“eスポーツ”の知名度も高まり、世のビデオゲーマーに対する印象が一変した感もあるが、それでも一般のゲーム好きに対しては運動不足で不健康であるイメージも根強いかもしれない。さらにゲーム好きには肥満体型の者が多そうな感もあるが実態はどうなのだろうか。
■ビデオゲーム好きが特に太っているわけではない
ビデオゲーム好きの人物についてどのようイメージを抱くだろうか。いわゆる“ゲーム実況”を配信するユーチューバーも目立つ昨今だが、ビデオゲーム好きな人物には“ひきこもり”や運動不足、人間嫌いといった従来のネガティブなイメージもまだありそうだ。そしてその体型もどちらかといえば肥満体型の者が多そうにも思えるかもしれない。
そこでドイツ・ヴュルツブルク大学の研究チームが2019年6月に「Social Science & Medicine」で発表した研究では、これまでに発表された20本もの研究論文をメタ分析して座っている時間が長いビデオゲーマーとその体型の関係を探っている。ちなみに対象となった実験参加者は合計で3万8000人にも及ぶ大がかりな分析であった。
これらのビッグデータを分析したところ、ビデオゲームのプレイ習慣と高体重との間には、ほんのわずかな相関関係しか示されなかった。特に子どもの間では、ビデオゲーム好きであるかどうかは体重にほとんど関係がないことが明らかになったのだ。
ビデオゲーム趣味が体重に及ぼす影響は、大人では約23%とやや有意な関係があるが、10代では約2%、子どもでは約1%と意味のある関係性がないことが浮き彫りになった。
ゲーム好きの子どもの一部が大人になる過程でもゲームをプレイする趣味を持ち続けている一方、ほかの子どもたちは年長になるにつれて新たなアクティビティにも興味を持ちはじめビデオゲームから離れるケースもある。したがってゲームを大人になってまで趣味として続けている者はそれまでの運動量が少ない傾向にあり、太る確率がやや高まると考えられるのである。
ビデオゲームのプレイ時間が増えれば単純に運動に割ける時間が少なくなることは明らかだ。10代まではその影響は少ないものの、あまり運動しない生活が続けば当然ながら肥満のリスクは高まる。大人のゲーム好きには意識的に身体を動かす機会を確保することが求められるのだろう。
■部屋の照明を消さないまま眠ると太る?
ビデオゲームやオンラインゲームが好きな人物には夜更かししているイメージもあるかもしれない。夜なべしてゲームをしているとプレイ中に不意に眠ってしまったり、プレイ終了直後にパソコンや部屋の明かりもそのままに倒れるように眠ってしまうケースもありそうだ。そしてそこにはまだ別の肥満リスクが潜んでいることが最新の研究で指摘されている。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究チームが2019年6月に「JAMA Internal Medicine」で発表した研究では、就寝時の部屋の人工的な照明と体重の関係を探っている。
研究チームは国家規模の女性健康データである「Sister Study」から健康なアメリカ人女性(35歳~74歳)の4万3722人を調査した。アンケート調査では就寝中の照明の状況などの実態を明らかにする質問がなされたのだが、就寝中の部屋の照明やテレビやパソコンのディズプレイから発せられる人工的な明かりが、体重増加に関係していることが突き止められたのだ。
部屋の照明やテレビなどをつけたままで眠る女性の17%は調査期間中に5キロ以上体重が増加していたのである。これは過体重リスクが22%に高まり、肥満リスクは33%になることを意味しているということだ。
一方、部屋の中のわずかな明かりや部屋の外から入ってくる明かりなどはほとんど体重増加に影響を及ぼしていないことも明らかになった。
研究チームによれば、人間の身体は本来自然光に適応しており、部屋の照明などの人工的な光はホルモンの分泌などを変化させる可能性があり、肥満などの健康リスクを招くものになるのではないかと説明している。夜にビデオゲームをプレイすれば必然的に人工的な光を長時間浴びることになるが、くれぐれも眠る時には部屋を暗くするのを忘れないようにしたい。
■適度な筋トレで肝機能の向上
ビデオゲームに興じる時間を確保しようと思えば、運動に割ける時間も減ることになる。そして身体を動かす時間が減れば当然ながらそれだけ肥満リスクも高まる。
ランニングや自転車などの有酸素運動は減量に効果的だが、どうしてもある程度の時間が必要になる。慌しい生活の中で趣味の時間も充実させたいという向きにとって、運動の時間を確保するのはなかなかの難題かもしれない。
消去法的にも僅かな時間でできる効果的な運動が求められているのだが、そこで注目されてくるのが筋トレだ。ほんの短時間でできる適度な筋トレで糖尿病のリスクを減らせることが最近の研究で報告されているのである。
ブラジル・カンピーナス州立大学の研究チームが2019年4月に「Journal of Endocrinology」で発表した研究では、マウスを用いた実験で適度な筋力トレーニングが肝機能に好影響を及ぼすことが報告されている。15日間に及ぶ適度な筋力トレーニングによってそれまで高脂質血症であったマウスの肝機能が向上し、血糖値が正常に戻ったのだ。
トレーニングをしたマウスの肝臓は代謝が変化してインスリンに対する感受性が高まり、グルコースの値が低くなると研究チームは説明している。
ただ注意したいのは、激しすぎる筋トレは逆に肝機能を損なうリスクが高まることだ。毎日ごく短時間の筋トレでじゅうぶんであり、時間のない向きにはむしろ好都合である。もちろん時には有酸素運動を行なう機会も作りたいものだが、まずは短時間でどこでもできる腕立て伏せや腹筋などの筋トレを習慣づけてみるといいのかもしれない。
参考:「ScienceDirect」、「NLM」、「NLM」ほか
文=仲田しんじ
コメント