食物繊維たっぷり“ファイバーフード”の驚きの効能

サイエンス

 ご存知のように食事による健康法、減量法は“○○ダイエット”としていくつも紹介されているが、ぜひ食物繊維を多く摂ることを心がけてみてもよさそうだ。食物繊維を多く摂取する者は健康であることが最近の研究で報告されている。

■食物繊維が豊富な食生活によって早期死亡率が低下

 世界的に死因の第1位に君臨しているのが非感染性疾患(Non-Communicable Diseases、NCDs)だ。非感染性疾患にはがん、糖尿病、循環器疾患、呼吸器疾患が含まれ、WHOの定義では不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣を改善することによって予防可能な疾患であると見なされている。

 つまり生活態度を改めることで非感染性疾患のリスクを低下させることができるのだが、最近の研究では食物繊維を多く摂る食事でこの非感染性疾患を効果的に予防できることが報告されいる。

 ニュージーランド・オタゴ大学の研究チームが2019年1月に医学ジャーナル「The Lancet」で発表した研究では、これまでの185本もの研究論文と58の臨床研究をメタ分析して1日に摂取する食物繊維量と非感染性疾患の関係を探っている。

 1日に摂取する食物繊維の量は、世界平均で20グラムといわれているのだが、研究によれば食物繊維が8グラム増えるごとに、冠動脈心臓疾患、2型糖尿病、大腸癌による死亡リスクが5~27%低下し、心臓発作と乳がんを予防できる確率が高まるということだ。したがって1日に摂取する食物繊維の量は25~29グラム(もちろんできればそれ以上)が推奨されることになる。

 また食事の中で全粒穀物(whole grains)を15グラム増やす(精製穀物を15グラム減らす)と、冠動脈心臓疾患、2型糖尿病、大腸癌による死亡リスクが2~19%低下することも突き止められた。全粒穀物を含む食物繊維が豊富な食生活によって、おおむね非感染性疾患リスクを15~30%低減できるということだ。

 研究チームによれば、食物繊維は自然の食材から摂取したほうが良く、ドリンクやスナックなどの加工品から食物繊維を摂ってもこうした効果はあまり得られないという。

 またグリセミック負荷(Glycemic Load)やグリセミック指数(glycaemic index)で分類・推奨された食品は、2型糖尿病と心臓発作の予防に限定的な効果があるのみで、非感染性疾患全般には影響を及ぼさないことも示唆されることになった。したがって注目すべきは食物繊維のほうで、炭水化物をそれほど気にしなくてもいいということにもなる。食生活を見直す上で食物繊維量をぜひ考慮に入れてみたいものだ。

■食物繊維は脳にも良い

 非感染性疾患リスクを下げるだけでなく、食物繊維は脳にも良いことが最近の研究で指摘されている。特に高齢者の脳の健康に重要な役割を果たすというのである。

 米・イリノイ大学の研究チームが2018年9月に「Frontiers in Immunology」で発表した研究では、マウスを使った実験を通じて、食物繊維を多く摂取することで高齢マウスの脳の老化を遅らせられることが報告されている。

 哺乳類の脳は加齢によって中枢神経系の細胞の5~20%を占めているミクログリア(microglia)が炎症を起しやすくなり、これが認知機能の低下に繋がりアルツハイマー病の発症要因になるとも考えられている。

 このミクログリアの炎症を抑制する物質にブチラート(butyrate、酪酸塩)をはじめとする短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acid、SCFA)があるのだが、実はこのブチラートとSCFAは、胃の中で食物繊維を消化したときの副産物として生成されるのである。つまり食物繊維が豊富な食事を摂ると、脳細胞の炎症を抑制する物質が多く生産されるのだ。

 しかし消化器官で生成されたブチラートが脳に作用するのだろうか? 研究チームはマウスを使った実験で、ミクログリアの50ものユニークな遺伝子特性を調べて豊富な食物繊維を含む食事が、実際に高齢マウスの脳の炎症を抑えていることを突き止めた。一方で若いマウスの脳はもともと炎症が起きていないので、食物繊維の摂取を増やしたからといって特に変わることはなかった。つまり高齢であるほど、脳の健康のために食物繊維が必要とされていることになる。

 もちろんマウスを用いた実験結果がそのまますべて人間に適用されるとは限らないが、研究を主導したロドニー・ジョンソン教授は普通に考えれば人間においても同様のメカニズムが働くことを見込んでいるようだ。

「平均的な高齢者は推奨されているよりも40%少ない食物繊維を摂取するに留まっています。じゅうぶんな食物繊維を摂れないと、炎症症状など脳の健康にとって思いがけない悪影響が及ぶ可能性があります」(ロドニー・ジョンソン教授)

 どうやら齢を重ねるほどに日々の食事における食物繊維の量が重要になってくるようだ。これまでよりも40%多く食物繊維を摂取しなければならないということは、より意識的な食生活の改善が求められていることになる。

■積極的に食べるべき5つの“ファイバーフード”

 成人病を防止し認知機能の維持のためにも欠かせない植物繊維だが、では我々はいったいどんな食品を摂り入れたらよいのだろうか。健康情報ライターのレン・キャンター氏が食物繊維と栄養が豊富な食べるべき5つの“ファイバーフード”を解説している。

●オールブラン
 朝食には「オールブラン」が推奨される。ケロッグ社が製造する小麦から作られたシリアル食品であるオールブランは胃腸の消化を助け、同社によれば1食分(40グラム)で11グラム(レタス約3.5個分)の食物繊維が摂れるということだ。もちろん他社製のものでも良いが、その場合は成分表示をよく読んで検分することが求められる。

●ソラ豆、インゲン豆、大豆、レンズマメ
 昼食には半カップほどの煮豆などの調理された豆類(ソラ豆、インゲン豆、大豆、レンズマメ)をサラダにに加えることが望ましい。これだけで7~8グラムの食物繊維が取れる。

●ラズベリー
 軽食やデザート、あるいは朝食のシリアルにカップ1杯のラズベリーを加えることもまた特に推奨される。これだけで8グラムの食物繊維を追加で摂取できる。

●ブロッコリー
 カップ1杯分でブロッコリーで5グラムの植物繊維が摂れ、一方でビタミンCやたんぱく質、鉄分、マグネシウムなど豊富な栄養素が含まれている。

●カボチャ(acorn squash)
 同じくカップ1杯分のカボチャ(どんぐりカボチャ)で9グラムの食物繊維を摂取でき、各種のビタミンと鉄分、ミネラルが豊富で健康的なサイドメニューになる。

 ほかにも注目したい食品は下記の通り。

●1カップの炊いた丸麦(pearl barley)=食物繊維6グラム
●1カップのヒヨコ豆=食物繊維12グラム
●3カップのポップコーン=食物繊維3.6グラム
●100グラムのアーティチョーク=食物繊維8.7グラム
●中サイズの西洋梨=食物繊維5.5グラム
●28グラム(1オンス)のアーモンド=食物繊維3.5グラム

 食物繊維が豊富で栄養価に優れた食材を日々の食生活に取り入れたいものである。

参考:「The Lancet」、「University of Illinois」、「Medical Xpress」ほか

文=仲田しんじ

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