女性が指で髪をサッとかき上げながらこちらを振り向いたとき、ひょっとすると好意を持たれているのではないかと気になってしまうかもしれない。しかし残念ながら(!?)、最新の研究ではそれは単なる希望的観測に過ぎないことが指摘されている。
■ユニバーサルな“好意”あらわすサインとは
初対面の人や異なる文化的背景を持つ人との交流などでは、自分が相手にどう見られているのか理解しにくいケースもあるだろう。そこで米・デイトン大学の研究チームが2018年5月に心理学系学術ジャーナル「Psychological Bulletin」で発表した研究では文化的背景を越えたユニバーサルな“好意”あらわすビジュアル面での“サイン”を探っている。
研究チームはこの数十年の人間の魅力についての学術研究を検証して人的交流において好意をあらわす行動を特定した。それによれば相手の、アイコンタクト、笑顔、先に会話を切り出すこと、笑い、接近した状態を保つことは文化的背景に関わらず相手が好意を感じているサインであるといういうことだ。
また西欧文化では相手の動作を真似したり、ウンウンと頷くこともまた好意のあらわれと見なすことができるという。
興味深いのは好意を持っていると誤解されやすい行動もまた同じく特定してる点だ。例えば女性が髪をかき上げる動作は相手に対して特別に好意を持っているわけではないことを指摘している。そのほかにも、眉を動かすこと、身振り手振りを多用すること、服装を直すこと、無防備な体勢でいること、上体を傾けていることなどは相手への好意をあらわすものではないということだ。
こうした好意をあらわすサインは信頼と相互扶助関係を育むことに関係しており、友好の第一歩となる。
今回の研究はあくまでも“好意”のサインであって、このサインが恋愛やロマンスに繋がるものであるのかはまた別の問題であるということだ。たとえばドクターと患者との関係、親と子の関係、ビジネスマンと顧客の関係などによりよく適用されるということだ。
くれぐれも髪をかき上げながらこちらを振り向く女性を見て“誤解”しないようにしたいものである。
■“恋人選び”の視線の向かう先は?
では逆にロマンチックな関係に発展するかもしれない相手の好意はどうやって見分ければよいのだろうか。
米・ウェルズリー大学とカンザス大学の合同研究チームが2017年7月に学術ジャーナル「Archives of Sexual Behavior」で発表した研究では、アイトラッキング技術を駆使して写真の異性の全身像のどこに注目しているのかを分析している。
実験では参加者の大学生105人(男性36人、女性69人)に対して、アイトラッキング機器を装着した状態で面識のない異性の全身像の写真を次々に見てもらった。この課題は各人2回にわたって行なわれたのだが、1回目は友人選びの観点から写真を見てもらい、2回目は恋人選びという視点から異性の写真を見てもらった。
収集したアイトラッキングのデータを分析したところ、興味深い傾向が明らかになった。まず友人選びという観点で写真の人物を眺めた場合、男女ともに参加者の多くは人物の脚と足の部分をより多く注目している傾向が浮き彫りになった。つまり、対面した相手がもしアナタの脚や足を多く見ているようであれば、その人とはロマンチックな関係にはなりにくいということになる。
一方、恋人探しの観点では男女共に写真の人物の上半身、胴体と頭部をよく見ていることが判明した。しかし若干の男女差があることも分かっている。
将来のパートナー候補としてその人物を見た場合、女性は主に人物の顔をメインに注目していた。これは、男性の顔の左右対称性をよく吟味しているからであると説明できるという。生物学的に人間の顔は左右対称であるほど健康であり遺伝的疾患のリスクが少ないことが示唆されるからだ。したがって男性は相手の女性が顔をジロジロ見てくるようであれば“脈アリ”な可能性が高くなるとも言えそうだ。
これに対して男性目線の場合は顔はもちろんだが、女性の胸とウエストのくびれ、そしてヒップの張り具合にも注目しているということだ。いわゆる“エロ目線”ということなってしまうが、これはパートナーとしての妊娠率の高さを検分するために男性が進化人類学的に注目してしまうボディパーツであるということだ。つまり相手が顔を含めて身体のプロポーションを舐めるように(!?)眺めていた場合、パートナー候補という前提で女性のアナタをチェックしていることになる。
ただ男性の恋人選びの視線は一筋縄ではいかない側面もあるということだ。それは男性があまりにも相手の女性の顔を見過ぎている場合、それはポジティブな兆候ではない可能性もあるという。女性の顔に極度に注目している男性は往々にして“批評家”目線で見ているケースがあり“あら探し”をしている可能性もあるのだ。確かにこうした男性とはロマンチックな関係にはなり難いのかもしれない。
もちろん相手の真意を正確に見極めることは容易なことではないのだが、アイトラッキング技術で収集したデータからこうした傾向が浮かび上がってきたのは興味深い。
参考:「NLM」、「Trustees of Wellesley College」ほか
文=仲田しんじ
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