過度な日焼けには気をつけなければならないが、日光に当たらない生活には健康リスクが伴う。最近の研究で日光の少ない場所での生活に強迫性障害のリスクがあることが報告されている。
■睡眠パターンの乱れで強迫性障害が悪化
不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまうのが強迫性障害(obsessive compulsive disorder)だ。この強迫性障害が北欧など緯度の高い地域で多くなることが最近の研究で指摘されている。緯度が高地域ほど日照時間が短くなくなるが、この日照の少なさが睡眠サイクルに乱れを生じやすくさせ強迫性障害に繋がるという。
米・ビンガムトン大学の研究チームが2018年6月に「Journal of Obsessive-Compulsive and Related Disorders」で発表した研究では、地域の日照時間と強迫性障害の発症率についての関係を探っている。
強迫性障害の患者の多くは夜になかなか寝付けず、それが原因で朝に起きられないことを訴えているという。こうして睡眠サイクルがズレ込むことで認知機能の低下と頻繁なネガティブシンキングをもたらし、ひいては強迫性障害をさらに悪化させるということだ。
そして研究チームがこれまでの強迫性障害に関する研究を分析したところ、日照時間が少ない緯度の高い地域に住む人々により多く睡眠サイクルの乱れが認められることも浮き彫りになった。したがって日照時間と強迫性障害の間に強い関係があることが示されることになったのだ。
「睡眠パターンの乱れは日光に当たる時間の減少にも繋がります。そして生物としての生活リズムと、1日の時間的サイクルとの間にズレを生み出します。日照の少ない地域に住む人は、実際の時刻と“体内時計”を同期させる機会が少なくなり、強迫性障害の発症が増える可能性があります」と研究チームのメレディス・コールズ氏は語る。心身の健康のためにも、朝日を浴びることの重要性が痛感させられる話題だろう。
■窓越しの太陽光ではビタミンDは生成できない?
日光、特に朝日を浴びることの重要性が指摘されているが、日光浴のもうひとつの重要な効能はビタミンDの生成である。
仕事に忙しくて日中はなかなか仕事場から出られないという勤務スタイルの人もいるだろう。新しいオフィスでは窓が大きくデザインされた設計の部屋も少なくないと思うが、オフィスの窓越しに浴びる日光でビタミンDは生産できるのだろうか? これについて専門家のルイス・ヴィリャソン氏が解説している。
紫外線は波長の長さによりUVA、UVB、UVCに分けられ、このうちのUVAとUVBが地表に届いている。電車や車の窓など、最近は“UVカット”のガラスも広く普及しているが、オフィスや住宅の普通の窓ガラスはUVBの97%、UVAの37%を“カット”しているという。
普通の窓ガラスはSPF30の日焼け止めと同等の紫外線吸収効果があり、その意味ではオフィスの窓越しにであれ日光を長時間浴び続けていれば日焼けすることになる。
一方、車や電車のUVカットガラスはSPE80相当の日焼け止めと同じ効果があり、一日中窓越しに日光を浴びてもまず日焼けすることはない。
そしてビタミンDについてだが、人体はUVBを浴びた時にビタミンDを生成するようにできている。したがって残念ながら普通の窓であれUVカットのウインドウであれ、窓越しに浴びた日光からはビタミンDの恩恵に預かることはできない。健康のためにはやはり短時間でも直接太陽光を浴びなければならないことになる。仕事で“カンヅメ”になってしまう日でも日中に屋外に出て陽の光を浴びる時間を確保したいものだ。
参考:「Binghamton University」、「The Sun」ほか
文=仲田しんじ
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