究極の長寿地域“ブルーゾーン”に共通の長生きの秘訣とは?

サイエンス

 中高年ともなればいつまでも若々しくありたいという、広い意味でのアンチエイジングが意識されくるだろう。そこで最近の研究では新鮮な葉物野菜のサラダが脳のアンチエイジングにきわめて有効であることが指摘されている。なんと“脳年齢”をマイナス11歳にできるというのだ。

■新鮮な葉物野菜で脳のアンチエンジング

 加齢と共に徐々に認知機能が衰えていくのは自然現象であり止めることはできないが、心がけ次第では能力の低下を遅らせることができる。そしてを齢を重ねるほどにその心がけが大きな差を生み出す。

 米イリノイ州シカゴにあるラッシュ大学の研究チームが2017年12月に神経科学系臨床ジャーナル「Neurology」で発表した研究では、高齢者において新鮮な葉物野菜を摂取する食習慣が認知機能の低下を著しくスローダウンさせていることが指摘されている。

 調査は960人の高齢者(調査開始時の平均年齢81歳、認知症の症状無し)の食習慣と認知テストの成績を平均4.7年にわたって毎年追跡調査した大がかりなもので、新鮮な葉物野菜をメインにしたサラダの食習慣と認知機能との関係性が浮き彫りになったのである。

 研究では参加者を緑色葉野菜の摂取頻度に基づいて5つのグループに分けて認知テストの結果を比較分析した。

 分析の結果、全体の平均では認知機能の低下は年に0.08ポイントで進んでいることがわかったのだが、葉物野菜を最も多く食べるグループでは年に0.05ポイントの低下に抑えられていることが判明したのだ。このギャップは10年で“脳年齢”11歳分の差になるということだ。

「研究結果は葉物野菜を摂取すると脳の老化が遅くなることを完全には証明していませんが、少なくとも関連性があることを示しています。一方でまた、ほかの要素が関係している可能性も除外することはできません」とラッシュ大学のマーサ・クレア・モリス教授は語る。

 今後もまだ後続の研究が必要とされているようだが、新鮮な葉物野菜の食習慣で“脳年齢”に11歳もの差がつくとすれば一顧だにはできない話題ではないだろうか。また“脳に良い”こと以外にも、葉物野菜には健康上のさまざまなメリットがあるだろう。食生活における野菜の重要性を再確認してみたいものだ。

■トマトとリンゴを毎日食べて肺機能が改善

 世代的な背景から見ても中高年のビジネスパーソンの中には昔は喫煙者で現在は禁煙に成功しているという人も少なくないだろう。かつてヘビースモーカーだった時期がある人は、禁煙しても肺疾患のリスクは残るともいわれているが、こうした人々にとって希望の持てる話題が最近の研究から報告されている。トマトとリンゴで肺機能が改善するというのだ。

 ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究チームが2017年12月に循環器系医療ジャーナル「European Respiratory Journal」で発表した研究では、毎日新鮮なトマトとリンゴを食べることで、元喫煙者の肺機能が改善できる可能性が示唆されている。もちろん元喫煙者でなくともトマトとリンゴの食習慣は高齢期以降の肺機能の低下を遅らせるということだ。

 調査では650人の成人の肺機能(肺活量など)と食習慣について2002年から10年にわたる追跡調査を行なってデータが収集された。

 データを分析した結果、興味深いことに元喫煙者の食習慣と肺機能に特徴的な関係性が浮かび上がったのだ。肺機能は30代から僅かずつ機能低下していくと考えられているのだが、トマトと果物、特にリンゴを日常的に多く摂取している元喫煙者は、10年間で肺機能の機能低下が顕著に遅れていたのだ。つまりトマトとリンゴに含まれる栄養素が喫煙による肺へのダメージの修復に役立つ可能性が指摘されたのだ。加齢による肺機能の低下に抗っているということは改善しているということでもある。

「私たちの研究は、定期的に多くの果物を摂取することは、人々の年齢とともに肺機能の減衰を緩和するのに役立ち、喫煙によって引き起こされる損傷の修復を助けるものであることを示しています。またこの食習慣は、世界中で広まりつつある慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療を助けるものにもなり得ます」と研究論文主筆のヴァネッサ・ガルシア・ラーセン博士は語る。

 慢性閉塞性肺疾患は現在世界規模で増えている肺疾患で、より効果的な治療プログラムの開発が切実に求められている。そしてももちろん、元喫煙者にとっても希望の持てる明るい話題といえるだろう。

■“長寿の秘訣”9つのポイント

 沖縄、イタリア・サルディーニャ島、ギリシャ・イカリア島、米カリフォルニア・ロマリンダ、コスタリカ・ニコヤ半島など100歳以上の人々が多く暮らす地域は昨今“ブルーゾーン”と呼ばれ、これらの地に住む長寿の人々の暮らしぶりと生活習慣が大きな注目を集めている。

 長寿に関する研究を続けている作家、ダン・ベットナー氏は各地の“ブルーゾーン”を回って人々の生活を観察・分析して“長寿の秘訣”を突き止めている。そのポイントは9つあるということだ。

1.中程度~高強度の日常的な身体活動
 中程度以上の身体的運動が日課になっていること。これらの地域に住む人々は、1日の大部分を座って過ごす生活を知らない。

2.“生き甲斐”を持つ
 まさに日本語の“生き甲斐”を持つことが長寿に繋がる。毎朝目覚めることの理由が“生き甲斐”にあるのだ。

3.ストレスを避ける
 ストレスは高齢期の疾病に密接に関係している。ストレス緩和は日常生活のなかで“ホッと一息”つくことでもある。例えば、地中海地域では昼寝であったり、敬虔な宗教信徒であればお祈りをしたり、沖縄の女性の間ではお茶会などがある。

4.“腹八分”
 “腹八分”はもとを辿れば儒教の教えであるという。毎回の食事では決して満腹になるまでは食べず満腹度は8割で良しとする。

5.地場野菜が食事のメイン
 地元で収穫された野菜類を食事のメインにする。もちろん肉や魚、乳製品も摂取するが量は控える。

6.適量のお酒
 決して飲み過ぎてはいけないが適量のお酒は長寿に繋がることが各種の研究で報告されており、実際にお酒を嗜む長寿の人々が多い。

7.ソーシャルである
 地域のコミュニティ活動に参加し人の輪に入っていることも長寿の秘訣である。

8.宗教活動を続ける
 同じく宗教的な集まりにも参加し信仰心を持ち続けることも長寿に結びつく。

9.家族、親族との密接な関係
 家族、親族のメンバーと密接な関係が維持されていることも長寿の人々の特徴だ。

 以上、9つの“長寿の秘訣”だが、大まかに要約すれば2つになる。1つめは健康なライフスタイルを維持することで、2つめはソーシャルな結びつきを維持することだ。寿命は遺伝的要素に大きく左右されるものの、心がけ次第では最大限まで延ばせるものであるようだ。

参考:「Rush University」、「Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health」、「Science Alert」ほか

文=仲田しんじ

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