職場でポテチを食べるのは音ハラスメント!? 「最も仕事に支障をきたす音声」トップ11!

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 オフィスの生産性に影響を及ぼすものはいくつかあるが、その中で職場の雑音もまた仕事の成果を大きく左右するものであると、実際にオフィスで働くビジネスパーソンの多くが感じているのではないだろうか。

■「最も仕事に支障をきたす音声」のトップ11

 職場環境はまさにそれぞれの会社の“カラー”が色濃く反映されたものであり、働く側にとっても会社のカラーに合うかどうかはその後の会社生活を占うものになりそうだ。カラーが合わなければもちろん転職という選択肢もあり得るだろう。

 職場環境の快適さを測るうえで重要な要素のひとつが音だ。職場環境の“ノイズ”による生産性の低下が無視できない社会的損失になっているという。

 いわゆるライフ・ワーク・バランスの実現に向けて在宅勤務化の流れもあるが、実際はまだまだ多くの会社ではオープンスペースのオフィスにスタッフが一同に介して作業を行なっているのが実態だろう。イギリスの調査によれば、オフィスワーカーの7割が職場環境、特に周囲の音が仕事のパフォーマンスに大きく影響すると訴えているということだ。その中の3分の1のオフィスワーカーは、職場の“ノイズ”が耐えられなくなり、近くのカフェなどに“避難”して仕事をすることもあるという。職場として本末転倒の事態である。

 そして最近のアンケート調査によって明らかになったオフィスでの「最も仕事に支障をきたす音声」のトップ11が以下だ。

1.人の噂話などゴシップ話題の会話(42%)
2.大声の電話(33%)
3.咳、くしゃみ、鼻をすする音(計38%)
4.電話の呼び出し音(28%)
5.ポテトチップスなどのスナック菓子を食べる音(18%)
6.口笛の音(17%
7.リズミカルにデスクや床を叩く音(15%)
8.勢い良くドアを開け閉めする音(14%)
9.ラジオから流れる聴きたくない曲(14%)
10.近くの同僚のヘッドホンから漏れ聞こえる楽曲(14%)
11. 大きなタイピング音(12%)

 そもそも皆で一部屋で集まって仕事をするというのは、モチベーションを上げて効率よく連絡を取り合い生産効率を高めるためでもある。しかしこうしたノイズが逆に仕事への取り組みを阻害するものになるとすれば無視できないコストになるだろう。スタッフの間で音が問題になっているようであれば、オフィスレイアウトの見直しや、オフィス内での行為(食事など)に関するガイドラインの策定を検討してみてもよさそうだ。

■麺類の“すすり喰い”はユニーク過ぎる食文化か

 もちろん“音の問題”は職場以外でもあらゆる場所に及んでいるのはご存知の通りだが、日本人にとって盲点ともいえる“音の問題”が指摘されている。それはラーメンやソバをすすって食べる音だ。

 多くの日本人にとっては当たり前すぎる“すすり喰い”だが、欧米のテーブルマナーではあり得ないことであるのはもちろん、日本以外のほとんどの国や地域で、故意に音を鳴らして麺類を食べるという食文化はないといわれている。日本はこの点に関してきわめて特殊な食事作法(!?)を持っていると言えそうだ。

 この日本の“風習”を知らずに来日した外国人の中には、ラーメン店などで周囲の日本人が皆一様にズルズルと麺をすすっているのを見てショックを受ける人もいるということだ。そして最近になって、このすすり喰いの音は周囲への迷惑行為であるとしてヌードル・ハラスメント(Noodle Harassment)、略して“ヌーハラ”という言葉も出てきている。この言葉に何らかの政治的な意図がないことを願いたいものだが……。

 この指摘は、日本人の多くにとって思わぬ方向からの不意打ちという感じがするのではないだろうか。麺類のすすり喰いはあまりにも普通のことすぎて、音をたてていることすら我々に自覚できていないのかもしれない。また、そもそもどうして我々は音をたてて麺類を食べているのか、その理由ももはやよくわかっていないだろう。

 この件に関して「Business Insider」で興味深い記事があった。音をたてて料理を食べている時、食文化的には我々日本人は周囲に対して今「味覚を楽しんでいる」ことを表現しているということだ。音をたてて食べることは、作ってくれた人や提供者に対する礼儀だというのである。そしてまた実利の面ですすり喰いは、ラーメンなどの熱い汁物を食べる際に、口に入れる段階で麺を空気に多く触れさせて冷却する効果があるという。とはいっても、ザルソバなどの冷たい麺類も音をたてて食べることに違いはないのだが……。

■食べ物を咀嚼する音に怒りを覚える人々がいる

 音をたてる食べ方が食文化として残っているのも事実だが、総じて食事の際に必要のない音をたてるのはやはり下品に映るのではないだろうか。そして一部の人は、食べ物を咀嚼する際のクチャクチャと鳴る音に怒りを感じているのだという。

 ある特定の音に対して怒りや憎しみ、嫌悪などのネガティブな感情が引き起こされる症状をミソフォニア(Misophonia、音嫌悪症)と呼ぶ。2000年頃から医学的に発見されていたのだが、報告例がきわめて少なく生理学的なメカニズムもこれまでよくわかっていなかった。しかし先頃発表された研究で、このミソフォニアは精神疾患ではなく、危険に直面したときと同じ身体反応であることがわかったということだ。そしてミソフォニアの症状を持つ人の何割かは、他人が食べ物を咀嚼する時の音がガマンできないという。

 イギリス・ニューカッスル大学の研究チームは、20人の重篤なミソフォニアと22人の健常者にいくつかの音を聴かせて、身体の反応と脳の活動を調べている。音は3つのカテゴリに分けられ、Aは雨の音などの自然音のノイズ、Bは赤ちゃんの泣き声などのできれば聴きたくない音声、Cはこの20人のミソフォニアの人々がその症状を引き起こすノイズだ。これには食べ物を咀嚼する音も含まれている。

 ミソフォニアのグループも症状を持たないグループも、AとBの音に関しては同じ身体反応を見せた。そして症状を持たないグループがAとCが同じ反応だったのに対し、やはりミソフォニアの人々はBとCで同じ反応を見せたのだ。そしてCのノイズを聴かせた時のミソフォニアの人々の脳の活動を調べてみると、特に前部島皮質(AIC)の活動が活発になっていることがわかった。前部島皮質は周囲のどの音に注意を振り向けるかを決める役割があるといわれている。つまり、ミソフォニアの人々は不快な気分になる音をどういうわけかわざわざ選んで聴いていることになるのだ。そして今回の研究によってミソフォニアの治療法の開発が大きく前進するということだ。

 ミソフォニアの人が食べ物を咀嚼する音などの不快にさせるノイズを聴いたときの身体反応は、恐怖を感じた時の闘争・逃走反応(fight-or-flight response)と同じであることもわかった。食べ物を咀嚼するクチャクチャと響く下品な音が引き起こす感情は、怒りでもあり恐怖でもあるということになる。飲食店で食事をしている時に、ほかの客からいきなり決闘を挑まれれば戸惑うばかりだが、驚くことにまったくあり得ない話ではないということにもなる。不特定多数の人々の間でものを食べる時は、多少なりとも食べ方に気を配ったほうがいいかも!?

参考:「Real Business」、「Business Insider」、「New Scientist」ほか

文=仲田しんじ

コメント

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