“若さの秘訣”は好奇心と筋トレだった!

サイエンス

 植物や果物に含まれる「フィセチン」が老化を遅らせ、寿命を10%延ばすことが最新の研究で報告されている。

■「フィセチン」にスローエイジング効果

 我々の身体を構成している数々の細胞は2年ほどで全部入れ替わっているともいわれている。ダメージを受けた細胞や死んだ細胞は新陳代謝によって素早く取り除かれて“交換”されるのだが、加齢と共に新陳代謝が鈍り老化した細胞がそのまま居残り続けることでさらに老化が進んでいくものとされている。

 老化した細胞がうまく取り除けないと、免疫系が働きはじめて低レベルの炎症を引き起こし、さらに酵素の分泌を促進して体組織の質を劣化させて老化が進行する。

 ミネソタ・メディカル・スクール大学、メイヨークリニックをはじめとする合同研究チームが2018年9月に学術ジャーナル「EBioMedicine」で発表した研究では、植物や果物に含まれる「フィセチン(Fisetin)」が年老いたマウスの健康状態を改善し寿命を延ばす働きがあることを報告している。そしてほぼ確実に人間にも同様の効果があり、寿命を10%延ばせることが示唆されている。

 フィセチンはこれらの老化細胞をきわめて選択的かつ効果的に処分することができ、少なくとも悪性の分泌物、または炎症性タンパク質によって引き起こされる症状を元に戻すことができる天然由来の成分であることが突き止められたと研究チームは説明する。

 老いたマウスの健康状態を大きく改善したフィセチンだが、研究オームは実験室でヒトの脂肪組織にフィセチンを投与したところ老化細胞が減少したことが確かめられた。マウスを使った実験とはまったく同じ結果ではなかったものの、研究チームはまず間違いなくフィセチンが人間の老化を遅らせる働きがあると考えているという。そして投与開始が高齢期であってもそれなりの効果を発揮するということだ。

 研究チームは今後、どのくらいの分量のフィセチンを投与すれば人体に効果を及ぼすのか、適切な処方量を探る研究も平行して行なっていくという。イチゴやリンゴ、ブロッコリーやキュウリなどに多く含まれるフィセチンについてまだまだ研究は必要とされているが、高齢期医療にとって明るい話題であることは間違いない。

■心の開放性を高めることでスローエイジングに

 若さを保っている人には何か“秘密”があるのだろうか? 最近のフランスの研究ではIQ(知能指数)が高い人物ほど若さを保っていることが報告されている。つまり頭がいい人ほど若いのだ。

 高IQではない者には関係ない話のようにも思えるがそんなことはない。若さを保っている高IQの人物の人格特性と“生き方”を紐解いてみることで、“若さの秘訣”を特定できるのである。

 頭の良い人物の“若さの秘訣”はその性格特性にある。高IQの人物は経験への開放性(Openness to Experience)が高く、新しい体験を楽しみながら受け入れる性格特性を持ち合わせている。この高い心の開放性が旺盛な好奇心を育み、心の若さを保ち、さらには外見の若さにも通じているのである。

 したがって高IQではなくとも、心を広く持ち新たなことにチャレンジする気持ちを忘れず、好奇心旺盛な生き方を選ぶことで心身の若さを保てるのだ。

 個々人のパーソナリティーを示すモデル「ビッグファイブ」の中の1つである経験への開放性だが、この要素が高いことでほかにもいくつものメリットがある。

 好奇心に駆られて新しい体験している最中は、時間がゆっくり濃密に流れてより充実した時間を過ごせる。1年がアッという間に過ぎていくという感覚は、加齢を物語るものだといわれているが、新しいことにチャレンジすることで充実した長い1年を過ごすことができるのだ。

 さらに高い経験への開放性は高いクリエイティビティに結びついていることも最近の研究で報告されている。日常生活を決してルーティーンにせず意識的に変化を加えることで、好奇心を刺激してクリエイティブになれる。心身の若さを保つためにも、常に新鮮な気持ちで日々を過ごしたいものだ。

■握力が弱いと早死にする?

 健康寿命を延ばすためには適度な運動習慣が求められるのだが、最新の研究では筋トレの重要性が指摘されている。特に握力の弱い者は早期死亡率が高まるということだ。

 米・ミシガン大学の研究チームが2018年8月に「Gerontology: Medical Sciences」で発表した研究では、握力の弱い者は早期死亡率が50%も高まることが報告されている。

「一生を通じて、特に高齢期まで強い筋力を保つことは長寿と老化にとってそれぞれきわめて重要です」と研究を主導したケイト・ドゥカヴニー氏は語る。

 研究チームは公のデータを分析して握力の弱さを示す分岐点を男性39kg以下、女性22kg以下と定義した。これまでの年金受給者のデータからは、これに当てはまるのは13%であったのだが、あらためて65歳以上の8326人の男女の握力を調べたところ、46%もの高齢者が握力が弱いと判定された。アメリカ人の高齢者の握力が昔よりも弱くなっていることが示唆されることになったのだ。そして握力が弱いグループは強いグループよりも早期死亡率が50%も高まっているのである。

「今回の研究は高齢のアメリカ人の変化をより正確に反映しており、我々は筋力低下が深刻な公衆衛生上の懸念であると考えています」(ケイト・ドゥカヴニー氏)

 逆に言えば握力のトレーニングを日常的に行なうことで寿命を延ばし、介助を必要としない“身体の独立性”を高めることができるのである。トレーニングをはじめるのに遅すぎるということはなく、思い立ったらはじめてみてよいということだ。

 各種のジムに通ってもよいのだが、その場合筋肉量を増やすことよりも筋力を高めることを主眼に運動を行なうことが重要であるという。日頃あまり重いものを持つことがない向きは、ハンドグリッパーなどを使った筋トレを習慣づけてみても良さそうだ。

参考:「NLM」、「Research Digest」、「University of Michigan」ほか

文=仲田しんじ

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