自分に自信が持てない“インポスター症候群”は考えられているよりも多い

サイコロジー

 自信満々で自己アピールの強い人物は時に鼻もちならない感を受けるかもしれないが、能力や肩書きは申し分ないのに自分に自信が持てない一群の人々がいる。自己肯定感の低い“インポスター症候群”の人々である。

■インポスター症候群は考えられているよりも多い

 インポスター症候群とは、一般的に考えて成功者の部類に入る人物なのに、当人は自分が成功者に値しない人間に感じており、こじらせると自分は不正な手段で成功した詐欺師であると自認するまでにもなる症状である。

 成功とは縁遠い者からすれば謙虚過ぎてもはや贅沢な悩みにも思えるかもしれないが、最新の研究ではこのインポスター症候群の人々は我々が考えているよりも多いことが報告されている。

 米・ブリガムヤング大学をはじめとする合同研究チームが2019年8月に「Journal of Vocational Behavior」で発表した研究では、エリート校でアカデミック教育を受ける大学生をインタビューし、5人に1人はインポスター症候群かそれに近い無能力感を抱いていることが突き止められている。

 インポスター症候群傾向の学生たちの話を分析してみると、自分と同じ専攻の学生に接している場合、親近感を抱くのではなくむしろ気分が悪化している傾向が浮き彫りになった。

 その一方で別の専攻の友人や、家族など自分の学業とは直接関係のない人々と接している時は、無能力感は減少している。したがってインポスター症候群の症状の緩和には、学業に直接関係のない人々やグループとの交流が重要な意味を持つことになる。

 そしてインポスター症状を覚えた学生の少なくない数が、ネガティブな方法でその症状に対処していることもまた明らかになった。ある学生はビデオゲームにのめり込み、またある学生は周囲に対して強気に振る舞って自分が感じている無能力感を打ち消そうとしているということだ。

 さらに興味深いのは、インポスター症候群の症状を訴える学生たちは決して学業成績が悪いわけではない点だ。ほとんどのインポスター症状は、自分の能力を正確に評価していないことから来ているのである。エリート校など競争の激しい世界では珍しくないことがわかったインポスター症候群について幅広い理解が求められているのだろう。

■高学歴女性にインポスター症候群のリスク

 このインポスター症候群が特に多いクラスタがあるという。それは学術研究職の女性である。

 米・シンシナティ大学とケネソー州立大学の合同研究チームが2019年1月に「Studies in Higher Education」で発表した研究では、調査を通じて学術分野でキャリアを積む高学歴女性の間でインポスター症候群が広まっていることを報告している。

 一般的に自分の失敗が単なる不運であると感じる女性は、物事がうまくいかない時には自分を責めるよりも、詐欺師に騙されたように感じがちであるという。そして自分の成功が運によるものであると感じるが故に、自分の実力に確信が持てずインポスター症候群に陥りやすくなるのだ。

 これまでの研究でも学術研究の分野で成功を収めた女性が意外にも自己不信感、無能力感、不適格感などのインポスター症候群に見られる感情を抱いていることが示されているのだが、今回の研究では実際に1326人の学術研究分野の女性に調査を行い、高学歴女性の間にインポスター症候群どの程度蔓延っているのかを探っている。

 対象となった女性研究者は、インポスター症候群の度合いを計測するテスト(Clance Impostor Phenomenon Score、Cips)を受けたのだが、一般的な成功者は70%の値を見せるのに対し、女性研究者は95%ときわめて高くなっていたのだ。学術研究分野の女性の約3分の2が、程度の高いインポスター症候群傾向を持っていることになるという。

 多くの女性は、職探しにおけるストレスと不確実性が詐欺に騙されたような感情の原因になっていると言及し、今日仕事に就くのは才能よりも運が重要だと感じているため、インポスター症候群傾向が高まるのだと説明できる。

 研究チームは今回の研究が科学、技術、工学、数学の分野において女性研究者の初期のキャリアをサポートするサービスの開発に活用できる可能性があると提案している。つまり当然の話にはなるが、女性研究者においてもキャリアにおける評価が厳密に客観的に行われなければならないということになるのだろう。

■インポスター症候群を克服するには

 実際はそうでもないのに、自分の実力が低いと感じていれば仕事のパフォーマンスも下がってくるというものだろう。どうすればインポスター症候群を克服できるのか。

 実際に多くの人々がインポスター症候群を経験しているのだが、良いニュースとしてはこの症状は恒久的な状態ではなくあくまでも現在の状況、非現実的な自分への期待、ストレスに対する反応であることだ。いくつかの助言を心に留めておくことで症状を好転できる可能性もある。

●誉め言葉を受け入れて自分の価値を知る
 謙虚になりすぎてはいけない。称賛や賛辞にためらわずに自分の業績を受け入れ、必要に応じて自己紹介の肩書に加える。自分の価値を知るということは、自分の業績を他の人に見せることでもある。

●自虐的な考えを止める
 自分に自虐的な思考パターンがあることをよく認識し、それらをよりポジティブな思考に置き換えることを学ぶ。詐欺師のように感じるのをやめる唯一の方法は、自分はその1人であると考えることを止めることにある。

●完璧を求めない
 仕事のすべての面において優れているのでなければ失敗だと信じることを止める。挑戦し失敗することも成長にとって重要である。常に100満点を取ろうとする必要はないのだ。

●自分は独りではない
 インポスター症候群の人々は自分への期待が高く実力以上の成果を出そうとする傾向が高い。逆にもともと自分への期待が低い者は失敗してもあまりショックを受けない。

 もしも自分に不備がないかを常に心配しているなら、それは成功にとって良いことだと考えてみてもよい。たいていの成功者は絶えず過剰なほど自分自身を分析しているからだ。そういう人間は自分だけはないと知ることだ。

 自分の考え方の傾向をよく知り、それをさらに客観的に眺めるようになれれば、おのずからインポスター症候群じから抜け出せることになるのかもしれない。まずは自分の過剰なネガティブさをよく自覚することからはじまるのだと言えそうだ。

参考:「ScienceDirect」、「Taylor & Francis Online」ほか

文=仲田しんじ

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