男らしくてブ○○クな顔が最も有能に見える?

サイコロジー

 初対面の人との交流において第一印象が果たす役割はきわめて重要だが、“男らしい顔”はいろんな意味で有利であることが最近の研究から報告されている。

■男らしくてブサイクな顔が最も有能に見える

“リーダー”の人物像にどんなイメージを持っているだろうか。この件について一般的に我々にはきわめて根深い偏見があるようだ。リーダーとして相応しいのは“男らしい顔”の人物だというのである。

 米・プリンストン大学の研究チームが2018年12月に「Association for Psychological Science」で発表した研究では、実験を通じて外見からくる第一印象が人物評価にどのような影響を及ぼしているのかを探っている。

 250人がオンラインで参加した実験では、参加者はバリエーション多彩な男女の人物写真を見せられ、その外見だけから人物を評価する課題を行なった。

 いわゆる“男らしい顔”は代表的な男性ホルモンであるテストステロンの働きによるものであるといわれている。その具体的な特徴は逞しいアゴ、出っ張った額、薄い唇、幅広い鼻である。

 オンライン参加者から収集した回答データを分析したところ、男性においてこうした“男らしい顔”の特徴を多く持つ顔の人物ほど有能であると評価される顕著な傾向が明らかになった。“男らしい顔”に加えて、魅力的ではない顔のほうがさらに有能に評価されることも判明した。つまり男らしくてブサイクな顔が最も有能に見えるということになる。

 この実験結果から、外見の第一印象では概して男性のほうが有能に見られ、しかも男らしく無骨な顔のほうがさらに高い評価になることが示唆されることになった。

 日本社会では特に女性リーダーが少ないことが指摘されているのだが、我々のイメージの中の“リーダー像”には根深い偏見があることが、女性の社会進出を阻む“ガラスの天井”ということになるのかもしれない。

■スキンヘッド男性は“女性受け”が良い

“男性ホルモン”に関連してもうひとつ挙げられるビジュアル的特徴は薄毛だろう。薄毛でヘアスタイルに悩むくらいならばと、潔く(!?)スキンヘッドにする選択も当然あり得るが、実際のところ女性は男性のスキンへッドに対してどんな印象を持っているのだろうか。意外というか、当然というべきなのか、スキンへッドの“女性受け”は案外良いことがかつての研究から報告されている。

 米・ペンシルベニア大学のアルバート・E・マンズ氏が2012年に「Social Psychological and Personality Science」で発表した研究では、スキンヘッド男性は豊かな頭髪の男性よりも成功者でリーダーシップがあると見られていることが報告されている。特に女性はスキンヘッドの男性を逞しいパワフルな存在として見る傾向があるということだ。つまり一般的にスキンヘッド男性は“女性受け”が良いのである。

 実験では59人の参加者に一連の男性の写真を見せてその見た目だけで人物を評価してもらったのだが、概してスキンヘッド男性のほうが、頭髪が豊かな男性よりもリーダーシップが高いと評価された。

 次に写真の画像を加工し、同一人物の頭髪があるバージョンとスキンヘッドのバージョンの2つを見せて同じく人物評価をしてもらったのだが、スキンヘッドのバージョンのほうがやはりリーダーシップが高いと評価され、加えて同一人物でありながら身長も高く腕力が強いと受け止められいることも判明した。

 また別の研究でもスキンヘッド男性に対する好印象が報告されている。ドイツ・ザールラント大学の研究チームがかつて発表した研究では、スキンヘッド男性はより年長に見られ、特に女性からより知的で賢い人物として見られていることが報告されている。

 注意したいのはこれらの研究結果はあくまでも完全なスキンヘッド男性に対する評価であり、頭の一部だけを剃っていたり髪がまばらのヘアスタイルには適用されない。そうしたヘアスタイルはむしろ弱々しい人物に見えて魅力も低下するということだ。したがって薄毛になった場合は潔くスキンヘッドにしてしまうのが、サイエンス的には正解と言えそうだ。

■“低音の魅力”のアンビバレンツ

 ビジュアルにあらわれない“男らしさ”ということであれば男性らしい低い声だろう。低い声もまた“男性ホルモン”であるテストステロンが関係しているといわれている。体臭も男らしさを体現するが、ニオイに関してはフレグランスを用いるなど意図的に変えることがいくらでもできる。

 人間の外見というビジュアル情報に負けず劣らず、我々はその人物の声からも実に多くの情報を受け取っている。例えばある特定の人物の話し声だけで、性別、身体の大きさ、フィジカルの強さ、性的成熟度、などをすぐに判断できるといわれている。

 加えてそれが特に異性の声であった場合、声によってその人物の魅力、生殖能力、そして“浮気度”も判別しているというから興味深い。特に女性にとって、魅力的な低い声の男性の声は聞き惚れてしまうからこそ、浮気する可能性が高いという疑念を抱かされてしまうというのだ。

 これまでの研究では、パートナー選びにおいて女性は男性の低い声を、健康でサバイバル能力に優れた子ども(特に男子)を出産できる指標にしていることが報告されている。

 しかし皮肉なのはそうであるからこそ、女性は魅力的な低い声の男性について疑い深くなり、浮気する可能性が高く感じられ信頼できなくなるということだ。男性の低い声を魅力的に感じるものの、同時に警戒心も働いてしまうのである。そして実際、現在進行形で浮気をしているパートナーを、その声からかなりの程度で検知できるというのだ。

 2017年6月に米・オルブライトカレッジとペンシルベニア州立大学ハリスバーグ校の合同研究チームが「Evolutionary Psychology」で発表した研究では、実験参加者に浮気をしている者としていない者の声を聞かせて、その人物がどの程度浮気をする(している)可能性が高いかを評価してもらった。

 結果はある意味で感動的(!?)なもので、我々の多くは浮気をした経験のある人物の声を疑わしく感じ、浮気をする可能性が高いとジャッジしていたのである。そしてこの“検知能力”は女性のほうが高かった。

 また2014年のイギリスとチェコの合同研究では、男性は魅力的な女性に話す際には声が低くなり、男女共に魅力的な女性と話す時には話し方がダイナミックになることが報告されている。

 男性の魅力的な低音ボイスだが、女性にとっては思わず聞き惚れてしまうがゆえに、感覚が敏感になり警戒を緩められなくなるのかもしれない。“低音の魅力”もいいことばかりではないようだ。

参考:「APS」、「SAGE Journals」、「NLM」ほか

文=仲田しんじ

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