酔った勢いにまかせた言動はたいてい後悔することになりそうだ。アルコールで大胆になったが故の性行為は特に深い禍根を残すものであることが最新の研究で報告されている。
■酔った勢いのセックスは後で後悔する!?
アルコールやタバコ、加えて海外では各種の合法的な薬物を用いて気分を変える行為は、もちろんその是非はあるが広く一般的に行なわれている。これらの嗜好品を摂取することで気が大きくなったり、あるいは性的欲望が引き起こされてくるケースもあるだろう。
ニューヨーク大学ローリー・マイヤーズ看護学院の研究機関である「The Center for Drug Use and HIV Research」の研究チームが2018年1月に心理学系学術ジャーナル「Psychology and Sexuality」で発表した研究では、嗜好品に含まれる化学物質がそれぞれ少し異なるリスクを招くことが指摘されている。つまり嗜好品によってそれぞれしでかしやすい“失敗”があるのだ。
研究チームはニューヨークでナイトライフを楽しむ18歳から25歳の若者679人にアルコール、合法マリファナ、合法ドラックの使用実態と気分の変化についての詳しい調査を行なった。
収集した回答を分析したところ、アルコールが最もセックスとの関係性が強いことが浮き彫りになった。アルコールと合法ドラッグ(エクスタシー)は合法マリファナよりも性的欲望を引き起こすものであることがわかったのだが、アルコールはそれに加えて酔っている(ほろ酔い程度の)当人の性的魅力も高める傾向もあるということだ。
こうしたことも影響しているのか、アルコールを摂取して“酔った勢い”で及んでしまった性行為はほかの嗜好品が主要因の性行為よりも後悔する度合いが高いというから興味深い。アルコールで相手が魅力的に見えて本人の性的魅力も増すために性行為に及ぶ確率が高まり、そのぶん“一夜の過ち”の確率もまた高まるようだ。
もちろんセックスそれ自体はリスクではないが、酔った勢いでしてしまうことには自重が求められる調査結果ということになるだろう。研究はまだ初歩的なものであり、これらの嗜好品を同時に摂取する“猛者”もいることから、今後さらに広範な調査が求められいるが、アルコールを口にした時はくれぐれも言動に気をつけるべきであることが再確認されてくる話題だろう。
■お酒の種類によって異なる気分の変化
アルコールがセクシャルな言動に人を駆り立てている実態が明らかになったが、アルコールの種類によっても導かれる気分が少し違うことが最近の研究で報告されている。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルのオープン学術ジャーナル「BMJ Open」で2017年11月に発表された研究では、世界21ヵ国3万人もの人々に各種アルコール飲料を飲んだ際の気分の変化についてアンケート調査を行なっている。どのお酒が人々をどのような気分に誘っているのか、興味深い実態が明らかになった。
●赤ワインとビールは気分をリラックスさせる
赤ワインを飲む52.8%は気分がリラックスすると回答している。ビールについてもおよそ半数が飲むとリラックスした気分になることを報告している。
リラックスできる一方で、特に赤ワインは気だるさを感じさせることも浮き彫りになっている。赤ワインを飲む60%が眠気に襲われると回答しているのである。ということは“寝酒”に赤ワインは相応しいようだ。
●スピリッツ類はエネルギッシュになり自信が高まり、そしてセクシーになる
スピリッツ類(ウォッカ、ウイスキー、ジンなど)はエネルギーに満ち(58%)、自信が高まり(59%)、そして性的になる(42%)ことが報告されている。人をセクシャルにするアルコールの“主犯格”はスピリッツ類ということになりそうだ。
しかしネガティブな一面も併せ持つ。スピリッツ類の飲酒で、30%が攻撃的になり、28%がせっかちになり、22%が涙もろくなると回答している。
落ち着いて飲みたいときには赤ワインやビールを、活気溢れる飲み会にしたい場合がスピリッツ類を選ぶと良いのかもしれない。酒税法上は別ジャンルになるが、おそらく焼酎もスピリッツ類と同じ効能をもたらすだろう。いずれにしてもお酒はポジティブに楽しみたいものだ。
■ウイスキーは少量の水で割るのがいい
良くも悪くも人の気分をかなり大きく変えるのがウイスキーなどのスピリッツ類ということだが、ウイスキーのベストな飲み方が科学的に判明したようだ。
昨今の大衆居酒屋ではウイスキーをソーダで割ったハイボールが人気だが、ウイスキー通にいわせればストレートやオンザロックに限るという声も根強い。そして2017年8月にスウェーデン・リンネ大学の研究チームが学術ジャーナル「Scientific Reports」で発表した研究では、ウイスキーはほんの少量の水で割って飲むのが最も味と風味を楽しめることを指摘している。
芳しいウイスキーの風味はグアイアコール(guaiacol)という有機化合物が担っている。ストレートの状態ではこのグアイアコールはウイスキーの液体全体に混ざりあっているのだが、少量の水を加えることでグアイアコールが液体の表面に浮上してくる傾向があることを研究チームはコンピュータシミュレーションで突き止めたのである。つまり少量の水で割ったウイスキーはグラスを口に着けた時にグアイアコールの風味をより楽しめるということになる。
具体的には、アルコール度数の高いウイスキー(カスクストレングスなど)はアルコール度数が45度になるくらいまで水を加えることで風味が良くなる。一般的なウイスキーなら水はごく少量にすべきで、割った状態でアルコール度数が27度以下にならないようにして飲むのが良いということだ。
もちろん最終的にはそれぞれの好みの飲み方で楽しむことにはなるのだろうが、ウイスキーの風味を楽しむことを最優先に考えるのならば、少量の水で割って飲むのがサイエンス的には正しいということになる。また小さい氷を入れて少し時間を置いてから飲むのも良さそうだ。ウイスキーハイボールをゴクゴク飲むのも良いが、たまにはウイスキーを舐めるようにゆっくりとチビチビ飲んでみてもいいのかもしれない。その場合、やはりチェイサーがあるに越したことはないだろう。
参考:「Taylor & Francis Online」、「BMJ Open」、「Nature」ほか
文=仲田しんじ
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