出会い系アプリの普及によってプライベートな交流にも変化が訪れているようだ。誘ったほうが食事をおごるものの、それ以上の意味はまったくないという前提で出会う「フーディーコール」が広まっているというのだ。
■食事の誘いに応じやすい女性とは?
「今度一緒にご飯に行こうよ」という呼びかけは気心の知れた友人たちの間でよく交わされているように思えるが、最近では初対面の男女の間でもあり得るというから興味深い。主にオンラインで知り合った男女が食事の目的だけで会うという提案は「フーディーコール(Foodie Call)」と呼ばれ、出会いの1つの形式として主にアメリカで広まりつつあるという。多くのフーディーコールは男性が女性に食事をおごるという形で行なわれている。
しかしそうはいっても初対面で食事だけの誘いに応じる女性はどれほどいるのだろうか。米・アズサパシフィック大学の研究チームが2019年6月に「Social Psychological and Personality Science」で発表した研究では、オンラインで調査を行ないフーディーコールに対する認識に迫っている。
女性820人(40%が独身、33%が既婚、27%が恋人あり、全体の85%が異性愛者)を対象にした最初の調査では、それぞれの性格特性とジェンダー観を明らかにするテストと共に、フーディーコールに対する認識が尋ねられた。やはり女性の大半は初対面での食事の誘いはあり得ないと感じていたのだが、それでも27%はフーディーコールに応じると回答している。
2回目では異性愛者の女性357人に同様の調査を行なったところ、フーディーコールに応じると回答したのは33%とやや増えた。異性愛者に限定したほうが初対面の食事の誘いに若干ではあるものの応じやすくなるのかもしれない。
さらに性格特性とジェンダー観について検分してみると、フーディーコールに応じると回答した参加者は従来型のジェンダー観(例えば父は一家の稼ぎ手で母は家庭を守るなど)を持っていて、しかも“腹黒い”性格特性であることが浮き彫りになった。“腹黒さ”は学術的にはダークトライイアド(dark triad)と呼ばれ、自己愛傾向、マキャベリズム、サイコパシーの3つが含まれている。
男性と女性の役割を分ける保守的なジェンダー観で、しかも機会があればちゃっかりおいしい思いをしようという“腹黒さ”を兼ね備えた女性ほど、食事の誘いに応じやすいということなるのかもしれない。
今回の調査が女性の認識を正確に反映しているものであるとは言い切れないことを研究チームも認めているが、それでも新たな出会いの形式であるフーディーコールについて興味深い傾向が示唆されることになったと言えるだろう。
■新たなパートナーは結局は前のカレシと同じタイプ
誘われた食事に応じるのかどうかはともかく、新しい出会いがあっても実際につき合うのはどうかはもちろんまた別の問題になる。トラウマになりかねない破局を体験して恋愛はこりごりだという時期もあるかもしれない。
前のパートナーと酷い別れ方をした場合、今度つき合う人はこれまでとは違うタイプの人にしたいと考えるのも無理からぬところではある。しかし最近の研究では、次につき合うことになるパートナーは、結局のところは前のパートナーと同じタイプの人物になることが示唆されている。今までにつき合ったことがないタイプの人物に出会いたいと思ってはいても、自分の“好きなタイプ”の指向性からはなかなか逃れられないというのだ。
カナダ・トロント大学の研究チームが2019年6月に「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」で発表した研究は、332人のドイツ人を9年間にわたって追跡調査し、つき合うパートナーが変わっても、その人物の人格特性はきわめて似通っている顕著な傾向があることを報告している。つまり人は生涯を通じて“同じようなタイプ”の人物とつき合う可能性が高いということになる。
2008年からはじめられた調査において、実験参加者は新たなパートナーができた時点で、その人物の性格特性を詳しく報告した。こうして収集された多くのデータを分析したところ、研究チームは新たにつき合いはじめたパートナーは、往々にして前のパートナーに似た人物であるという顕著な傾向を突き止めたのだ。
“好きなタイプ”や“ウマが合う”人物は結局のところ変わらないという話になるのだが、このことは当人もまたそのタイプの人物であること物語っているということだ。つまり“類は友を呼ぶ”はサイエンス的にも正しいことになる。ただ唯一の例外として、“ビックファイブ”に基づく性格特性において、外向性(Extraversion)と開放性(Openness)の値が高い人物は、それまでとは違うタイプの人物とつき合うこともあり得るということだ。
つき合うタイプが変わらないのであれば、前のパートナーとまた同じような別れ方をするのではないかという懸念もあるのだが、研究チームは前の別れの体験から“学習”することが、新たなパートナーとの良好な関係の維持に繋がると指摘している。懸念されるシナリオがすでにあることから、まったく異なるタイプとつき合うよりも対策が立てやすいのである。とすれば元カレ、元カノと過ごした日々は決して時間のムダだったのではなく、将来へ向けての貴重な社会勉強だったということになるのかもしれない。
■“回避型”の人々の話し方の特徴とは?
いったんつき合いはじめたパートナーとはもちろん末永く同じ時間を共にしたいと願うのだろうが、それでもカップルの関係は相手あってのことである。いつか別れ話を切り出す可能性が高い人物には何か特徴があるのだろうか。最近の研究では、関係が長続きしないパートナーはその話し方で予測できるという。
米・カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームが2019年5月に「Social Psychological and Personality Science」で発表した研究では、話す時に多用する人称代名詞によって、長期的関係が持てる人物であるかどうかの予測ができることを報告している。
愛着理論(Attachment Theory)によれば、人間関係において深刻な問題をはらんでいる愛着スタイルは回避型(avoidant type)とされている。回避型のタイプは安定した人間関係の構築に難を抱えているのである。
研究チームはこれまでの7つの研究論文から1400の事例を検分して成人のロマンティックな愛着スタイルと人称代名詞の使われ方の関係を探った。
分析の結果、愛着スタイルが回避型の人々は、「私たち(we、us、our)」よりも、「私(I)」と「あなた(you)」を多用していることが突き止められた。研究チームによれば、当人は自分が口にしている人称代名詞についてあまり自覚的ではないということだ。自然に口をついて出る人称代名詞がどれであるか本人はあまり気づいていないことになる。
カップルの関係にありながら「私」と「あなた」と言い分けることが多いとすれば、確かにそれだけ“一体感”や“コミットメント”が低いということになるのかもしれない。そしてそういう言葉がパートナーから自然に発せられるとすれば、長期的な関係において将来に暗い影を落とす可能性があることが示唆されているのだ。もしパートナーが「私」、「あなた」を多用しているとすればいろいろと気になる話題かもしれない。
参考:「SAGE Journals」、「PNAS」、「SAGE Journals」ほか
文=仲田しんじ
コメント