたらしてくれるが、当然ながらエネルギー消費も大きい。30代半ばになって体力のピークを越えてくれば、往々にして消耗のほうが大きくなってしまい疲労が蓄積することにもなる。そして30代半ばを過ぎたあたりからは家族を持つ人も多いことから、公私にわたってさまざまな雑事が増えることにもなる。こうして30代半ばから40代で疲れきってしまう人も出てくるのだ。肉体的な消耗よりも精神面の疲労が顕著になり、うつなどの精神疾患を発症するケースもある。

 この“人生の消耗戦”を乗り切るにはどうしたらよいのか。もちろん魔法のような特効薬があるわけではなく、とにかく疲労回復、栄養補給、ストレス解消を心がけるしかないようだ。もちろん、サプリメントなどの栄養補助食品の計画的な摂取を考えてもよいだろう。

 そしてこの時期の大きな落とし穴になるのが食事だろう。基礎代謝が落ちているので、30代前半までの感覚のままで食事を続けているとてきめんに体重が増加しはじめてしまう。必要な栄養素はしっかり摂りながらも、カロリーは抑えることが求められてくる。また日常的に身体を動かすことにも意識的でありたい。

 該当する年齢層の読者にはやや気が滅入る話題になってしまったかもしれないが、この“人生の消耗戦”にも終りがあり、この戦いの“勝者”は公私のプレッシャーが軽くなった55歳前後で再びエネルギーの高まりを感じるということだ。先に紹介した先達のように、この時期に起業したりキャリアを開花させるケースも少なくないのである。疲労回復、栄養補給、ストレス解消に気を配って“人生の消耗戦”を乗り切り、50代以降の幸せで活力に溢れた“復活”に繋げていきたいものである。

参考:「Psychology Today」、「Mental Floss」、「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

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