海に行きたくなるのはワケがあった! 水辺のレジャーがカラダに良い科学的理由

サイエンス

 夏の行楽としては定番の中の定番が海水浴だが、人間には海に行きたくなるはっきりした理由があるという。

■海に行きたくなる7つのワケ

 すべての生物は海から生まれたといわれるように、人間にとって海へ行くことは母なるものへの回帰願望かもしれない。そして実際に我々の身体は、天気の良い日には海辺に行きたがっているのだという。なんとその理由は7つもあるのだ。

●日光はビタミンDの偉大な供給源
 薄着(あるいは水着)になれる海辺で太陽の光を浴びることで、身体に必要なビタミンDが活発に生成される。

 もちろんビタミンDは食物やサプリメントで摂取してもよいが、米・ハーバードメディカルスクールによれば、人体にとって最も自然で大きな割合を占めるビタミンDの供給元は日光であるという見解が示されている。1日の必要量の80~90%のビタミンDは太陽光を浴びることで生成しているということだ。しかし長時間の日光浴は肌にダメージを与えるので、直接日光に肌を晒すのは10~15分ほどにし、あとは日焼け止めなどをうまく活用したい。

●ビーチの砂は自然な角質除去剤
 サラサラした砂浜を裸足で歩きたくなるのにはワケがあった。足の裏の余分な角質を取り除くのにきわめて効果的だったのだ。また東洋医学的には足裏のツボが刺激されて体調が整えられ、さらに水虫などの予防にも繋がるだろう。

●リウマチの改善
 アラビア半島北西部に位置する極端に塩分濃度が高い湖である「死海」に浸かることで、リウマチ性関節炎の症状が改善されることが1990年の研究で報告されている。死海ほどの濃度はないにせよ、ミネラル豊富な海水に浸かることでリウマチの改善、治療が進むと考えられている。

●太陽光がうつ気分を払拭する
 オーストラリアの心臓疾患研究機関の報告によれば、浴びている太陽光の量が気分に影響を与えているということだ。日光を浴びることで神経伝達物質・セロトニンの分泌量が増え、心身の落ち着きや心の安らぎなどがもたらされるのだ。

●海水が肌の弾力性を保つ
 海水はアンチエイジング効果を持つミネラルの宝庫といえる。海水に浸かることで肌をみずみずしく弾力のあるコンディションに保つことができる。お風呂に海水塩を入れて入浴しても同じ効果が期待できる。

●海辺では活発に行動できる
 海辺にくると人は自然に動きが活発になるということだ。海風や寄せては返す波もまた人をアクティブにする要因のひとつかもしれない。砂浜での運動は硬い地面での運動よりも、1.6~2.5倍多い運動量になる。さらに足腰への負担は少なく、怪我をする危険も低いので、ビーチバレーのように思い切った動きができるのもビーチで行なう運動の醍醐味だろう。

●日常から離れることでストレスを低減する
 広大な海原を前にすれば暫し日常から離れることができる。そして人間関係から少しの間切り離されたこの状態こそがストレスを低減するのだ。

 また、英・エクセター大学の研究によれば、沿岸で生活している人々は、他のエリアの人々よりもストレスが低く健康的であることが指摘されている。恵まれた海辺の環境は心身の健康に大きな影響を及ぼしているのだ。特に具体的な目的はなくとも、休日に海へ行くのは“身体が喜ぶ”レジャーだといえそうだ。

■サーフィンはクリエイティビティを高める

 訪れるだけで心身に有益な海辺の環境だが、海のアクティビティを存分に楽しめるのが夏のビーチだ。そしてビーチを代表するスポーツといえばやはりサーフィンだろう。

道具といい肉体面の準備といいすぐにはじめるには敷居が高いサーフィンだが、最近になって興味深い研究が報告されている。サーフィンはクリエイティビティを高めてくれるというのだ。

 もちろん、適度な運動全般で気分の高揚とクリエイティビティの増進は見込まれる。米・スタンフォード大学の研究では、90%の人々が運動後に創造性が向上しているということだ。歴史上の優れた作家や芸術家、ミュージシャンの生活を見ても水泳やウォーキングなど日常的に運動を楽しんでいる人物は多い。

 ではなぜ、運動の中でもサーフィンが特に注目されているのか。それは自然の海を舞台にして行なうスポーツだからだ。海洋生物学者のウォレス・J・ニコルズ氏によれば、サーフィン中に目にする海面と空だけの単色の視界と、常に揺れ動く波のうねりが精神を瞑想状態に誘うということだ。これが脳の“スイッチ”を切り替え、想像力や洞察力を豊かにし新たなアイディアを育むのに適した精神状態へと導いてくれるのだ。

 心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏によって提唱された“フロー”という精神状態がある。フローとは、現在直面している物事に積極的に集中しのめり込んでいる状態で、まさに時を忘れ、我を忘れて没頭している状態のことだが、サーフィンはまさにこのフローに人を誘うということだ。

 チクセントミハイ氏はこのフローはアスリートのみならず、アーティスト、ミュージシャンといった人々にもベストな仕事に繋がる集中力とエネルギーをもたらすものと定義している。そしてもちろんビジネスパーソンにとってもこのフロー状態は思いがけないアイディアを生み出す“打ち出の小槌”になるだろう。時間があるときには海辺や水辺の環境に身を浸し、暫し時を忘れてみるのもよさそうだ。

■釣りが健康に及ぼす5つの効能

 準備はそれなりに必要だが、体力面ではサーフィンよりもハードルが低いといえる水辺のアクティビティが釣りだ。この釣りもまた健康に実に有益であるという。釣りがもたらす実にシンプルな効能は以下の通りだ。

●運動になる
 ずっとボートに乗っている釣り(加えて日本ではヘラブナ釣りやワカサギ釣り)以外は、一日中歩き回りサオを振る釣りはとても良い運動になる。特にフライフィッシングとルアーフィッシングは効果的な有酸素運動にもなる。減量に結びつくほどではないが、循環器系の健康に大きく貢献する。

●足腰に負担をかけない
 ジョギングなどのスポーツに比べて、足腰に負担をかけないのが釣りだ。もちろん自然の釣り場のポイントに辿り着くまではそれなりのハイキングが必要になるケースもあるが、それでも無理な動きをすることは少ないため身体に負担をかけずにアウトドアのアクティビティを楽しむことができる。

●リラックス効果
 自然に囲まれて魚を釣ることだけに集中することで、精神の落ち着き、平静を得てリラックスすることができる。そしてもちろん、水面を眺めることで瞑想効果が得られたり、太陽光を浴びてビタミンDの生成も促進される。

●器用さの向上
 巧みにサオ(とリール)を操ることが要求される釣りは、本質的に器用さが求められるアクティビティだ。釣り場で細い糸を結んだりする細かい作業も要求される。さらに繊細なアタリをとる釣りでは、常に感覚をシャープに保つことが求められるため、齢を重ねても運動技能の低下を抑えることができる。普段の日常生活では使わない筋肉を使うこともまた身体にとって良い刺激になる。

●楽しい!
 なによりも楽しいひと時を過ごすことが心身の健康に大きく寄与する。今日の高度情報化社会で刻々と変化に晒されるなかにあって気分は乱されがちになっているが、単純に海や川や湖に出かけて釣りを楽しむことは大いなる癒しの時間になる。

 天候の急変などが発端となる“水の事故”にはじゅうぶん留意し、決して強行軍などせずに安全に水辺のアクティビティを楽しみたいものだ。

参考:「Huffington Post」、「The Inertia」ほか

文=仲田しんじ

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