真っ赤なルージュのメイクが濃い女性は性的に開放的なのか?

サイコロジー

 メイクをバッチリと決めた女性は基本的には魅力的に見えるだろう。そしてセックスにも開放的であるという印象を受けるかもしれない。しかしそれは男性側の「あわよくば……」という願望による間違った認識であることが最近の研究で指摘されている。

■メイクの濃い女性は性的に開放的なのか?

 お洒落でしっかりメイクをしている女性には思わず目が奪われるものだが、場合によってはあらぬ願望や妄想を引き起こすトリガーとなるのかもしれない。

 米・ゲティスバーグ大学をはじめとする合同研究チームが今年2月に学術ジャーナル「Personality and Individual Differences」で発表した研究では、女性の外見と見る側の印象のギャップを探っている。

 どれほどセックスに対して開放的なのか、つまり複数の相手と性的関係を持つか持たないかについて、その度合いは進化人類学的に言えば生涯を通じてあまり揺らぐことはないと考えられている。かいつまんで言えば“淫乱”なのか“貞淑”なのかは、一生変わることのない固有のパーソナリティーなのだ。しかしそれを外見で判断しようとしたときに人はしばしば判断を誤る。

 研究チームは182人の実験参加者に69人の白人女性の写真を見てもらい、それぞれの人物がどれほどセックスに開放的であるのかを示す性的開放性(sociosexual orientation)を評価してもらった。

 収集した回答データを分析したところ、男女いずれもメイクが濃い女性を魅力的で性的開放性が高いと評価する傾向が浮き彫りになった。真っ赤な口紅などに対するステレオタイプ的なイメージを反映したものと言えるのかもしれない。

 同時に研究チームは写真の69人の女性に対して性的開放性を測る調査も行なったのだが、メイクと性的開放性には何の関係性も見出すことができなかったのだ。メイクに費やす時間および金額と性的開放性には何の関係もなかったのである。

「人々は性的開放性を知らせるための手段としてメイクを使うものの、それは実は無効であることを我々の研究は示しています」(研究論文より)

 魅力的な女性を見た時、特に男性においてはその女性との交流の可能性をついつい考えてしまい、そのためには当該女性の性的開放性が高いほうがそのぶんチャンスが高まるということでこの“勝手な解釈”ができあがると説明できるようだ。頭の中で妄想を膨らませるのはもちろん自由だが、やはり人を外見で判断して早合点することがないようにしたいものだ。

■男は“女の気配”だけで頭が悪くなる

 このように魅力的な女性を見ると、とかく男性はいろんな妄想を膨らませてしまうのだが、そればかりでなく実際にかなり頭が悪くなっているというから始末が悪い。さらに女性の姿を実際に見なくとも、その気配や後で会えるという見込みだけでも男性の認知機能を大きく損ねているというのだ。

 2009年に発表されたオランダ・ラドバウド大学の研究では、男性は女性の姿を前にすると認知機能が低下することが突き止められている。目の前の女性が魅力的であるほどに、認知機能の低下は顕著になるのだ。興味深いことに女性は男性を前にしても認知機能の低下は比較的少なかった。

 男性は女性よりも異性を前にすると相手に良い印象を与えようとする印象マネジメント(impression management)がより強く働くという。これが脳のリソースを奪い、認知機能が低下すると考えられるということだ。なぜ男性のほうが印象マネジメントが強く働くのか? それは進化人類学的に男性のほうがより多くの異性との交流を求めているからであるという。

 この研究に続き、同大学の研究チームが2011年に発表した研究では、男性は現実の女性の姿を見なくとも、女性の“気配”だけで認知機能が低下することが報告されている。

 ひとつの実験では、参加者に認知機能を測るテストを受けてもらってから、今度はカメラの前で紙に記された多くの言葉を声に出して読み上げる課題に挑んでもらった。

 参加者にはそのカメラはライブ中継されおり、別室で見ている人物がいると説明された(実際にはいない)。そして参加者には見ている人物の名前(ラストネーム)のみが伝えられた。

 課題終了後、再び認知機能テストを受けてもらったのだが、読み上げ課題で女性名を告げられた男性参加者が最も最初のテストよりも成績が下がっていたのである。つまり女性の“気配”だけでも男性は脳機能のリソースを奪われるのだ。男性陣がいかに女性を意識し、よく見られたいと願っているのか、その“水面下の懸命な水かき”がよくわかる話題だろう。

■男性は“同性受けの”の良い女性を好む

 かようにも女性のことが気になる男性陣なのだが、最近の研究では男性は女性よりも同性受けの良い異性に魅かれていることが報告されていて興味深い。

 男性でも女性でも同性に好かれるタイプがいるが、女性の場合は同性に好かれるタイプであると男性からも好かれる可能性が高いようだ。

 キプロス・ニコシア大学、中国・復旦大学、イギリス・アベリストウィス大学の研究者からなる国際的な合同研究チームが2018年6月に発表した研究では、同性に好かれる女性が男性にどう見られているのかを探っている。

 研究チームは中国人男性949人、イギリス人男性305人(いずれも異性愛者)を調査して、男性は女性よりも同性にも魅力的な異性を好むことを突き止めた。中国人男性の3人に1人、イギリス人男性の3人に2人が同性受けの良い女性を好んでいることがわかったのだ。

 一方で女性のほうは同性受けする男性をそれほど好んではいないことがこれまでの研究で報告されている。男性のほうが女性よりも6.49倍、同性受けする異性を好むということである。同性受けが良い女性は男性にも好まれるが、同性受けする男性のほうはそれほど女性に好まれないということになる。ちなみにこの研究はあくまでも異性愛者限定のものであり、“同性受け”といっても同性愛的な文脈はカバーしていない。

 異性愛者の女性の同性受けは女性の性的魅力の正常なバリエーションであり、女性が恥を感じたり心配したりするようなアブノーマルなものではなく、同様に同性受けの良い女性を好む男性もまた正常な範囲内の好みの変化であり、異常と見なされるべきではないと研究チームは説明する。

 しかしながら同性受けする女性が男性に好まれるのは文化にも左右されるようで、前出のようにイギリスでは男性の3分の2が同性受けする女性を好んでいるの一方、キプロスではそれほど高くはなく、同じく前出の中国のように男性の3分1に留まる地域もある。

 それでも男性は女性に比べればはるかに多く同性受けする異性を好むようである。これはおそらく進化人類学的に男性はより多くの女性との接触を求めているので、同性の友人が多い女性を選べばチャンスも増えることを意識するしないに関わらず気づいているからだと説明できないこともない。とすれば“腹黒い”のはやはり男性のほうなのかもしれない!?

参考:「ScienceDirect」、「ScienceDirect」、「Scientific American」、「ScienceDirect」ほか

文=仲田しんじ

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