飲酒関連リスクが高い人の特徴とは?

サイコロジー

 仕事が終わり寄り道して“ちょっと一杯”というお酒好きも少なくないだろう。ストレス解消と明日への活力にもなる飲酒習慣だが、接客業や営業職の人々には飲み過ぎリスクが高くなるというから要注意だ。

■外面を取り繕う感情労働従事者に大量飲酒リスク

 職務上、どうしても自分の感情をストレートに表現できないケースに直面することは多い。特に接客業などでは勤務時間中は場合によっては自分の感情を押し殺し、それがたとえ作り笑いであったとしてもその場に相応しい感情を見せる必要も生じてくる。

 こうした感情労働(emotional labour)の割合が高い業務の人々には大量飲酒リスクが高まることが最近の研究で報告されている。

 米・ペンシルベニア州立大学の研究チームが2019年4月に「Journal of Occupational Health Psychology」で発表した研究では、業務の上で感情を押し殺したり逆に過大に表現したりする外面を取り繕う行為(surface acting)と飲酒量の関係を探っている。

 研究チームはアメリカ国内の勤労者1592人に対して電話インタビューを行なって収集したデータから、職務の内容と仕事後の飲酒の頻度と量を分析し、加えてそれぞれの勤労者の衝動性の程度、仕事に際しての自己コントロールの程度を計測した。

 分析の結果、外面を取り繕う行為(surface acting)と大量飲酒の関係は、顧客との間に深い関係を築くことのない仕事に就いている衝動的な人々において、きわめて強く結びついていることが突き止められた。

 いわゆる“客商売”にもいろんな形態があるが、たとえばコールセンターや回転の早い飲食店のように、顧客と深い関係にはならずその都度一回限りの接客をする仕事もある。こうした業務に就いていて、しかも衝動性が比較的高く自己コントロール能力が低い者には、仕事が終わった後の大量飲酒リスクが高くなるということだ。

 一方で職務上、外面を取り繕う行為が必要とされていても、それを行なう確かな理由と相応の見返り(報酬や顧客との深い繋がり)のある業務においては、大量飲酒リスクは高まらないという。

 サービス業では特に人手不足が続いているが、こうしたメンタルへのリスクについても広く理解されなければならないだろう。

■“完璧主義者”に飲酒関連問題のリスク

 感情のコントロールが必要とされる接客業従事者のの大量飲酒リスクが指摘されているのだが、さらにある種の人々にとっても飲酒関連リスクがつきまとうという。それは“完璧主義者”の人たちだ。

 カナダ・ダルハウジー大学の研究チームが2019年2月に「Journal of Research in Personality」で発表した研究では、完璧主義者傾向と飲酒の関係について探っている。

 263人の飲酒習慣のある若者を対象にしたオンライン調査では、各人の毎日の完璧主義者傾向、感情の状態、飲酒動機、飲酒に関連の問題について21日間にわたって測定された。飲酒に関連する問題とは例えば責任を放棄したり、喧嘩をしたり、必要のないリスクを負ったり、個人的な人間関係を害したりすることなどである。

 分析の結果、研究チームは完璧主義者傾向と飲酒関連問題に有意な関係性があることを突き止めた。完璧に行なうことができなかった言動をある意味でうやむやにするために飲酒に向かい、そのぶん飲酒関連の問題を起こしやすくなるのである。

 たとえば「私は公の場で間違いを犯すことを心配していた」や「他人の前で自分のことを自虐するのはひどいことである」などのステートメントに同意することは間接的に飲酒関連問題を予測するものになっているのだ。

 飲酒関連の問題を引き起こしやすくなる完璧主義傾向だが、興味深いことに大量飲酒には結びついていなかった。少量の飲酒で問題行動を起すというのは、むしろ厄介な酒飲みとも言える側面があるのかもしれない。

 対象が若者に限定されているなど、研究結果にはいくつかの制約があるものの、いわゆる“完璧主義者”とはあまり酒の席を同じくしないほうがよいのかもしれない?

■SNS依存とアルコール依存がセットになるリスク

 若者のSNS依存と大量飲酒がいわばセットになっていることも最近の研究から報告されている。飲酒しながらのSNS投稿が酒量を増加させているのである。

 米・テキサス州立大学の研究チームが2018年11月に「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」で発表した研究では、大学生の飲酒習慣とSNS利用の実態を探っている。

 18歳から25歳の大学生425人を対象に行なった調査で、大量飲酒をしたことのない学生に比べて、大量飲酒をする学生は飲酒中、あるいは酩酊中にSNSに投稿している可能性が高くなっているのだ。

 そして飲酒中にSNSを利用する者はまたSNS依存度も高いことも判明した。つまり飲酒習慣とSNS依存がセットになっているのである。

 SNS依存とアルコール依存がセットになるというのは心身の健康にきわめて危険であるが、研究チームは逆にSNSは飲酒量を減らす手段にもなり得ることを指摘している。

 ギャンブル依存症の研究では、“今この瞬間に”配信されるポジティブなメッセージがこのギャンブルへと向かう行動を妨害できる可能性を示している。したがってSNSでの交流が飲酒の習慣に介入して酒量を減らせる可能性もあるという。

 何かをしながら酒を飲むと知らず知らずのうちに大量飲酒に繋がってしまいがちなのだが、進歩したアルコール検知技術とスマホなどを通じた瞬時の介入によって、アルコールへ向かう行動を阻止できることが近い将来可能になることを研究チームは言及している。

 優れた“飲みすぎ防止アプリ”が開発されれば確かに大量飲酒を回避できる確率も高まるだろう。そしてもちろんそうした技術をそもそも必要としない飲酒を心がけたいものである。

参考:「NLM」、「ScienceDirect」、「NLM」ほか

文=仲田しんじ

コメント

タイトルとURLをコピーしました