“ビール腹”という言葉もあるように、メタボ体型の主犯格のイメージもあるビールだが、適量であればむしろ健康にさまざまなメリットがあることが指摘されている。
■ビールが身体に及ぼす好ましい8つの効能
適量のビールは身体に良いという研究が相次いで発表されビール好きを喜ばせているようだ。健康情報系ライターのブリアナ・スタインヒルバー氏は適量のビールが身体に及ぼす好ましい効能を8つ解説している。
1.栄養がある
ビールは飲み物というよりも液体の食べ物であるという形容が相応しいことを多くの専門家が認めている。
イメージに反し、ビールにはワインよりも多くのビタミンBとタンパク質が多く含まれていて、そのほかにもリン、葉酸、ナイアシンが豊富に含まれいる。また抗酸化物質の含有量もワインと同等である。
2.肥満を予防する
これまた“ビール腹”のイメージに反し、適量のビール飲酒習慣を持つ者には肥満が少ないことが指摘されている。昨年のデンマークの研究では、週に1杯以上6杯未満のビール飲酒習慣のある者は、ビールをまったく飲まない者よりも肥満リスクが21%低下することが報告されている。
3.心臓の健康に良い
アメリカ心臓協会の2016年の研究では、8万人もの人々の健康診断データを6年間追跡した結果、適度な飲酒習慣が循環器系疾病リスクを下げることを報告している。そしてビールの飲酒習慣を持つ者は心臓疾患での致死率が42%低下することも示している。
4.骨に良い
ビールは牛乳よりも骨に良いということだ。2013年の米オーランドの研究では、ビールの飲酒習慣を持つ男性は骨密度が高いことが示されている。ビールに多く含まれるシリコンが骨の形成に好影響を及ぼしているのではないかと説明されている。
5.知的能力を高める
普通は酒に酔えば思考力や判断力が衰えるのが当然に思われるが、適量のビールを飲んだ状態では知的能力が向上するというから興味深い。2012年の研究ではビールを飲んだ者はパズルの課題で成績が良くなることが報告されている。
またロヨラ大学シカゴ校の研究では適量のビール飲酒習慣を持つ者は、ビールをまったく飲まない者に比べてアルツハイマー型認知症のリスクが23%低減しているということだ。
6.歯に良い
2012年の国際的な研究では、ビールが口内環境に悪影響を及ぼすバクテリアの繁殖を抑制できることが報告されている。ビールのこの働きは歯にも歯茎にも好影響を及ぼすということである。
7. 炎症を抑える
2009年のベルギーの研究では、ビールの原料となるホップから抗炎症化作用のある化学物質(GRα、 PPARα、PPARγ)を発見し、これがビールに多く含まれていることを報告している。ビールは身体のさまざまな疾病の要因となる炎症反応を抑制するということだ。
8.長寿に繋がる
2010年のテキサス大学の研究では、適量のビール飲酒習慣もつ者は、まったく飲まない者よりも長生きする傾向があることを報告している。
ともあれ“適量”であればビールは実に健康に資するアルコール飲料ということになる。“適量”とは具体的には中ジョッキ程度のビールを1日に女性なら1杯、男性なら2杯ということだ。はたしてこの適量を守れるだろうか……。
■瓶ビールの茶色い瓶の秘密とは?
大きなジョッキになみなみと注がれたビールを大胆に傾けて喉ごしを味わうのはビール党にとっての醍醐味だが、キンキンに冷えた瓶ビールの美味しさも侮れない。残念ながら飲食店によってはビールサーバーのメンテナンスなどの事情によって、生ビールよりも瓶ビールを注文したほうが賢明なケースもある。
そして瓶ビール(ボトルビール)の美味さの秘密はその茶色い瓶にあることがあらためて指摘されているようだ。
アメリカの人気の地ビール醸造所、マサチューセッツ・ブルーイングの品質管理ディレクターであるジェイム・シアー氏は、日光の影響を受けやすいビールにとって茶色の瓶がいかに重要であるかを解説している。
確かに市販されている瓶ビールのほとんどが茶色の瓶を採用しているが、これは日光によって発生する“日光臭(lightstruck)”を防止するためであるということだ。
「(映画『グレムリン』の)グレムリンのように、ビールの扱い方にも厳禁とされているものがあります。保管の時間と温度に関するものに加えて、日光に晒すことは極力避けなければなりません。日光の波長のある部分にビールが反応してMBT(3-メチル-2-ブテン-1-チオール)が生成されてしまいます。そしてこの波長を遮る最善策が茶色の瓶なのです」(ジェイム・シアー氏)
MBTの生成が“日光臭”の原因と考えられ、香りだけでなく味も損なっているということだ。しかしながらこのベストな茶色の瓶をもってしてもMBTの生成を100%防止することはできない。したがってシアー氏によれば、いったん購入した瓶ビールはすぐに飲まなくても冷蔵庫に入れて保管することを推奨している。
そしてもちろん、缶ビールを選択してもよい。缶ビールの場合はほぼ完全にMBTの生成は防止できる。
「缶ビールは100%、酸素の侵入の防止できていますが、実は瓶ビールはそうではありません。時間と共に僅かながら瓶ビールのキャップの部分がから酸素が侵入して劣化が進み、味が損なわれてきます」(ジェイム・シアー氏)
ということはある程度長く保管する場合は缶ビールのほうがよいということになる。かつての缶ビールには、缶を成形する際に工作機械側の潤滑油が僅かに缶の内側に付着して香りを損ねていたという指摘もあったようだが、1990年代に入り製造方法も進化して潤滑油が入り込むことはなくなったとシアー氏は説明している。
瓶にしても缶にしても、基本的にはなるべく最近に出荷されたものを、あまり保存することなく飲み切るに尽きるということだろうか。一度ビール工場を見学してできたての新鮮なビールを飲んで味を確かめてみてもよいのかもしれない。
参考:「NBC News」、「Yahoo! Life」ほか
文=仲田しんじ
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