“神”はいないが“宇宙人”は存在する? SNS時代に知っておきたい独特の考え方をする人たち

サイコロジー

 高名な科学者の中でも宗教的な信仰に篤い人物は少なくない。物事を論理的に考えるサイエンティストとしての態度と信仰心に矛盾はないのだろうか? この問いに迫った研究が興味深い。

■なぜ科学者が宗教の敬虔な信者に成り得るのか?

 将来“神”の存在が科学的に証明される日が来るのかどうかはわからないが、おそらく多くの信者にとって神は信じるものであり、感じるものであるのだろう。

 とすれば信仰心の篤い人ほど“直感”をベースにした考えをする傾向が高そうにも思えてくる。しかし一方で科学者や組織のリーダーたちの中にも宗教の敬虔な信者である人物は少なくない。強い信仰を持つ人々の考え方は実際のところどうなっているのかを探る調査と実験が行なわれている。

 イギリス・コヴェントリー大学とオックスフォード大学の合同研究チームはスペインの有名な巡礼の地である「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」を訪れた巡礼者たちに協力してもらい、調査と実験を行なった。

 最初の調査では参加者に信仰心の強さや、巡礼に費やす日数などを報告してもらってから、どれくらい直感的意思決定を行なっているかを計測する認知テストを受けてもらった。

 続く実験では、参加者は脳の特定の箇所を弱電流で刺激できる機器を頭に装着して算数のパズル問題を解いた。電流は2種類流され、ひとつは直感的意思決定を高めるもので、もうひとつは認知を抑制して論理的思考を促すものである。

 各種のデータを分析した結果、超常現象を信じる信仰の強さと直感的意思決定には因果関係がないことがわかった。そして脳に電流を流しても、超常現象を信じる強さには影響を及ぼしていないことも判明した。つまり信仰心が強くても科学的な分析的思考ができることになる。

 この研究結果は、信仰心は人間にとって自然発生的なものではなく、社会文化的なものであることを示唆することになる。つまり信仰心は言語能力と同じように後から培われてきたものなのだ。逆に信仰心が強いからといって、それが理由で神の“御心”を直感的に汲み取る能力に優れるわけではないということにもなる。

 宗教的信念は原始的な直感からくるものではなく、文化に根ざしている可能性が高ということで、つまり信仰心は“持って生まれた”ものではないということになりそうだ。

■“神”はいないが“宇宙人”は存在する?

“神”の次には“宇宙人”はどうなのか? 宇宙人の存在を信じることは神の存在を信じる信仰心と同類のものなのか、それともまったく別のものなのか。アメリカ・ノースダコタ州立大学の研究チームがこの問いに挑んでいる。

 同大学の心理学者、クレイ・ラウトリッジ氏が中心となった研究チームは実験参加者に対して4つの調査を行なっている。

 最初の実験では、人生の意味を探し求める欲求が高い人ほど、宇宙人の存在を信じる傾向がわかった。そして2つめの実験では、自らを不可知論者(神が存在するかどうかは知り得ないという立場)あるいは無神論者であると定義してしている者はきわめて高い確率で宇宙人の存在を信じていることがわかった。

 3つめと4つめの実験では、その各要素の度合いを測る尺度を設定してそれぞれの要素の関係をさぐった。各尺度は、信仰心の度合い、人生に意味を見出している度合い、生活の充実度の度合い、宇宙人の存在を信じる度合いである。

 収集したデータを分析した結果、“宇宙人信者”は本人は伝統的宗教を否定していながらも実は宗教と同様の認知のメカニズムが機能していることが浮き彫りとなった。そして都合がよい(!?)のは、宗教への信仰は超自然現象が起り得ることを受け入れることになるが、宇宙人を信じることは必ずしもサイエンスの否定にはならない点である。

 人類が宇宙の中で唯一の知的生命体ではないという考えは、人類をより大きくより意味のある宇宙のドラマの一部であるように感じさせてくれるとラウトリッジ氏は解説している。

 伝統的な宗教への信仰心も宇宙人の実在を信じることも、人生の意味を追求する気持ちの現れであることが指摘されることになった。宇宙人の存在が実際に明らかになるまでは、一種の“エイリアン教”ということになるのかもしれない!?

■“陰謀論信者”は異なる視点で世界を見ている

 1963年のジョン・F・ケネディ大統領暗殺に関して、これまでオズワルド単独犯行に異を唱える仮説は“陰謀論”とされてきた。しかし最近になって同事件に関する多くの機密文書が公開され、驚くべきことにCIAが関係した何らかの“陰謀”があった可能性が濃厚になってきている。

 ケネディ暗殺については“陰謀論”が的外れではなかったことになりそうなのだが、それでも世に数ある“陰謀論”は一般の理解をかなり逸脱したものであると言われている。ではこうした“陰謀論”や“謀略説”を信じる人の思考はどうなっているのだろうか。

 オランダ・アムステルダム自由大学の研究チームは陰謀論などを数多く信じる人の思考には錯覚パターン認知(Illusory pattern perception)が働いていることを指摘している。錯覚パターン認知とは、ランダムに現れた物事や出来事に意味のあるパターンを見つけ出そうとする認知のあり方である。

 研究チームは264人の実験参加者に対して5つの実験を行なった結果、主に錯覚パターン認知によって陰謀論と超常現象が信じられていると結論づけている。“陰謀論信者”は多くの人々とは異なる視点で世界を見ているということだ。世界の見え方が違うのである。

 ひとつの実験では完全にランダムな結果となるコイントスの一連の結果が示されたのだが、陰謀論を信じる度合いが高い人々はそこに法則性を見出そうとする傾向が見られたということだ。

 周囲の物事や起った出来事に対して、何らかの関連性を探ろうとするのは脳の自然な働きなのだが、陰謀論を信奉する人々はこのメカニズムが過度に働き過ぎているということになる。したがって“陰謀論信者”は決して精神疾患系の症状ではなくメンタル面には何ら問題はないことになる。好奇心は文化的活動の原動力になるが、強すぎる好奇心にはこうした落とし穴があることを気に留めておいてもよいのだろう。

参考:「Nature」、「Springer」、「Wiley Online Library」ほか

文=仲田しんじ

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