ホリデーシーズンには家族や親類縁者と共に過ごす機会も増えるが、それでもやはり現代人には1人で過ごすプライベートな時間がかつてないほど必要とされているようだ。現代アメリカ人は休日であっても家族と4時間以上共に過ごすのは耐えられないというのである。
■休日に近親者と共に過ごせる時間は3時間54分
お盆休みや年末年始にかけてはこの時期にしか会わない人々と親交を温める機会も増えるだろう。普段なかなか会えない人々と交流する機会は、貴重なひと時であることは間違いないのだが、それでも現代人にとって愛すべき人々と一緒に過ごせる時間は、心理的にどんどん短くなっていることが最新の調査で報告されている。
アメリカとカナダで低価格帯モーテルチェーンを展開する「Motel 6」の依頼でマーケティング調査会社の「OnePoll」は、ホリデーシーズンに家族連れで帰省したアメリカ人2000人に対して調査を行っている。
収集した回答データを分析した結果、休日に家族を含め愛すべき最も身近な人々と共に過ごせる時間は平均して3時間54分であった。現代人は最愛の人々であっても4時間以上共に過ごすことに、きわめて抵抗を感じるのである。
そしてこうしたホリデーシーズンの帰省中にあって、4人に1人は機会を窺って別の部屋で1人で過ごす時間を確保しようとし、一方で37%はいったん完全にその場を離れて外出することがあると報告している。
しかし誤解してはならならないのは、回答者の95%はホリデーシーズンに近親者と過ごすことはとても重要で有意義なことと考えていて、5人に2人が帰省で2日以上の滞在することを計画しているということだ。
そしてもちろん家族の大半は帰省での滞在を楽しんでいるのだが、その一方でプライバシーの確保に難を感じたり、夜あまり眠れなかったりというストレスを決して少なくない数が感じている。やはり1人の時間が持てないことは、以前にも増して現代人にとってストレスになることが示唆されているのである。
今回の調査を企画した「Motel 6」は、帰省であっても場合によっては帰省先の近くに宿を取ってみてもよいという提案をしている。自らのビジネスに繋げようという魂胆が見え見えともいえるが、ストレスを考慮すれば検討に値する解決策なのかもしれない。
■大学1年生にとって重要な“孤独”
現代人にとって、1人で過ごせるプライベートな時間がいかに重要であるのかがあらためて確認させられる話題なのだが、それは社会人だけでなく学生にもあてはまるようだ。大学生、とりわけ新入生にとって1人で過ごす時間は、その後の充実した学生生活を左右する重要な役割を果たしているという。
カナダ・ロチェスター大学、カールトン大学、ベルギー・ヘント大学による合同研究チームが2019年3月に「Motivation and Emotion」で発表した研究では、大学1年生にとって孤独な時間は、悪いものであるどころかむしろ学業生活に好影響を及ぼすことを報告している。つまり学生時代こそ、有意義な孤独な時間の“味をしめる”べき時期であるのだ。
研究チームはアメリカの大学1年生147人、カナダの223人を対象にした2つの研究で、新入学の時点での孤独な時間を求める動機の強さが、学生生活の成功を占う予測因子になることを示している。
今回の研究でもたらされた主な知見は下記の通りだ。
●自分の時間を大切にして楽しんだ1年生は、メンタルヘルスがより良好であった。
●孤独な時間は、社会的圧力から自分自身を切り離し、自分の価値観や興味を優先させる。これにより、より良い行動規範が可能になる(自律性、主体的選択、自己調和の感覚の向上)。
●孤独を選ぶモチベーションと良好なメンタルヘルスの関係は、皮肉なことに大学への帰属意識が低い者にとってより強くなる。
●親は子どもたちを“ひとり遊び”ができる子どもにすることで、子どもたちの孤独を扱う能力を養成する役割を果たしている。
大学生時代は多くにとって積極的に孤独を味わうことができる最初の環境になるのだろう。大学1年生の時点で孤独に浸る楽しさと充実感の味をしめることで、その後の学生生活に少なからぬ好影響を及ぼすようだ。
■10分間のマインドフルネス瞑想で学習能力が向上
思い思いに過ごすのが1人の時間の醍醐味だが、1人でいられる時間であるからこそぜひ試してみたいのが昨今注目されているマインドフルネス瞑想であるという。ほんの10分でも認知機能にきわめて多大なメリットをもたらすことが最近の研究で報告されている。
米・ボール州立大学の研究チームが2019年11月に「Memory & Cognition」で発表した研究では、メディテーション瞑想が認知機能に及ぼす短期的な影響を実験を通じて探っている。
実験に参加した142人の大学生は2グループに分けられ、Aグループには10分間のメディテーション瞑想のオーディオコンテンツを聴かせ、Bグループにはイギリスの田舎町を紹介する10分間の音声コンテンツを聴かせた。そしてその後、両グループ共に各種の認知機能を計測する4つのテストが課された。
テストの回答データを分析したところ、マインドフルネス瞑想を体験したAグループは言語学習(verbal learning)と記憶力が有意に高まっていることが突き止められた。この2つの能力は新しいことを学習する際にきわめて重要な認知機能である。
その一方、ある意味では興味深いことに10分間のマインドフルネス瞑想を体験しても、記憶形成(consolidation)と長期記憶の想起(retrieval)の能力は特に高まることはなかった。
ともあれマインドフルネス瞑想において学習能力が高まることが実験を通じて示唆されたことは注目に値する。1人の時間を有意義に過ごすためにも、普段の生活にマインドフルネス瞑想を取り入れてみてもいいのかもしれない。
参考:「Cision US」、「Springer」、「Springer」ほか
文=仲田しんじ
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