毎日でも乗りたいサイクリング習慣の7つのメリット

サイエンス

 気軽にはじめられる運動としても、またツーリングの移動手段としても人気のサイクリングだが、運動習慣としてサイクリングに取り組みたいと考えるならば、耳に挟んでおくべき話題が最近の研究から報告されている。軽いギア&高回転で自転車を走らせてもあまり良い運動にはならないというのである。

■アマチュアの高ケイデンス走法に運動効果なし?

 優れたプロのサイクリストは当然ではあるがペダルを漕ぐ回転数(ケイデンス)がきわめて多い。それなりのトルクのあるギアを使って1分間に100を越えるようなケイデンスで回し、加えてその状態を長く続けるからこそ速いタイムで走れるのであり、そこには何の秘密もないといえる。

 趣味の自転車乗りの多くもまた、ギアこそ軽いものの高ケイデンスで走ることを好む者が多いといわれている。しかし運動目的で自転車に乗る場合、高ケイデンス走法は有効なのだろうか? キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームがこの問題に取り組んでいる。

 9人のボランティアが参加した実験では、ジム用のバイクマシンに乗って漕ぐ参加者の、ペダルを踏む力、心肺反応、代謝反応、大腿筋への酸素供給度を近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy)を用いてモニターした。

 収集したデータを分析したところ、高ケイデンスでは心拍数が15%増加する一方でぺダルにかかる力が減少し、大腿筋への酸素供給度も減ることが示されることになった。つまりあまり大腿筋の運動になっていないのである。

「毎分90回以上のケイデンスはプロのサイクリストには大きなアドバンテージがありますが、趣味のサイクリストには有効ではありません」と研究チームのフェデリコ・フォルメンティ博士は語る。

 低い運動強度でサイクリングする場合、骨格筋への酸素供給はケイデンスの影響をほとんど受けないという。つまり軽いギアで速くペダルを回す運動では筋力トレーニングの効果がほとんどないことになる。

 単なる移動手段として自転車に乗るならばともかく、多少なりとも運動の一環として乗る場合は心持ち重いギアで漕いだほうが良いようだ。

■減量効果と時間効率に優れるインターバルトレーニング

 自転車で運動不足を解消したいのなら、重めのギアで乗ることが推奨されているのだが、アスリートではない身にとっては辛く感じることもあるだろう。もっとハードルが低くて効果的な運動法がないものだろうか。

 そこで話題にのぼってくるのが激しい動きと楽な運動を交互に繰り返すインターバルトレーニングである。つまりずっと重いギヤで漕ぐのではなく、疲れてきたら軽いギアの時間帯も挟みつつ自転車を走らせるのだ。そしてこのインターバルトレーニングは、減量にきわめて効果的であることが最近の研究で報告されている。

 ブラジル・ゴイアス連邦大学をはじめとする合同研究チームが2019年2月に「British Journal of Sports Medicine」で発表した研究では、これまでに発表された77もの研究をメタ分析することで、インターバルトレーニングが減量に果たす効果を探っている。

 インターバルトレーニングであれ、通常のトレーニングであれいずれも体脂肪を減らす効果があるのだが、減量効果ではインターバルトレーニングのほうが28.5%も優れていることが突き止められたのだ。

 この結果はまた、減量が目的の運動の運動時間を短縮できることにも繋がる。忙しくて運動をする時間がなかなかとれないという向きでも、効果的なインターバルトレーニングを行なうことで運動時間を3割ほど短縮できるのだ。運動時間を短縮できればそのぶん続けやすくもなり、運動習慣に好循環が生まれるきっかけにもなる。

「インターバルトレーニングは、強度が中程度の継続的トレーニングと同様の効果がありながらも、より少ない時間で行なえる可能性があることから、太り気味や肥満に対処するための魅力的な代替手段です」と研究チームは説明している。時間を有効活用する意味でも、インターバルトレーニングを取り入れてみてもよさそうだ。

■サイクリング習慣の7つのメリット

 いろいろと留意すべき点はあるものの、自転車に乗る運動習慣が身体によくないわけがない。健康&フィットネスライターのセレーネ・イェーガー氏がサイクリング習慣の7つのメリットを解説している。

●運動以上の体験になる
 自転車を好きで乗っているとすれば運動以上の体験をもたらす。一説では運動習慣を持つことを決意した者の80%は1年以内に諦めているというが、自転車が趣味になれば自ずから運動が続けられることになる。

●インターバルトレーニングがしやすい
 前出の話題にも通じるが、自転車はインターバルトレーニングがやりやすい。もちろん交通量の少ない道を選ばなければならないものの、10~20秒の全力の足漕ぎから20~40秒の楽な足漕ぎの組み合わせを8セット繰り返すことできわめて有効なインターバルトレーニングになる。

●仲間と一緒に走れる
 ジムなどでの運動は基本的に単独行動になるが、自転車では仲間と一緒にツーリングをしたりするなど、ソーシャルな交流にも活用できる。楽しみながら運動習慣を保つことができるのだ。

●関節に負担をかけない
 陸上で行なう運動としてはサイクリングは腰やヒザなどの関節にあまり負担をかけない。関節に懸念を持つ向きでも臆することなく運動が続けられる。

●インドアでもできる
 ジムのバイクマシンなどを活用すればインドアでも良い運動になる。最近はアプリで走行を管理できるインドア用バイクマシンも登場しているので購入を考えてみてもよいのだろう。

●1日中乗っていられる
 休日などには自転車仲間と一緒に雑談を楽しみながら1日中乗っていられるのも、自転車好きならではの醍醐味だろう。

●生活に溶け込んでいる
 移動の手段でもある自転車を活用することで日常の中で無理なく運動ができる。通勤に使うことができれば、仕事が終った後の行動半径が格段に広がる。 

 事故やケガにはくれぐれも気をつけたいものだが、自転車習慣にある数々のメリットを存分に享受してみてもよいのだろう。

参考:「King’s College London」、「NML」、「Bicycling」ほか

文=仲田しんじ

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