自分を“高収入体質”に変える3つのスキルとは

ライフハック

 将来にわたってどのくらいお金を稼ぐことができるのか? 生涯賃金を予測するには当人の学歴や能力、あるいはどんな職業に就くかが重要な指標となるが、最近の研究ではもうひとつ見逃せないファクターがあることが報告されている。それは今駆り立てられている欲求を後に引き伸ばせる能力である。

■高収入の人は欲求充足を遅らせる能力が高い

 近くを通りかかるだけで食指が動かされるファストフード店や、衝動買いがしたくなるショップやオンラインショッピングサイトなど、何かと衝動的な欲望を駆り立てるものに囲まれている現代の生活だが、こうした欲望に抗えない人もいれば、コントロールできる人もいるだろう。そしてすぐに満たしたいという欲望をいったん我慢して先へ伸ばせることができる人ほど高収入であることが最近の研究で示されている。

 米・テンプル大学の研究チームは、オンラインで募った2500人以上の実験参加者に対し報酬にまつわる質問をした。例えば今すぐに5万円もらえるのと、後になって10万もらえるとではどちらがよいかという質問である。金額と待つ期間は適時変更されて質問が繰り返されそれぞれの回答データが収集された。

 遅れることでその価値が減少すると感じる度合いは、専門的には遅延割引(delay discounting)と呼ばれている。1ヵ月後に10万円もらうよりも今すぐ5万円もらいたいという人は、“1ヵ月”という時間が5万円以上の価値を割り引くものであると感じていることになる。

 一連の報酬にまつわる質問の後、それぞれの参加者は年収、学歴、年齢、性別、身長、居住地(ZIPコード)、職業、人種、民族を自己申告した。

 研究チームは機械学習アルゴリズムを用いて収集したデータを分析すると、遅延割引と年収に関係性が見られた。もちろん職業と学歴が高いことが年収に最も関係しているが、遅延割引の度合いもまた年収を占う重要な要素であったのだ。具体的には報酬をより遅らせて高い金額で受け取ろうとする者ほど、高い年収を得ているのである。

 これまでにも「マシュマロ・テスト」と呼ばれる子どもを対象とした、マシュマロへの自制心と将来の社会的成功の関連性を調査した実験があったが、再現実験が成功しなかったこともあり疑問を指摘する声も少なくなかった。しかし今回、いわば“大人のマシュマロ・テスト”として、遅延割引に基づく自制心と年収に関係があることが示唆されることになった。つまり経済的成功において自分の欲望をうまくコントロールできることが学歴や職業と同じくらい重要であるようだ。

■“いい人”は中年以降は稼げない?

 年収というのはキャリアの積み重ねが左右するために年齢によって変動してくるものだ。その最初のターニングポイントが30歳と言われているのだが、最近の研究では30歳の時点で“いい人”の男性社員は生涯賃金が大きく下がるという。いったいどうういうことなのか。

 コペンハーゲン大学の経済学者、ミリアム・ゲンソウスキ助教授が「ハーバード・ビジネス・レビュー」に寄稿した記事では、最近発表されたルイス・ターマン氏の研究を解説している。

 ターマン氏の研究はアメリカ国内のIQの高い約1500人のグループを幼少期から老齢期まで(1920年代~1990年代まで)追跡しており、どのような性格特性を持つ人が高い収入を得ているのかを探っている。そして実は“いい人”は30歳を越えると年収が低くなることが浮き彫りになったのである。

“いい人”とは高い同調性(agreeableness)を持つ人物のことであるが、この同調性が高い上位20%は、平均的な人よりも生涯賃金が約3000万円も低いのである。若いうちは“いい人”でいたほうがむしろよいのかもしれないが、30歳を過ぎるとこの傾向があらわれはじめ、40歳から60歳の間で最も顕著になっているという。

 従順で協調性のある“いい人”はややもすれば“押しがきかない”人物である印象を与えてあまり有能にみられないということなのかもしれない。

 ではどういう性格の人物が高収入なのか? それは“誠実”で“外向的”で“気難しい”人物であるという。最後の“気難しい(disagreeableness)”というのがポイントのようで、誠実で外向的でありながらも周囲に流されない態度が有能な印象を与えるのかもしれない。

 しかし注意すべき点もある。著書『Habits of Leadership』の中で心理学者のアート・マークマン氏によれば“気難しい”人物は仕事を失いやすいということで、若いうちから“気難しい”と失業しやすくなるようだ。こうした人物には甘んじて“爪を隠す”時期がそれなりに必要なのかもしれない。

■自分を“高収入体質”に変える3つのスキル

 高い収入を求めて転職をするのももちろん選択の1つだが、転職を考える前に自分を“高収入体質”に変えておけば堅実に高収入を目指せるだろう。

 ではどうすればよいのか。自分を“高収入体質”に変える3つのスキルを「Workopolis」の記事が解説している。

●コーディング
 ある調査によると、コーディングの集中講座を修了した者(432名)の44%が収入を増やしているという。

 必ずしもシステムエンジニアやプログラマーを目指すということではなく、現代社会ではほぼすべての仕事でコンピュータを使用する必要がある。コーディングのスキルは自立したものであり、HTML、CSS、JavaScriptなどを知っておけばさまざまな局面で活用できる。

 今は無料で学べるオンライン学習サイトなどもあり、コーディングの学習環境はかつてないほどに整っている。

●ライティング
 ライティングの能力はビジネスに求められる最も重要な10のスキルの1つであるとされていて、採用担当者が応募者を候補から外したくなるのは多くの場合、履歴書の文章のミスを発見したときだといわれている。

 文法をチェックするサービスを提供している「Grammarly」の研究では「LinkedIn」ユーザーのプロフィールから言語運用スキルを判定し、その後の10年のキャリアを追跡している。その結果、文法ミスの多い者ほどその後の収入の伸びが低くなっていることが明らかになった。

 別の研究でも文章にミスが少ない者ほど収入が高くなる傾向があることが確かめられている。ライティングについても今では各種の講座があり、学び直しがやりやすい環境にあると言えるだろう。

●スピーチ
 公の前で効果的にスピーチできる能力を持たずに出世の階段をのぼる人物を見つけるのは難しい。スピーチでのコミュニケーションは、セールス、教育、プレゼンテーション、インタビュー、メディア出演、会議での講演、社内の集まりなどのケースで真価を発揮する。

 著名な投資家のウォーレン・バフェット氏は若い頃には人前で話すことが苦手で、スピーチ講座に通って話し方を会得したという。効率的に学ぶことで、スピーチの能力を向上させることは誰にでもできる。

 仕事に行き詰まりを感じるようなことがあれば、この3つのスキルの習得を考えてみてもよいのだろう。

参考:「Frontiers」、「Harvard Business Review」、「Workopolis」ほか

文=仲田しんじ

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