最近の研究ではニンニクの成分は抗生物質に耐性のある「スーパーバグ」に対抗できる力を秘めていることが突き止められている。抗生物質が効かない耐性菌のスーパーバグは世界中で問題になっているのだが、なんとガーリックという頼もしい伏兵の存在が明らかになったのだ。
■病原菌を蹴散らすニンニクのパワー
デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームが2017年8月に発表した研究では、ニンニクに含まれるアホエン (ajoene) が、主に病院内で発生する厄介な耐性菌、いわゆる“スーパーバグ”に対抗できる存在であることを指摘している。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は抗生物質に対する薬剤耐性を獲得した耐性菌でありきわめて危険な“スーパーバグ”である。
黄色ブドウ球菌そのものは非常にありふれた菌で、髪の毛や皮膚、鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく存在しており、健康な成人の30%が黄色ブドウ球菌のキャリアであるといわれている。しかしこの黄色ブドウ球菌が薬剤の使用が多い病院などで抗生物質に対する耐性を獲得するとMRSAという“スーパーバク”となり院内感染を引き起こす危険な耐性菌になる。
研究チームは黄色ブドウ球菌と緑膿菌が引き起こす感染症の治療に、ニンニクのアホエンが効果的であることを突き止めた。アホエンが菌そのものを攻撃するわけでないが、菌がほかの病原菌に接触することを阻み、増殖を抑制することができるということだ。したがってスーパーバグであったとしてもそれ以上症状を悪化させることなく“包囲網”を築き徐々に症状を改善できる可能性が拓けてきたのだ。
またこれまでの研究でも病原菌に対するさまざまなニンニクの効能が判明している。アホエンは細菌の“保護膜”として機能しているバイオフィルムにダメージを与えることができるので、ダイレクトに病原菌に抗生物質を効かせることが可能だ。感染症に負けないためにも普段よりも多めにニンニクを摂取してみてもよさそうだ。
■ニンニク臭を抑える最も効果的な対処法とは
積極的にニンニクを摂っていきたいものだが、無視できない最大の問題は食後のニオイだ。
ニオイの大元は硫黄の成分なのだが、ニンニクはなんと6種類のも硫黄含有化合物を放出するというから臭いのも当然である。そしていったんニンニクが消化器官に入ると、吸収された硫黄含有化合物が血液に乗ってカラダ中を駆けめぐり肺にも到達する。そして肺の内側から硫黄のニオイを撒き散らすのである。
つまりカラダの内側からニオイを発するようになるので、ガムを噛んだり歯を磨いたりマウスウォッシュをしても根本的な解決にはならないのが厄介な点だ。ニンニク臭の解消は原則的に“時が過ぎる”のを待つだけである。
しかしたとえ対処療法であっても、できる限りニンニク臭を抑える効果的な方法はないものだろうか。米・オハイオ大学の研究者がこの問題を少しばかり探っている。
実験参加者はスライスした3グラムのニンニクを25秒間噛んでから、いくつかのグループに分かれてそれぞれのニオイ対策を実行し、その後に口の中のニオイが計測された。ニオイ対策は下記の通りだ。
●生のリンゴを食べる。
●リンゴの生ジュースを飲む。
●熱を加えたリンゴを食べる。
●生のレタスを食べる。
●調理したレタスを食べる。
●生のミントを食べる。
●調理されたミントを食べる。
●緑茶を飲む。
●水を飲む。
計測の結果、この中で一番消臭効果が高かったのは生のミントを噛むことであった。その次に生リンゴと生レタスが同程度であった。しかしながらミントは調理してしまうとその効果はかなり下がるということだ。あくまでも生のままがいいのである。そしておおざっぱに言えば生の野菜と果物を食べること全般が、ニンニク臭対策として最善に近い方法ということになる。そしていかにも効果がありそうな緑茶は意外にもほとんど消臭効果がなかったという。
生野菜と果物には消臭効果のある酵素とフェノール類が多く含まれており、ニンニク臭に抗う働きをすると研究者は説明している。ニンニク料理には生野菜のサラダなどを多めに食べることでニオイが軽減できそうだ。外食時には役立つ話題だろう。
参考:「Scientific Reports」、「Wiley Online Library」ほか
文=仲田しんじ
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