ファストフードの名脇役であり、時にはじゅうぶんに主役も張れるのがフライドポテトだ。最近ではフライドポテト専門店がいくつか新たにオープンしてグルメな人々の注目を集めているだけに、定番中の定番であるこのメニューがあらためて盛り上がりを見せているようだ。
■フライドポテトの作り方がラップの曲に
欧米では“フレンチフライ”や“フリッツ”と呼ばれ、レストランのサイドメニューに欠かせないフライドポテトだが、外食のみならずに自宅で作るファンも少なくない。そしてこれからフライドポテト作りに挑戦してみたいと考えている人に向けて、ラップの曲に乗せてわかりやすく作り方を紹介した動画が話題になっている。
ラップの曲に乗せてフライドポテトの作り方を解説
自宅のキッチンで揚げ物用の油を扱ってフライを揚げるのはなかなかハードルが高いともいえるが、この動画で紹介されているのはオーブンを使ったフライドポテトの作り方で、オーブンさえあればわりと手軽に挑戦できそうだ。ラップの曲に乗せて手をよく洗うところからはじめて、小気味よくポテトがフライドポテトへと姿を変えていく様子が綴られていく。
作り方に関する説明もじゅうぶんで、ポテトの切り方から、焼き具合を色で判断するなど、調理のコツがラップの歌詞で過不足なく伝えられている。動画ではカットしたポテトをいったん水に浸けたり、流水で洗っているシーンもあるが、こうすることによってイモの中の余分なデンプンが溶け出てきて、焼いたあとにカリっと仕上がるということだ。このへんのことも初挑戦の者にはなかなか知り得ない料理の秘訣だろう。
外食でも家で作っても楽しめるフライドポテトは、世界中の多くの人々の間で食べて気分が良くなる“コンフォートフード”であると見なされており、子どもの頃を思い出す懐かしい味であるとともに、定期的に食べたくなってしまうフードメニューだといわれている。
マクドナルドが上陸して45年になる日本でも、決して少なくない人がフライドポテトの味に子どもの頃の思い出を重ね合わせることができるのではないだろうか。フライドポテトは実にグローバルな“懐かしの味”でもあったのだ。
■揚げ過ぎ、焼き過ぎには注意
外でも家でもフライドポテトを存分に楽しみたいものだが、ひとつ気をつけなければならない点がある。発がん性があるといわれているアクリルアミドだ。動物を使った実験で発がん性が確認されているアクリルアミドは、人間に対しても発がん作用があると考えられている。そしてこのアクリルアミドは、フライドポテトやポテトチップスにも含まれているのだ。
もちろんフライドポテトの食材であるジャガイモが身体に悪いわけはなく、厄介なのはジャガイモのような炭水化物を多く含む食材を高温で加熱調理した際にこのアクリルアミドが生成されてしまうことだ。このアクリルアミドが食品中にも含まれていることが分かったのは2000年代に入ってからのことで、これまでの食習慣を変えうる問題として多くの研究が行なわれてきた。
アクリルアミドが多く含まれる食品はフライドポテトやポテトチップスのほかにも、クッキー、せんべい、パン、かりんとう、コーヒー、ほうじ茶などに含まれるほか、高温で調理する野菜炒めや野菜天ぷらなどにも含まれる。調理の際の温度が高いほど、アクリルアミドが多く発生するということだ。
アメリカ食品医薬品局(FDA)がアクリルアミドを含む食品を扱う際のガイドラインを国民に向けて発表している。それによれば、アクリルアミドは平均的アメリカ人のカロリーベースの食品消費量の40%に含まれており、食生活から完全にアクリルアミドを排除することは不可能であり、排除する必要もないことが指摘されている。しかし、毎日の食事の上でアクリルアミドを減らす心がけには意味があり、がんの抑止のためにも有効であるとして指針を示した。その主なものが下記だ。
●揚げ物の冷凍食品などを調理する際、包装などに示された油の温度と調理時間を厳守し、過熱調理を避けること。
●トーストはほんのり明るい色の焼き加減に留めること。濃い色に焦げた部分にはアクリルアミドが多く含まれる。
●同じく冷凍食品のフライドポテトなどを調理する際も、表面が黄金色になる程度に留める。
●ジャガイモなどを冷蔵庫に保管するとアクリルアミドが増えるので入れないこと。ジャガイモなどは暗く乾燥した場所に置いておく。
フライドポテトや野菜天ぷらなどを揚げる際や、あるいはトーストを焼く場合などには、くれぐれも熱を加え過ぎないように留意したいものだ。
■オリーブオイルで揚げたフライドポテトは“健康食品”
アクリルアミドの話題は、ややもすれば揚げ物や天ぷらを敬遠するものにもなってしまうが、そんな懸念を吹き飛ばすような研究も発表されている。油に浸して揚げたフライドポテトには、老化を防止する働きのある抗酸化物質(antioxidant)がひじょうに多く含まれていることがわかったのだ。
「Prevention」の記事によれば油に浸して揚げたポテト、カボチャ、トマト、ナスに含まれる抗酸化物質は、炒めたり茹でたりするよりもかなり高くなるということである。特にエキストラバージンオリーブオイルなどの品質の高い油を使って揚げたときに抗酸化物質の含有量が顕著に増えるという。オリーブオイルに含まれる抗酸化物質であるフェノール類が揚げることでポテトに転移するためである。また油に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は揚げ物として摂取することで効率よく体内に吸収できる点も見逃せない。
高価なオリーブオイルを揚げ物用の油に使うのは、なかなか難しいともいえるが、高い品質のものほどフェノール類を多く含んでおり揚げ物を“健康食品化”する効果が高く、油自体も酸化しにくいために何度も繰り返して使うことができる。人数が多い家族や、揚げ物をわりと良く行なうのであれば、揚げ物油をオリーブオイルにしてみる選択肢も健康を考えればじゅうぶんにあり得るのではないだろうか。
ただ調理の際に気をつけたいのは油の温度で、摂氏170度前後の温度で揚げるのがベストであるということだ。摂氏200度を超えるとオリーブオイルの成分が損なわれてしまうため、油の温度にはじゅうぶんに気を配らなければならない。2014年に行なわれた研究では、摂氏160度のオリーブオイルで揚げた場合が最も抗酸化品質が高い状態になったということだ。
“栄養価の宝庫”ともいわれ、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル成分が豊富に含まれているジャガイモの理想的な調理法のひとつが、オリーブオイルを使ったフライドポテトということになる。油の温度にはじゅうぶん気を配って揚げ物を健康的に楽しみたい。
参考:「FDA」、「Medical Daily」、「Prevention」ほか
文=仲田しんじ
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