転職を考えているアメリカ人の最も多い転職理由は“退屈”だという驚きの調査結果がかつて話題になっている。職場にはびこる“退屈”が大きな問題になっているのだが、そもそも我々は生物学的に代わり映えのしない仕事に飽きるようにプログラムされているという。
■職場で退屈になるのは生物学的な理由がある
アメリカとイギリスのギャラップ調査によれば、勤労者の70%は仕事に対する熱意を失った状態で働き続けているという。これもまた職場での退屈が主たる要因である。
ロンドンビジネススクールの組織行動学教授で作家のダン・ケーブル氏によれば、我々に進化人類学的に備わっている探索システム(seeking system)が、同じ仕事を毎日続けることを困難にしているという。探索システムとは、周囲を探索し、新しいことを学び、意味を見出そうとする我々に備わった自然な欲求である。いわば好奇心と置き換えてもよいのだろう。
そしてこの探索システムが活発に働いている時、モチベーションが高まり、目的志向になり、熱意が沸いてくるという。いわば生きている実感が得られるのである。
しかしながらケーブル教授によれば、産業革命以降の労働環境においてこの探索システムが限りなく抑圧されて今日に到っているという。その一方で仕事はどんどん細分化されてつまらないものになっていったのだ。
だが逆に言えば、職場が退屈に感じられるということは、我々の探索システムはまだ死んではいないということだ。つまり退屈は「何か新しいことをしろ」という心のサインなのである。
そしてケーブル教授はこれからの時代は組織が従業員を常にクリエイティブで熱意を持った状態に保てなければ激しい競争に生き残ってはいけないことを指摘している。今までは抑圧してきた探索システムを作動させることがこれからの組織に求められているということだ。リーダーが従業員の探索システムを“起動”させるには神経科学の知見が有効であるという。
仕事と職場を退屈にさせないことは、単に離職率を下げるばかりではなく、今後のグローバルな市場競争の生き残りをかけた鍵でもあることが指摘されているのだ。もはや仕事に退屈している場合ではないのである。
■職場で退屈を感じたらすべき17のこと
今日の“生き馬の目を抜く”グローバルな市場競争において、まさに仕事に退屈している暇などないとも言えるのだが、そうは言っても基本的に毎日同じ場所で同じ人々に囲まれての作業に新鮮味が失われてくるのは致し方がない。そこでビジネス系ライターのレイチェル・プレマック氏が、仕事に少し退屈さを感じた時に試してみたい17つの行動を挙げている。
1.退屈にさせているものが何なのか突き止める
それが長い会議なのか、切りがない書類仕事なのか、仕事を退屈にさせているものが何であるのかを正確に特定することで解決策が見えてくる。特定する作業では気づいたことをひとつひとつ箇条書きにして書き記してみてもよい。
2.ランチ休憩をする
外食が前提で、同僚や友人と一緒にランチを摂ることで疲労感が緩和される。
3.少し散歩する
散歩をすることでヤル気が復活すると同時にリラックスし、また不安感を和らげることができる。
4.CEOとお茶をする
組織のカルチャーによりけりではあるが、社長やCEOとお茶をする機会を持ち仕事について質問することでモチベーションを取り戻すことができる。
5.作業日誌をつける
決して業務日報ではなく、個人的に職場で日記を書きとめる習慣を持つ。その日の気分などを箇条書きで書き留めておくことでモチベーションが維持されより効率的に仕事ができるようになる。
6.参加できる会合を調べてみる
業界のカンファレンスに参加することで仕事への熱意が保たれる。
7.新たなスキルを学ぶ
現状の仕事では要求されていないものの今後関係する可能性がある新たなスキルを学ぶ。
8.上司や同僚に何が手伝うことはないか聞いてみる
もちろん余力のあるときに限るが、人の仕事を手伝うことで気分がリフレッシュでき、しかも周囲を“味方”にすることができる。
9.社内のスポーツチームに参加する
社内のスポーツチームに加わることで普段は話さない人との出会いがもたらされ話し相手が増える。
10.ゴールを設定する
些細なことでも仕事上の中間目標を設定することでモチベーションが高められる。
11.旧友に連絡してみる
長らく会っていない旧友に連絡して話すことはきわめて貴重な時間であり息抜きにもなる。
12.音楽を聴く
10分程度の音楽鑑賞でも脳内にドーパミンやセロトニンが放出されて気分を高めてくれる。
13.掃除をする
デスク周りを片付けて整理整頓することで気分が落ち着き頭の中も整理されてくる。
14.同僚と雑談する
数分でも同僚と世間話などをすることで気分が晴れて仕事にもうひと頑張りできる。
15.新人と話してみる
仕事に気分が乗らないときは新人と話す良いチャンスでもある。仕事についてのことや社内の人物の紹介をすることで良い気晴らしになりモチベーションを回復できる。
16.まったく新しい週末の過ごし方を考えてみる
これまで考えたこともない実現可能な週末の過ごし方を考えてみる。具体的に計画を練るほどに楽しくなり、仕事を終わらせるモチベーションになる。
17.仕事を辞めてみる
究極の解決策が辞職だ。これは決して自暴自棄の選択ではない。今の仕事をこのまま続けていてもあまりハッピーにはなれないと深く認識した場合は離職するオプションも当然あり得る。
もちろんこれらの選択肢はどれも「参考意見」である。サッと眺めてみて興味を惹かれたものは自己責任を前提に試してみてもよいのではないだろうか。
参考:「Management Today」、「Business Insider」ほか
文=仲田しんじ
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