男性は異性のみならず同性の胸も気になっていた!

サイコロジー

 異性の胸元が気になるという男性は少なくないかもしれない。しかし異性の胸のみならず、男性は同性の胸も厳しくチェックしているというから興味深い。

■男性は同性の胸も気になる!?

 不謹慎ではあるものの、女性の魅力的な胸元についつい視線が誘い込まれるという男性は、考えられているよりも多いのではないだろうか。そして最近の研究では男性は同性の胸もじっくりと見定めていることが指摘されている。

 ポルトガル・ミーニョ大学の研究チームが2019年6月に「Evolutionary Psychological Science」で発表した研究では、最新のアイトラッキングを活用して、男性と女性がどのような視線を他者の身体に投げかけているのかを検証している。

 実験に参加した82人の異性愛者の男女大学生は、さまざまな体型の男女の3Dモデルの魅力を評価した。すると他者の体型の評価基準は男性と女性で大きく異なっていることが浮き彫りになったのだ。

 男性は上半身が逆三角形でたくましい男性と、逆に上半身が華奢な女性の魅力を高く評価する傾向が見られた。一方で女性は、男女共にミドルサイズの上半身を持つ体型を高く評価していたのである。

 アイトラッキング技術で追跡した視線の動きを詳しく分析するとさらに興味深いことが分かった。男性は男性の肩から腰にかけてのライン、つまり逆三角形の角度についてきわめて注意深く眺めていることが判明したのだ。一方で女性が上半身を眺める視線に男女の違いはなかった。

 上半身は基本的に身体的“パワー”をあらわす指標になる。男性はサバイバルのために周囲の同性の肉体的潜在能力を正確に見極めておかねばならないことから、同性の胸をじっくり検分していることを研究チームは示唆している。研究はまだ初歩的なものであることを研究チームは認めているが、男性は女性の胸にも男性の胸にも視線を誘われているという意外な“胸フェチ”ぶりが明らかになっている。

■男性はどうして“くびれボディ”が好きなのか

 とはいっても、男性は胸にばかり目を奪われているわけではない。女性の細いウエストとボリュームのあるヒップが描くセクシーな曲線にも多くの男性は視線を誘われている。

 急カーブのボディ曲線は「低WHR(低ウエスト=ヒップ比)」と呼ばれるのだが、どうして男性は著しい曲線を描く低WHRに魅力を感じるのか。

 素朴な観点からは低WHRは若さ健康と子沢山の可能性を示すインディケーターであり、可能な限り自分の遺伝子を後世に残そうという本能が働く男性にとって生存戦略上、魅力的に見えるのだと説明されている。しかし実はこの件については専門家の間でも議論が続いているのだ。

 例えば魅力的な低WHRの女性はあくまでも少数派である。したがって低WHRの女性を好むのはある意味で“現実離れ”したファンタジーの疑いも持たれる。そして低WHRの女性の大部分は思春期を過ぎた頃の若い女性であり、大半は1度も妊娠出産の経験がないため、子沢山な女性であるかどうかのエビデンスは何もないのだ。

 そこでニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の進化生物学者であるジーン・ボヴェ博士は、これまでの女性の低WHRに関する研究をレビューして、低WHRが男性に好まれる理由をあらためて探った。

 あらゆる可能性を検討したボヴェ博士の目に留まったのは、女性のヒップの皮下脂肪の落ちにくさと、胎児の脳の発達の関係を指摘した研究であった。

 普段は燃焼しにくい女性のヒップの皮下脂肪なのだが、妊娠後期および授乳期にはこの部分の皮下脂肪が、新生児の脳の初期発達に重要な役割を果たす多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids)の主な供給源になることが示されているのだ。

 もちろん全体的にふくよかな女性のほうがヒップの皮下脂肪も多いとは思われるが、低WHRはそのヒップの脂肪が強調されるだけに余計に目を惹くのだとすれば確かにわかりやすい説明になるのかもしれない。男性の低WHR好みは、優秀な頭脳を持つ子どもを求めてのことであるとすれば興味深い。

■体型から予測される性格特性

 このように人々は見ていないようでいても実はかなり周囲の他者の体型をチェックしているのだが、それだけに体型からさまざまな印象を受けていることが最近の研究で報告されている。

 テキサス大学ダラス校の研究チームが2018年11月に「Psychological Science」で発表した研究では、実験を通じて人々は体型からどのような性格特性を予測しているのかを探っている。

 研究チームはまず、さまざまな体型の3Dモデルを男女70体ずつ作成した。実験に参加した76人の大学生にこれらの3Dモデルが見せられたのだが、1体につき2つの角度から眺め、表示された人格特性にそのモデルが適合するかどうかをジャッジしてもらった。表示された人格特性とはたとえば、熱心、外向的、支配的や、静か、控えめ、内気などである。これらは「ビックファイブ」と呼ばれる性格特性診断に基づいている。

 回答データを分析したところ、一般的にヘビーウェイトの体型は怠惰で不注意であるなど、よりネガティブな性格特性に関連していることが浮き彫りになった。一方で軽量のボディは自信家で、熱心であるなど、よりポジティブな特徴を持っていると印象づけらていたのだ。

 さらに古典的な女性(洋ナシ形体型)、および古典的な男性(幅広の肩など)の身体は、ケンカっ早い、外向的、短気などの“能動的”な性格特性に関連して認識されていた。

 一方、上半身が長方形の体型の男女は、信頼できる、恥ずかしがり屋、頼りになる、温かいなどの比較的“受動的”な性格特性に関連付けられていたのだ。ポジティブ、ネガティブという評価軸に能動的、受動的という評価軸も加わり、それぞれの体型の印象が微妙に変わってくることになる。

 体型から性格特性を推測する傾向は普遍的である可能性が高いと研究チームは主張しているが、そこには文化、民族性、さらには年齢による若干の違いがあることも指摘している。それが正しいのか否かはともかく、いずれにしても我々は考えられている以上に他者の体型から多くのことを判断していそうである。

参考:「Springer」、「Frontiers」、「Sage Journals」ほか

文=仲田しんじ

コメント

タイトルとURLをコピーしました