もちろんカップル関係に不貞は禁物だが、素朴な疑問として浮気をしていても隠し通せるものなのだろうか。一部の男性陣には残念なことかもしれないが(!?)、最新の研究では男性は不倫がバレやすく、女性は不倫を隠し通せやすいことが報告されている。
■人類は種として“浮気レーダー”の感度を磨いてきた
男らしい顔立ちの男性はいかにも不倫をしやすいと思われていることが最近の研究で報告されている。一方で、女らしくて魅力的な女性は不倫をしそうには思われていないというから男性陣には納得がいかないかもしれない。
豪・西オーストラリア大学の研究チームが2019年4月に「Royal Society Open Science」で発表した研究では実験を通じて、人物の見た目の評価と不誠実さの関係を探っている。1500人以上が参加した実験では、参加者はそれぞれ189人の写真の人物の、魅力、男らしさ、女らしさ、そして不誠実さを評価してもらった。
収集した回答データを分析したところ、男性の男らしさと不誠実さに有意の関係があることが突き止められた。つまり男らしい男性は男性からも女性からも不倫をしやすい人物に見られていることになる。
その一方、魅力的で女らしい女性と不誠実さの間には何の関係も見られなかった。魅力的でフェミニンな女性はモテるのかもしれないが特に不倫に走る人物には見られていないのである。裏を返せばもしこうした女性が不倫をしていても、その外見からは気づかれにくいということにもなる。
もちろんこれは人々が受ける印象の問題であり、男らしい表情の男性が実際に不倫をしやすいのかどうかはケースバイケースだ。
浮気に限らず、資源の分配などに関しても事前に不誠実な人物を特定できればコミュニティにとって有益である。研究チームは人類は種として不誠実な人物を見定める能力を培ってきたのかどうかを探る目的で今回の研究を行なったのだが、その結果は我々は種として“浮気レーダー”の感度を磨いてきたことが示されるものになった。そしてこの“浮気レーダー”は実に男性陣には不利(!?)に仕上がっているようだ。
■SNS依存に不倫リスク
不倫をする理由については性欲説や承認欲求説、遺伝子説など、これまでの研究でも多岐に及んでいるが、また新たな“容疑者”が浮上している。それはSNSだ。
米・サンノゼ州立大学のイルム・サイード・アッバシ氏が2018年8月に「Social Science Computer Review」で発表した研究では、止むに止まれずにSNSを利用するユーザーはロマンティックな関係を危険に晒すリスクがあることを報告している。
アッバシ氏は578人のパートナーのサンプルを2つのグループに分けた。Aグループには強い絆で結ばれた本物のカップル330組で、Bグループはカジュアルにデートを楽しむ友人関係のカップル248組である。
これらのカップルに対して関係へのコミットメント度、関係からの解放度、SNS依存度、不貞の度合い、SNS上の潜在的なパートナーに対する認識をそれぞれ調査した。
カップルを分析した結果、関係の満足度、SNS上での不倫関連行動、および購読しているSNSアカウントの総数に、AとBの間に大きな違いは報告されていないものの、BグループはAグループよりもはるかに多くの潜在的な性的関係を結ぶ候補者がいることを報告しているという。つまりBグループは現在のパートナー以外にも“補欠メンバー”が多いということになる。
しかしながらAグループのような本当のパートナーとして見込まれる候補者の数は、AとBの間にそれほどの違いはなかった。つまり本気で付き合えると思える相手の数はどちらも少ないのである。
この研究は、たとえユーザーが本物のカップル関係にあったとしても、SNS依存度が高ければSNSの友人たちはカップル関係に対して潜在的な脅威となり得ることを示すものになった。ロマンティックな関係を結べそうなユーザーがSNS上にいることで、カップルの間の絆はいとも簡単に緩くなってしまうことは広く共有されなければならないだろう。
■自覚が薄れる“ミニ浮気”の危険性は不倫に匹敵
浮気をするつもりはなくとも、気づけば浮気をしてしまっているケースもある。それは“ミニ浮気”とでも訳せるかもしれないマイクロ・チーティング(micro-cheating)である。そして侮るなかれこのミニ浮気は実のところ本当の不倫に匹敵する危険をはらんでいるという。
「ミニ浮気は不倫であるとは定義されない一連のちょっとした行為のことです」と心理学者であるバーバラ・グリーンバーグ医師は説明する。
カップル関係の外で特定の人物と頻繁に接触することは、ミニ浮気と見なされる可能性があるという。ミニ浮気をする者は、単に友人と会っているだけであるとして自分を正当化するかもしれないのだが、しかしグリーンバーグ医師はそれが実際には非常に親密な接触であると指摘している。
「友情とミニ浮気の違いは、友情の場合は通常は秘密にされないということです。特定の人物との付き合いを秘密にしているとき、それはミニ浮気の定義を満たしはじめます」(バーバラ・グリーンバーグ医師)
ミニ浮気の例としてSNS上でパートナーのことはあまり話さずに交流を重ねたり、魅力的なウェイトレスやウェイターに故意に多めのチップを弾んだりすることなどが挙げられる。
ミニ浮気の動機はいくつかあり、“安全な興奮”を楽しみたいという欲求や、カップル関係の“マンネリ化”、そしてまだ自分が他の人々から魅力的に見えるのかをテストする意味で行なわれることもあるという。
罪悪感が少ないだけにうっかりはまってしまいそうなミニ浮気だが、その自覚のなさがより危険をはらんでいる。自分がミニ浮気をしていることに気づいた時には、関係が進展する前になるべく早い段階で対処することが重要であるとグリーンバーグ医師は念を押している。パートナーがいるのにも関わらず、気になる人物ができてしまった場合、ミニ浮気に繋がらないように留意したいものだ。
参考:「The Royal Society」、「SAGE Journals」、「CBS New York」ほか
文=仲田しんじ
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