もしアナタが飲食店経営者、あるいは店長だったとして、ホールスタッフのアルバイトの応募者に美女とイケメンがやってきたらどちらを採用するだろうか。最新の研究ではもし料理に自信があるのなら、美女を雇用したほうが経営面で大きなアドバンテージがあることが報告されている。
■魅力的なウェイトレスを見た後の男性は料理が高評価になる
どんなに腕によりをかけた料理を提供しようとも、肝心のお客が店に来てくれなければ話にならない。そして来てくれた客がリピーターになってくれなければ安定した経営は難しくなる。
どうしたら店に客が定着するのか? その答えは実はシンプルで、魅力的なウェイトレスを雇用することであることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学とサイモンフレーザー大学の合同研究チームによって報告されている。
研究チームはまず、195人の男女に対して調査を行なったところ、飲食店選びにおいて女性のほうがはるかに店の立地と店内の静かさを優先させていることが浮き彫りになった。
続いて603人の男女が参加した実験では、最初に店のウェイターとウェイトレスの写真を確認した後に、メニューを見てそれぞれの料理の美味しさを予測して評価してもらった。
収集した回答データを分析した結果、男性の場合は魅力的なウェイトレスを見た後に料理の評価が顕著に高くなっていることが浮き彫りになった。男性心理からすればある意味では深く頷ける結果であるが、一方で女性はウェイターがイケメンだったからといって料理の評価に影響を及ぼしていないことも明らかになった。
そして61人の男性が参加して、魅力的なウェイトレスとそれれほど魅力的ではないウェイトレスの写真を見せられた状態で、実際にジュースとクラッカー&ベジタブルスプレッド(野菜ジャム)を実際に味わい、その美味しさを評価してもらった。
案の定の結果で、外見が魅力的なウェイトレスの存在を前にして味わったジュースや料理の評価は高くなった。
しかし魅力的なウェイトレスの存在は“諸刃の剣”の働きをする場合もあり、ベジタブルスプレッドが味の好みに合わなかった男性は、魅力的なウェイトレスの存在でよりその味が嫌いになったという。美女の存在で料理への期待が高まるぶん、もし裏切られた場合はその失望感もより大きくなるということだろうか。
したがって味に自信のある飲食店は、イケメンよりも魅力的なウェイトレスを雇うことで“商売繁盛”に繋がりそうである。
■クーポンを入手した29%が実際に来店
昨今の人手不足の折、ルックスの良い女性ホールスタッフを獲得するのはなかなか大変なことなのかもしれない。そこで人手に依存しない形で新たな顧客を呼び込み、また常連客の心を繋ぎ留めておく最も有効な“武器”のひとつがクーポンだ。
マーケティング会社の米・バラシス(Valassis)によれば、お腹が減った状態の消費者の半数は外食メニューの割引特典に惹かれ、実際に選択するということだ。
同じくバラシスの研究によれば、外食において32%の消費者はアクセスが容易なエリアの飲食店の割引き特典を選択しているという。つまり外食利用者の3分の1は自宅や職場に近い飲食店の中で、“お徳メニュー”を提供しているところで食べているのだ。
そしてその店に入ってみたくなった要素は何だったのかという質問には、29%がランチメニューなどの“お徳メニュー”の存在、同じく29%がクーポンの存在に導かれたということだ。
同じく調査では、その地域の勤労者の48%がクーポンを入手することで近隣のその飲食店により多く訪れると回答している。
「消費者はお金を節約し、手頃な価格の食事を提供する飲食店を常に模索していて、自宅、職場、外出先で容易にアクセスできる店を待望しています。したがってしかるべきタイミングに人々に対して影響力のあるオファーを提供することが求められます」と同社マーケティング担当のカーティス・ティングル氏は話す。
クーポンというと家計をやりくりするために主婦がスーパーマーケットなどで活用するイメージが強いのだが、外食産業のクーポンは男性に対してもきわめて訴求力があるということだ。特にサラリーマンのお父さんへの影響力が強く、なんと45%の世の父親が外食においてクーポンにきわめて強い影響を受けていると回答している。
クーポンの絶大な効能はもちろん飲食店だけでなくさまざまな小売店舗やオンラインショップでも有効である。クーポンを活用したさまざまな経営戦略が効果的にユーザーの消費を刺激しているようだ。
■効果的なメニュー作りための5つのポイント
飲食店経営においてクーポンの有効性が浮き彫りになっているのだが、実際に来店したお客の注文に大きな影響を及ぼすのがメニューのデザインである。
よほどの常連客でない限り、来店客の100%はテーブルにあるメニューを確認する。しかしながら眺めている時間は平均で109秒とそれほど長くはない。この限られた時間の中でいかに効果的にお勧めの料理を訴えられるかは、メニューのデザインにかかっているのだ。フードライターのキャロル・リン・ヴィエラ氏が、データ分析から判明したメニュー作成のポイントを解説している。
1.写真を多用し過ぎないこと
写真のある料理は30%の売り上げ増をもたらすといわれ、確実に効果があるのだが多用し過ぎないほうがよい。すべてのメニューの写真を載せるよりも、その1ページの中で特にお勧めしたい料理の写真を1点載せたほうが効果的であるということだ。
2.詳細な説明文と目を惹くマーク
料理名だけよりも詳細な説明文があることで売り上げが30%伸びるということだ。説明文があることでお客は考える時間を減らすことができ、メニュー選びがスムーズになる。また詳細な説明文によって価格よりも価値へと関心を向けさせることができるのだ。説明文作成のポイントは以下の通り。
●コクのある、ピリ辛、酸味のある、などなるべく舌に訴える表現を使う。
●お勧めの料理はより長い説明文をつけてほかの料理との差別化を図る。
●ユニークな独自の料理名をつけてもよい。受け入れられれば25%の売り上げ増に繋がるということだ。
●料理の味やお勧め度を表すマークやイラストを加えても効果的である。
3.余白を活用する
メニュー名を均等に並べていくのではなく、お勧めの料理は上下前後に余白をとって強調する。特別な料理であることが一目瞭然となるのだ。
4.視線の動きを理解する
スーパーマーケットでは最も売りたい商品は目の高さに陳列されているというが、メニューについても視線の動きを理解することが重要である。メニューを開いたとき最初に目が行くのは中央部分だが、たいていの場合そこから右上へと視線が動く。したがってメニューの右上にお勧め料理を配置してみたい。
5.色を活用する
メニューをデザインするにあたっては色も活用したい。一般的に赤は食欲を促し、黄色は注意を喚起する。青は海鮮料理に、緑は野菜料理の訴求にそれぞれ効果的だ。
店舗経営にとって武器となる魅力的なウェイトレス、クーポン戦略に続き、メニューもまた工夫のし甲斐がある案件であるようだ。
参考:「ScienceDirect」、「Business Wire」、「Restaurant Insider」ほか
文=仲田しんじ
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