決してスランプというわけではないのだが、仕事の進捗状況がちょっと停滞気味になることもあるだろう。うまく気分転換ができれば再び仕事が捗ることは明らかなのだが……。
■仕事に行き詰ったらしてみたい5つの行動
今日の職場環境は高度にネットワークされているが、その影響からなのかどうかはまだよくわかっていないものの、皮肉なことに現在のオフィスはこの35年で最も低い労働生産性に低落しているともいわれている。メールやSNSのメッセージなど、気を散らして集中力を途切れさせる情報が溢れている中、うまく気分転換して仕事を再開する方法をキャリア形成の専門家であるデイビット・スタート氏とトッド・ノードストローム氏が解説している。
1.カフェインの活用
コーヒー摂取が習慣づいている向きには言わずものがなということになるが、カフェインには多くの健康的な効能と気分を高揚させる効果があることが確かめられている。
朝起きてまず一杯という人も多いとは思うが、一般的(昼勤務)にはもっと相応しい時間帯があるという。それは朝10時~12時までの間と、午後2時~5時までの間である。オフォスや仕事場で1日2回のコーヒーブレイクを挟むことで、停滞することなく仕事が捗るのだ。
2.小目標を達成する
身の回りの些細な雑事など、今日行なう小さな目標を設定して仕事の合間に取り組む。資源ゴミをまとめたり、名刺の整理をするなどちょっとした作業を組み込むことで、仕事にもメリハリが生まれる。そしてたとえ小さな目標でも達成すれば気分が晴れがましいものになり仕事に好影響を与える。
3.友人と電話で話す
必ずしも仕事に直結しない雑談は、意外な発見を思いついたりするなどしてクリエイティビティの向上に繋がる。周囲の同僚と雑談を交わすのもいいが、しばらく話していなかった友人に電話してみることが気分転換に実に効果的であるという。ある研究によれば、日常の付き合いの範囲外にいる友人・知人と接触することで、新たな発想を生み出す革新性が最大72%高まるということだ。
幅広い意見や知識を持つ友人・知人と話すことで、良い意味でこれまでの考え方に混乱が生じ、そのぶん創造性が高まるのである。
4.頭の中に“新風”を呼び込む
誰かと雑談を交わす状況下にない場合は、自分の内部でこれを行なうこともできる。今の仕事に行き詰まりや惰性、マンネリズムを感じた場合、少しの間目を閉じて自分の呼吸を数えてみるなどして頭の中に“新風”を呼び込んでみるのだ。
呼吸を整えながらいったん今の仕事を離れてより大きな構想を思い描くことで、気を紛らわすをものから離れて集中力を取り戻し、“クリエイティブモード”で仕事に取り組める。
5.親切になる
人に親切な行為を行なうことで気分が高揚し、良い“仕事人”になることがわかっている。宅配便のドライバーにジュースを渡したり、共有スペースを掃除したりといったちょっとした親切をすることで、その後の仕事を勢いづかせることができるのだ。
このようなちょっとした行動でムードを変えて再び仕事に意欲的に取り組めるようになる。どれも長時間効果が持続するものではないため、習慣づけてしまうことがポイントであるようだ。
■創造力を高める7つの食べ物
クリエイティビティを高めてくれる効果のある食べ物もある。米ジョンズ・ホプキンズ大学薬学部のサリナ・ラマン氏によれば、創造力を高める7つの飲食物があるという。
1.海苔、海藻類
海苔に豊富に含まれるアミノ酸とチロシンは、意欲やモチベーションを高める神経伝達物質・ドーパミンの生産を促進する。またある研究によって、チロシンは深く抽象的な思考に誘うことが指摘されている。したがって何かに行き詰まりを感じたときなどは海苔や海藻類を食べてみてもよい。
2.アボカド
脳がクリエイティブな状態になるには脳内の良好な血液の流れが求められる。アボカドには脳内の血行を良くして脳細胞に多くの酸素を供給する働きがある。さらに食物繊維を多く含んでいて腹持ちがよいため、アボカドを食べたあとはしばらく食事のことを考えずに済むため仕事に集中できる。
3.ベリー類
イチゴなどのベリー類にもチロシンが豊富に含まれており、クリエイティブな思考を行なう際の脳神経間の活動を活性化させ、ドーパミンやノルアドレナリンの生産を増加させる作用がある。故スティーブ・ジョブズ氏もイチゴをはじめとするフルーツ好きで知られていた。
4.お酒
もちろん飲み過ぎてはいけないが、米ノースウェスタン大学の研究でアルコール摂取がクリエイティビティを向上させることが指摘されている。大酒飲みで知られる芸術家や小説家も少なくないがもちろん健康には注意したい。
5.クルミ
脳にダメージを受けた際にはクルミに含まれるメラトニン、抗酸化物質、オメガ3脂肪酸が脳に有効に働く。2011年の研究では、クルミを摂取することで認知機能と推論能力が向上することが報告されている。クルミ入りのお菓子なども多く、仕事中にも気軽に摂取できるだろう。
6.緑茶
緑茶に多く含まれるアミノ酸類似体であるテアニンは認知機能を向上させ、脳にアルファ波を多く発生させることによってストレスの低減をもたらす。このファルファ波がカフェインをゆっくりと放出させ、集中が長く続き生産性とクリエイティビティが向上する。
7.ダークチョコレート(ブラックチョコレート)
チョコレートの原料になるカカオ豆に豊富に含まれているフラバノールは血管を広げて血液の流れを良くし、高血圧や動脈硬化を予防する。同じく豊富なカフェインとマグネシウムが“幸せのホルモン”と呼ばれるセロトニンとエンドルフィンの放出を促しストレスを低減させる。
もちろん、これらの飲食物はクリエイティビティや集中力の向上を図る食品であって、健康のことは二の次だ。カロリーや糖分、塩分などにはじゅうぶん留意して仕事の合間のティーブレイクを活用したいものだ。
■“アート初心者”にも有効な塗り絵の効能
そもそも今の仕事にそれほどクリエイティビティは求められていないという向きや、創造的な作業やアクティビティにこれまで無縁だったという人もいるだろう。そんな“アート初心者”にもハードルが低いのが意外や“塗り絵”である。
フランス発の大人向けの塗り絵本が少し前から注目を集めているが、この塗り絵がクリエイティビティの向上に貢献するものであることが指摘されている。特にこれまでアートにあまり触れてこなかった人々に対して効果を発揮するという。アートセラピストのマーガレット・カーロック・ルッソ氏は、大人の塗り絵が創造性の向上などメンタルに良い理由を3つ挙げている。
1.塗り絵はアートへの“入門編”になる
創作活動やアート鑑賞にこれまで無縁であった人々にとって塗り絵は格好の“入口”になる。塗り絵によってクリエイティビティを刺激され、塗る作業と色選びに集中することで、日常生活の中でも色に敏感になり、色を活用することに自信が持てるようになる。ある研究では分析的思考を行なっている最中であっても塗り絵をすることでより創造的にもなれることを報告している。
2.塗り絵は不安とストレスを低減させる
塗り絵には心を落ち着かせ、瞑想にも類する効果がある。瞑想や太極拳のように、塗り絵に集中することで暫しの間日常を忘れさせてくれる。ある専門家によれば、完全に自由な絵画創作よりもあらかじめ“枠”を設けた塗り絵のほうが楽みながら創造性を発揮できるケースが多いということだ。
科学的研究では、マンダラ(曼荼羅)の塗り絵の作業中には心拍数と脳波が変化し、不安な気持ちが抑制されストレスが低減されることが示されている。
3.塗り絵は記憶を明瞭にする
塗り絵では普段の日常生活とは異なる脳の使い方を求められ、このことが記憶力や創造力の向上につながり、脳の“若返り効果”があるということだ。
専門家によれば塗り絵は創造性と論理的思考のどちらにも関係しているという。特定の場所を塗るために色を選ぶ作業は脳の論理的思考を司る部分を刺激し、一方で全体の色使いを大局的に考えることは脳の創造的な部分を働かせるという。視覚情報をコントロールして緻密な作業を行なう大脳皮質の領域を活性化することによって、独特の方法で脳が鍛えられるのである。
塗り絵がメンタルヘルスにもたらすさまざまな効能が指摘されているようだ。デジタル機器に囲まれる生活の中、完全にアナログな作業である塗り絵は確かにメンタルの“こりをほぐす”ものになるのかもしれない。
参考:「Forbes」、「Spoon University」、「McKnight’s」ほか
文=仲田しんじ
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