空腹時に気をつけたい3つのこと

サイエンス

 コンビニやスーパーで食品を買う際にもしも空腹であったなら、うっかり買いすぎてしまうリスクがあることをよく自覚しなければならない。そしてなお厄介なことに、空腹の状態は食べ物に直接関係がない意思決定にも悪影響を及ぼすことが最近の研究で指摘されている。

■空腹は食べ物に関係のない意思決定にも悪影響を及ぼす

 満腹よりも空腹のほうが頭が冴えるイメージもあるかもしれないが、実際には空腹時の意思決定にはリスクが高まることが専門家から報告されている。

 英スコットランド・ダンディー大学の研究者であるベンジャミン・ビンセント氏が2019年9月に「Psychonomic Bulletin & Review」で発表した研究では、実験を通じて空腹時とそうでない時の意思決定に違いが生じるのかどうかを探っている。

 子どもを対象にその自制心を測定する“マシュマロ実験”は、目の前のマシュマロを今すぐ1個食べることができるが、もし15分間待つことができれば2個もらえるという条件を伝え、どちらかを選択させる課題だ。

 50人の成人が参加した実験ではこのマシュマロ実験の“大人版”として、金銭的報酬などについて意思決定を行う課題が行われた。課題は2回行われ、普段通りの食生活で特に空腹ではない時と、その日まだ何も食べていない空腹の状態で行われた。

 分析の結果、空腹時は食品に関してはもちろん、金銭的報酬などにおいても我慢強さが失われ、即効性を求める意思決定を行うことが突き止められた。例えば今、特定の金額の報酬を受け取ることができるが、受け取りを先に延ばせば倍の額が受け取れるという条件のもとで、空腹でない時は平均で35日間待つことに同意できたのだが、空腹時には平均で3日以上は待てないと回答している。

 ビンセント氏によれば、空腹は食べ物に関する人々の好みに影響を与えることが予測できるものの、食べ物とは完全に無関係な報酬のために人々がより即効性にこだわる理由はまだよくわかっていないと説明している。詳しいメカニズムはともかく、未来を左右する重要な決断をする場合、もし空腹であったならば小腹を満たしてから行ってみるべきなのかもしれない。

■空腹時の運動のメリットと注意点

 空腹時の意思決定には注意が必要であるのだが、空腹時の運動についてはわりとさまざまな見解があるようだ。空腹時の運動で代表的なのは、早朝に朝食を摂る前に行うジョギングやランニングだろう。

 しかしこの“朝飯前”の運動は、早起きしなくてはならないのはもちろん、眠い中でエネルギーも不足した状態で行わなければならず、なかなかタフな運動習慣になるかもしれない。

 空腹時の運動についてはいくつかの議論があるのだが、スポーツ栄養学者のアレクサンドラ・クック氏によれば、空腹時の運動にはいくつかのメリットがあることを指摘している。それはやはり減量効果だ。特に朝食前の運動は脂肪燃焼効果が高まるのである。さらに空腹時のトレーニングで筋持久力が向上するという科学的エビデンスもあるという。

 しかしながらスポーツ栄養学的には空腹時の運動は通常のトレーニングにはなり得ないという。そして空腹時の運動からメリットを得るには、次の2つの点に留意しなければならないということだ。

1.運動後には食事で炭水化物とタンパク質をしっかり摂ること
「空腹時の運動の後、高炭水化物と高タンパク質の食事でフォローアップすることは本当に重要です」とクック氏は話す。“空腹時トレーニング”後の運動の効果を高めるためには、普段よりも多くの栄養素が必要になるということだ。

2.“空腹時トレーニング”を行い過ぎないこと
 同じくクック氏によれば、“空腹時トレーニング”は週に2回以上行うべきではないという。また空腹時トレーニングでは低強度の運動にとどめるべきであるというとだ。高強度の運動、または高心拍数に達する運動ではやはり事前の栄養補給が必要なのである。

 減量には有効な“空腹時トレーニング”だが、決して常態化してしまわないように留意したいものだ。

■空腹時にはバナナを食べないほうがいい?

 カリウムやマグネシウムなどの栄養価に優れ、食物繊維も豊富なバナナは身近な“スーパーフード”だ。しかし意外なことに、バナナは空腹時に食べるべきではないという見解もある。その根拠は以下の3つだ。

1.バナナには天然の糖分が多いため、即時に身体のエネルギーレベルが高まるものの、数時間後には消耗を感じやすくなる可能性がある。

2.バナナはすぐに食欲を満たすものの、眠気や疲労感も後に残す。

3.バナナは本質的に酸性であり、空腹時に摂取すると腸へダメージを与える可能性がある。

 インドの著名な栄養学者であるアンジュ・スード氏によれば、起床後などの空腹時にいきなりバナナを食べるのではなく、ほかの食べ物と混ぜてバナナの酸性度を低下させてから食べるべきであると説明している。

 またバナナに豊富なマグネシウムは血液中のカルシウムとマグネシウムのバランスを崩し、心臓血管系に悪影響を及ぼす可能性があるということだ。

 またインドに伝わる伝統的医学であるアーユルヴェーダは、朝一番でフルーツを食べるべきではないと教えている。アーユルヴェーダの専門家であるBN・シンハ医師によれば、今日の人工栽培されたフルーツは我々が考えているよりも身体に悪い影響を及ぼす化学物質が含まれていることを指摘している。そしてやはりフルーツを単独で食べるのではなく、ほかの食品と混ぜたり組み合わせたりして食べることを推奨している。

 バナナの栄養価は朝食としてきわめて理想的なものではあるのだが、朝一番で食べるにはひと手間加えたり、食後のデザートとして食べたほうがよいのかもしれない。

参考:「Springer」、「Cosmopolitan」、「NDTV Food」ほか

文=仲田しんじ

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