食べたいものをガマンしたりしなくとも無理なく体重が減らせるメタボ解消法が話題だ。それは1日の中で食事ができる時間の範囲を設定することにある。
■食べたいものをガマンしなくてよい“時間制限ダイエット”
例えば1週間に1日だけ食事を断ってみる“プチ断食”は健康法として一定の支持を集めているが、それでも丸1日の断食は辛いという向きもあるだろう。
そこで注目を集めているのが、“時間制限ダイエット(time-restricted eating)”だ。これは1日の中で、食事をしていい時間を自ら設定するだけの簡単なダイエット法である。その効果は減量のみならず、糖尿病予防、メタボリックシンドロームの改善と多くのメリットがあることが実験で確かめられている。
米・カリフォルニア大学サンディエゴ校とソーク研究所の合同研究チームが2019年11月に「Cell Metabolism」で発表した研究では、19人のメタボリックシンドローム患者に時間制限ダイエットを12週間続けてもらい、健康状態の変化をチェックした。“時間制限”は10時間で、例えば朝8時から夕方6時までなど、その10時間以外には食事を摂らないことが課された。
データを分析した結果、この時間制限ダイエット(TRE)は、スタチンや降圧薬の服用といった標準的な医療を受けているメタボリックシンドロームの患者の心血管代謝の健康を改善することが明らかになった。TREは、メタボリックシンドロームを治療するための標準的な医療行為に追加できるきわめて効果の高い補助手段になることが判明したのだ。
具体的には“時間制限”をすることで摂取カロリーが平均9%減り、体重が3%減少した。特に将来の心臓疾患リスクの兆候となる腹部の脂肪が3%削減されたのである。
また参加者の多くは質の高い睡眠がとれるようになったと報告しており、メンタルへの好影響も示唆されることになった。
ご存じの通りメタボリックシンドロームは典型的な現代病として先進各国で問題になっている。今回効果が確かめられた時間制限ダイエットという力強い味方を試してみない手はないかもしれない。
■メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは正確にはどのような症状なのだろうか。アメリカの総合病院「メイヨ―クリニック」のウェブサイトでメタボリックシンドロームが解説されている。
メタボリックシンドロームは、心臓病、脳卒中、2型糖尿病のリスクを高める、複合的な一連の症状である。これらの状態には、血圧の上昇、高血糖、腹部の過剰な脂肪、高レベルの悪玉コレステロールまたはトリグリセライド(中性脂肪)が含まれる。
これらのうちの1つだけを持っているからといってメタボリックシンドロームと診断されるわけではないが、しかし深刻な病気に発展するリスクを持っていることは間違いない。またこれらの状態がさらに進行すると、2型糖尿病や心臓病などの合併症のリスクがさらに高くなる。
今日、メタボリックシンドロームはますます一般的になり、今やアメリカ人成人の3分の1が該当するともいわれている。メタボリックシンドローム、またはその要素のいずれかを持っている場合、生活習慣の積極的な変更が求められている。
初期のメタボリックシンドロームには明確な症状はあらわれないが、目に見える1つの兆候は腹部に蓄積した内臓脂肪である。また、血糖値が高い場合、喉の渇きや頻尿、倦怠感、視力障害などの糖尿病の兆候があらわれる場合がある。リスク要因としては、加齢、民族性(ヒスパニック系の女性は有意に高リスク)、肥満、2型糖尿病などだ。
薬による治療法もあるが、抜本的に症状を改善するためには、健康的なライフスタイルへ変えていくしかない。具体的には少なくとも1日30分間の運動をする、野菜・果物・脂肪分の少ないタンパク質・全粒穀物をたくさん食べる、食事に含まれる飽和脂肪酸と塩を制限する、健康的な体重を維持する、禁煙することなどが挙げられる。油断していればすぐにでもその陥穽に陥ってしまうメタボリックシンドロームだけに、現代人の誰もにリスクがあることを理解しなければならないのだろう。
■適量のコーヒー習慣に抗メタボ効果
メタボリックシンドロームの予防のためには生活習慣の見直しが求められているのだが、普段口にしている飲み物にも気を配ってみたい。最新の研究では、1日1杯から4杯のコーヒーの習慣でメタボリックシンドロームのリスクをきわめて低下させることが報告されている。
2019年10月15日から18日にかけてアイルランド・ダブリンで開催された欧州栄養学連盟(FENS)のカンファレンスにおいて、イタリア・ナバーラ大学とカターニア大学の合同研究チームが発表した研究では、1日に1杯から4杯のコーヒーの習慣が、2型糖尿病の発症リスクを著しく引き下げることが報告されている。
研究チームはコーヒー消費とメタボリックシンドロームに関するポーランドとイタリアの研究を詳細にレビューした結果、コーヒーに含まれる抗酸化物質であるポリフェノール、特にフェノール酸とフラボノイドが2型糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームを予防する働きがある可能性が示唆されることになった。
適量のコーヒー摂取が持つこの優れたメタボリックシンドロームの予防効果は、カフェインレスでのコーヒーでも確かめられている。カフェインではなくあくまでもポリフェノールにメタボリックシンドロームの予防効果があるのだ。
しかしながら飲み過ぎ(1日5杯以上)はこの健康メリットが徐々に薄れていくこともまた確かめられた。適量の範囲内のコーヒー摂取に健康効果があることになる。
そしてこの適度なコーヒー消費はメタボリックシンドローム以外の疾病、例えばがんをはじめとするほとんどの疾病による死亡率の減少に関連していることも示唆されることになった。適量のコーヒー習慣に秘められた健康効果にぜひあやかりたいものだがいかがだろうか。
参考:「Cell」、「Mayo Clinic」、「Coffee & Health」ほか
文=仲田しんじ
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