超高齢化社会の中で注目を浴びる健康的“おひとりさま”活動の数々

ライフハック

 特にキッチリと計画を立てなくとも、またスケジュールがあう仲間がいなくとも、一人でフラリと旅に出てみるのも良いものである。

■ゆったりと楽しみたい一人旅の効能

「一人旅はより有意義な旅となる。なぜならそれだけ多く自分と向き合えるからだ」(トーマス・ジェファーソン:第3代米大統領)

 ややもすれば課題に負われる毎日を過ごしている中にあって、一人旅は日々のルーティーンから解放される絶好の機会だ。一人旅の効能には以下のようなものがある。

●オープンマインドになれる
 一人旅の最中は否応なく自分自身を強く意識することになる。すべては自分の意志と決断で旅が進んでいくからだ。そして旅の間は不慣れな環境に身を浸し、多くの不確定要素に直面するため、寛容性と幅広い視野を持たなくてはならない。つまり旅の間はオープンマインドな状態でいられて、他者への理解と共感が深まり、多くの気づきがもたらされる。

●ちょっとしたスリルを味わう
 旅の最中の勝手知らない環境の中では、さまざまなリスクやちょっとした危険に晒されることもある。初めて入る飲食店で一人で食事をするなど、普段の生活ではあまりしないことでも一人旅では不可欠な行動になる。こうした環境に浸ることで、普段の生活では抑制しているコミュニケーション能力などを大胆に発揮できる機会となる。

●瞑想と同じ効果
 旅の醍醐味のひとつに“初体験”があるだろう。初めて訪れるスポットで初めて見る物事に次々と出くわす体験は、瞑想と同じ効能があるということだ。新しい物事に触れることで精神的ストレスや不安の発生が妨げられ、フラストレーションを最小限に抑えることができる。

●予断許さぬ環境に飛び込む
 あまり細かい予定を立てずに気の向くままに出かけられるのが一人旅ならではの楽しさだろう。ぜひとも一人旅では事前に旅の筋書きをあまり考えず、何が起るかわからない予測不可能な状況に飛び込むつもりで楽しみたいものだ。そうすることで、より広い観点から旅先の魅力を発見できる。

 今はインターネットを活用することで、初めて訪れる場所でも事前にかなりの情報が入手できるようになってきている。しかし旅先についての情報を集めすぎると、なるべく多くを回ろうとして旅が煩雑なものになってしまい、旅の醍醐味が半減するばかりか疲れきってしまうかもしれない。したがって大まかな計画だけにして、あとは現地で偶然の出会いに身を任せ、普段眠っている感覚や能力を呼び覚ましてみたいものだ。

■“おひとりさま”で打ち込んでみたいアクティビティ5

 一人旅ばかりではない。ほかにもぜひとも“おひとりさま”で打ち込んでみたいアクティビティが盛り沢山だ。いずれも思わず熱中する趣味でありながら、心身の健康に資する活動であり試してみない手はないものだ。

●空想する
 ちょっと時間が空いた時など、目下の仕事や用事のことからいったん離れて精神を解き放ち自由に空想を巡らせてみる。自由な空想は緊張と不安を緩和し、クリエイティビティを高める。

●個人菜園
 家庭菜園を持ったり共同菜園に参加するなどして土に触れ、作物を育てる活動は健康増進に繋がる。ガーデニングなどのゆったりとした身体活動はストレスを緩和して気分を爽快にし、自然に触れることで生活を前向きに送れるようになる。

●楽器演奏の練習
 “おひとりさま”活動としての楽器演奏は健康に大きく貢献する。ある研究によれば、日常的に楽器を演奏する者は心臓や血圧の健康を保っている傾向があるという。また新たなスキルを獲得するという意味においても、楽器演奏が上達することは自己評価を高め感覚の鋭敏さを維持できる。

●1日2時間までのビデオゲーム
 昨今のビデオゲームは優れたものが多くメンタル面への好影響が指摘されている。ビデオゲームに熱中することでストレスとうつ気分を緩和し、またケガをした時などは実際に肉体的な痛みを暫し忘れることができるという。さらに記憶力と意思決定能力を向上させることも示唆されている。しかしながらものには限度があり、1日2時間以内を厳守する。

●就寝前の日記
 就寝前の数分間、今日1日を振り返って簡潔な日記をつけることを心がける。特に感謝の言葉を書き綴ることで、ストレスを低減し免疫力を高めて心身の健康を増進する効果があることが2006年の研究で報告されている。

“おひとりさま”でできる有益な活動がこれだけあるとすれば、独りでボーっとしている暇などないということになりそうだ。

■世界最高齢の長寿の秘訣は「独身でいること」

“おひとりさま”で行なう有意義な活動がいろいろあることがわかったが、その究極の効能を体現しているのが、 2017年4月15日に117歳で亡くなったエマ・モラーノさんだ。生前のインタビューで長寿の秘訣をたずねたところ、それは「独身でいること」だと答えている。

 モラーノさんの晩年の生活スタイルは早い時間に就寝して、肉は食べずに1日3個の卵(2つは生卵、1つは調理)を食べ、少量のブランデーを飲み、時おりクッキーとチョコレートを口にしていたという。これらの生活習慣が長寿に関係していることが考えられるのだが、ご本人が長寿の秘訣としてまず最初に口にするのは「独身でいること」だ。

 1938年、39歳の時に暴力的な夫から逃れて別居して一人暮らしをはじめ、工場での労働や料理人として働き自活していた時期もあるという。別居に踏み切ったのは前年に生涯で唯一授かった子どもを生後6ヵ月で亡くしていたことと、すぐに暴力を振るう夫に愛想を尽かしたことである。

 一方で独身者や離婚者に短命な傾向があるという調査も報告されているが、ことモラーノさんに限ってはまったく関係ないようだ。これはモラーノさんが亡くなる直前まで毎日充実した生活を送っていたことに秘密がありそうにも思えてくる。超高齢化社会を迎える中、孤独を感じる暇のない充実した“おひとりさま”生活が今後ますます注目されてくるのかもしれない。

参考:「Psychology Today」、「Health Hub」、「Elite Daily」ほか

文=仲田しんじ

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