成功する起業家の特性と諦めなければならないこと

ライフハック

 仕事の現場がかつてない変化にさらされている中、独立・起業を考えるビジネスパーソンも少なくなさそうだ。成功する起業家に共通する特性があるのだろうか。

■成功する起業家の6つの特性

 各業界での慢性的な人手不足の一方、今年はいわゆる「働き方改革」が施行されることから、働く現場はかつてない大きな変化の波に晒されている。変化は逆風にもなればチャンスにもなることから、今年は独立や起業を考える向きも少なくないかもしれない。

 フィリピンのフランチャイズコンサルティング会社「GMB Franchise Developers」の創業者で社長のアルマンド・バルトロメ氏が、成功する起業家の6つの特性を解説している。

●信念を持つ
 すべての起業家は、事業を成し遂げることができるという強い信念を持つ必要がある。もちろん事業を開始するには、経済的、感情的、そして肉体的な備えが必要だ。

 設定した目標に心と身体をコミットさせたならば、夢を追求することに多くの時間を捧げなければならない。

●持続可能性を追求
 偉大な起業家は市場を調査し、どの製品やサービスに需要があるのかを常にチェックしている。

 商品には流行があり、流行り廃りは悪いことではないが、良い起業家は最終的には廃れていく特定の製品に集中することよりも別のことをする。

 一時の流行ではなく、人々が本当に必要としているものが何であるかを考えてみたい。例えば食品関係は持続可能な事業の一例である。

●スキルの向上
 成功した起業家は彼らの顧客に優れた製品とサービスを提供し続けることができるように常にスキルと能力を磨いている。

 同じモノやサービスを提供している多くの企業があるが、市場に浸透するためには、世間の注目を集めるためのいくつかの優れた戦略が必要である。

 ほかにはない“違い”を顧客に強く訴え、提供するものはすべて顧客が対価を払う価値があるものにしなければならない。

●辛抱強さ
 良い起業家は忍耐強い。ビジネスにおいて一晩で成功を収めるということはなく、成功の裏には積みあげた長年の経験がある。

●チームワークを重視
 良い起業家はチームの忠実なメンバーを深く思いやる。ビジネスの成功は経営者の手腕だけではない。会社が1人の人間だけでは運営できないことを理解するべきだ。素晴らしいチームワークがポジティブな結果に繋がるのは確実である。

●顧客に感謝を示す
 成功した起業家は忠実な顧客に感謝し、彼らの忠誠心を維持するためにいくつかの特典を用意している。

 顧客は常に消費活動で特別な気分を味わいたいものである。顧客との関係を長く続けるためにたとえばポイントカードのシステムなどを提供することは、顧客の継続的なサポートに感謝の意を示すための一つの方法である。

 ビジネスの成功とは、最悪の場合でもできる限り最高の状態でいることができるきわめて忍耐強い起業家が実らせた果実である。独立、起業というとややもすれば目の前にあるチャンスを軽いフットワークでつかんで商機に繋げるイメージもあるが、実のところは腰をすえてじっくりと辛抱強く取り組むことでより大きな実を結ぶということだ。

■起業家が諦めなければならない5つのこと

 独立にせよ起業にせよ、それまでの被雇用者の立場から経営者、運営者の側へと180度立場がガラリと変わることになる。そして私生活を含めて日々の生活に質的な変化が訪れることはいうまでもない。起業家でアドバイザーのドット・ベルビール氏が起業家になるならば諦めなければならない5つのことを解説している。

●心の平安
 事業を運営するということは無限の世界へと飛び込むことである。休日を設定して物理的に仕事から離れていても、頭の中ではいくらでも仕事のことを考えることができてしまう。また休むことで放棄した収益もリアルに実感できてしまうのだ。

 働き続けて身体を壊せば本末転倒になってしまうが、残念ながら起業家の立場になった以上は、あまり多くの心の安らぎを期待することはできない。

 しかしながら物事がうまく進んでいる時など、折に触れて心の安らぎと幸せを見出すことがあり、そうした瞬間こそが起業家冥利に尽きるのだろう。

●安定と安全
 大企業の社員や公務員として働けばかなり先の将来まで見通せることにはなるが、独立起業にはもちろん何の保証もない。また病気や不測の事態への備えもすべて自己責任となる。

 もちろん大きな組織で働くことにも楽しさはあるが、往々にして家族や老後の保障など別の優先事項のために組織で働き続けている実態も少なくないだろう。そしてもちろん、起業独立を目指す者は安定と安全を引き換えに、自由な経済活動を選んだことになる。したがって、起業家には基本的に財政面でも感情面でも安定と安全は保障されていない。

 しかし逆説的に言うならば、安定と安全が保障されていないからこそ日々切磋琢磨し成長を促すモチベーションが得られる。背水の陣であるからこそ発揮できる潜在能力もありそうだ。

●本物のバケーション
 1年に1度、仕事のことはすべて忘れる2週間の休暇を取ることができれば、心身の健康と人生の満足度にきわめて好ましい影響を及ぼすだろう。

 しかし独立起業の道を選ぶと、ひとまずこうした“本物の休暇”は望むべくもなくなる。もちろん経営者も相応の休暇を取るべきだが、経営の責任者である限り休暇中もその責を逃れることはできない。

 これはどの程度、ビジネスパートナーや従業員を信頼して仕事を任せられるのかという問題にもなるのだが、それはなかなか結論が出ない難しい問題でもある。しかしながらこうした“避けられない事実”をいったん受け入れると、むしろ束の間の休暇がもっと貴重に感じられて楽しくなるのも起業家の醍醐味かもしれない。

●堅実なキャリア形成
 ネットの普及によって、アイディア勝負のクラウドファンディングによるスタートアップのハードルがかつてないほど下ってきている。

 クラウドファンディングでのスタートアップが首尾よくすべてうまくいったとしても、それはあくまでも単発のプロジェクトである。プロジェクトが終了する前に次のアイディアを仕込んでおかねばならないのだが、もちろんその次のプロジェクトが成功するという保障は何もない。組織で働く者と違って、起業家は堅実なキャリア形成はできないのだ。

 そこで起業家は時には投資をする側にまわることもじゅうぶん検討に値する処世術になる。

●戻れる場所
 クラウドファンディングなどの期間限定のプロジェクトに携わった後は、成功失敗の如何を問わず、再び被雇用者として安定した生活を送る選択も当然あり得る。場合によっては元の職場に戻ることもあるだろう。

 しかし一度独立起業を体験した者は、真の意味で“戻れる場所”はなくなる。もちろんそれでも“戻る”を選択を選ぶ場合もあるのだろうが、特にプロジェクトで成功体験を得た場合は忘れられない経験としてその後の仕事人生に影響を及ぼし続けるだろう。

 そして誰もが安定や堅実なキャリアパスを必要としているわけではなく、不確実性の中でチャンスをつかみ繁栄する人もいることをよく理解してその後の身の振りを考えてみたい。

■夜型人間は良い起業家になれる

“早起きは三文の徳”というように、ビジネスの世界でも早起きが推奨されている風潮がある。実際に成功した起業家や大企業のCEOなどの多くは朝型の生活スタイルを維持して、時間を無駄にすることなく精力的にビジネスに取り組んでいる。

 その一方で、始業は昼近くにまで遅れてその後は夜遅くまで仕事をしている夜型人間は何かとネガティブなイメージを抱かれやすい。しかし本当に夜型はビジネスに不向きなのだろうか? 話はそう単純でもないらしい。

 2009年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究チームから発表された研究では、夜型人間のほうが総じて高IQであることが報告されている。進化人類学的に夜型人間は“進化的新奇性(evolutionarily novel)”を獲得した進化した存在であり、変化に適応する能力に優れているということだ。

 またベルギー・リエージュ大学の研究チームが2009年に発表した研究では、夜型人間のほうが朝型人間よりも1日の中で脳活動が活発な時間が長いことを指摘している。夜型人間は始動は遅いが、いったんエンジンがかかれば朝型人間よりも遠くまで走れるのである。

 だからといって夜型人間がビジネスの世界で成功するとは限らないのだが、被雇用者でいるよりはスケジュールの調整が効くと思われる起業家は、場合によっては夜型人間に適しているケースもありそうだ。

 究極的には朝型であれ夜型であれ、重要な業務をそれぞれのエネルギーレベルが最も高い時間帯に取り組むことが求められていて、夜型人間は夜型なりの働き方があるということになる。

 また新しさが求めらる新事業の立ち上げにおいて、朝型人間よりも夜型人間のほうが従来の枠にとらわれない斬新な発想やビジネスチャンスを見出しやすいかもしれない。業種や業態を選ぶ限りにおいて独立起業に関して夜型人間が不利になることはないどころが、場合によっては有利に働くこともあるようだ。

参考:「ABS-CBN News」、「The Startup」、「ScienceDirect」、「Science」ほか

文=仲田しんじ

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