若い時期の長時間労働で薄毛に? 何かと気になる薄毛の話題2選

サイエンス

“ノー残業デー”や“プレミアムフライデー”など、長時間労働を是正する取り組みが進められているが、長時間労働は頭髪にもよくないことが最近の研究で報告されている。

■長時間労働は髪によくない

 長時間労働に起因するストレスは心身の健康にさまざまなネガティブな影響を及ぼすが、頭髪にもよくないようだ。

 韓国・ソンギュングァン大学の研究チームが2019年7月に「Annals of Occupational and Environmental Medicine」で発表した研究では、4年間に及ぶ追跡調査の末に、週に52時間以上の労働が脱毛症リスクを倍にすることを結論づけている。

 研究チームは20歳から59歳の男性勤労者1万3391人の仕事生活の実態を2013年から2017年の間の4年間、追跡調査した。年齢、家族構成、教育、毎月の世帯収入、喫煙の有無、勤務スケジュールに加え、健康状態も詳しくチェックされた。

 収集したデータを分析したところ、労働時間の長さと脱毛症の発症率に有意の関係があることが突き止められたのだ。具体的には、労働時間が週40時間未満であるとその後の脱毛症の発症率が2%高まるのに対し、40時間以上52時間未満で3%、52時間以上でほぼ4%に上昇するのである。

 研究チームによれば、脱毛症の主な原因は長時間労働で引き起こされるストレスが頭皮の毛包にダメージを与えていると考えられるという。

 毛髪には毛周期という成長サイクルがあり、成長期(anagen)、退行期(catagen)、休止期(telogen)があるのだが、ストレスによって成長期の毛髪が退行期に移行しやすくなるということだ。

 さらに研究チームは、特に20代から30代の時期の長時間労働が脱毛症のリスクを高めることも指摘している。若い時期の長時間労働は後々になって頭皮に少なからぬ影響を及ぼすようだ。

■ウェアラブルな低周波薄毛治療器が登場

“毛包バンク”には大きな期待が寄せられているのだが、もちろん新たな薄毛治療も各方面で開発されている。

 ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームが2019年9月に「ACS Nano」で発表した研究では、微弱電流を頭皮に流して休止期にある毛包を“目覚めさせ”て発毛を促す機器が説明されている。

 研究チームは装着者の身体の動きからエネルギーを集め、きわめて微弱な低周波を発生させる機器を開発し、この低周波を初期の薄毛の頭皮に流すことで、毛包を再活性化し発毛を促すことができると解説している。

 前出の話題でも触れたが、頭皮の毛包には成長期、退行期、休止期の3ステージがあるのだが、この機器が発生させる低周波によって休止期の毛包を“目覚めさせ”、再び毛髪を育成する力を取り戻させるということだ。

 したがってこの機器が有効なのは、毛包がまだ生きながらえている初期の薄毛の状態であり、完全にスキンヘッドになってしまった頭皮には効果がないという。

 身体の動きから電力を得るシステムなのでバッテリーは必要なく、機器自体はきわめてコンパクトである。また微弱な低周波を流すことで生じる副作用は特にないという。

 マウスを使った実験で育毛効果が確認されており、今後は臨床試験から製品化が予定されている。ウェアラブルな低周波薄毛治療器が登場する日は近そうだ。

参考:「NLM」、「NLM」ほか

文=仲田しんじ

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