平静を装っていても“顔の疲れ”は隠せなかった!

サイエンス

 気分を新たにしたい時に有効なのがヘアスタイルなどの見た目の“イメチェン”ではないだろうか。最新の研究では明るい髪色の女性はおおむね好印象を受けていることが指摘されている。

■明るい髪色の女性はおおむね好印象

 ヘアケア製品のグローバル市場規模は800億ドル(約9兆円)にも達しているといわれ、頭髪に関することは世界中の人々の身近な関心事のひとつになっている。

 ドイツ・アウクスブルク大学と米・ノースダコタ州立大学の合同研究チームが2017年11月に社会心理学系学術ジャーナル「The Journal of Social Psychology」で発表した研究ではどのような女性のヘアスタイルが男性に好印象を与えているのかを探る実験を報告している。

 研究チームは米・テキサスA&M大学の男子大学生110人にCGで合成したさまざまな髪型の一連の白人女性のポートレート写真を見せて、その女性の年齢、健康状態、外見的魅力、子育ての能力について評価してもらった。写真の女性のヘアスタイルのバリエーションもさまざまで、髪色はブロンド、ブラウン、黒でそれぞれショート、セミロング、ロングのパターンがあった。

 回答データを分析した結果、明るい髪色の女性はおおむね好印象を持たれている傾向が浮き彫りになった。ブロンドなど髪の色が明るいと、より若く、より健康的で、より外見的魅力に優れると評価する者が多かったのだ。そしてこれらの要素はもちろん、性的魅力や接触の誘発(ナンパされやすさ)に繋がるものでもある。

 髪の長さの観点から見た場合、髪色にかかわらずロングヘアはより若く見え、より接触を誘発するものになるが一方で子育て能力は比較的低く見られているという。

 データを分析して“組み合わせの妙”も発見された。黒髪のロングヘアは外見的魅力がかなり高く評価されているのだが、黒髪のセミロングになるとガクンと魅力の評価が下がるという。面白いことにこれとは逆にブロンドのセミロングはかなり魅力的で健康的であると評価されるのだが、ブロンドのロングになるとそれほど魅力の評価は高くないということだ。

 外見の評価においては単独の要素と同じかそれ以上に“組み合わせ”が重要であることが示唆されることにもなったのだが、きわめてザックリとした傾向として明るい髪の女性が高い評価を受けている。

 今回の実験で使われた写真は白人女性のみで、実験に参加した男子大学生もほぼ白人であることから、実験は最初から制約を伴うものになっているが、気分を一新するための“イメチェン”には参考になるのかもしれない。

■“強そうな”男性はやっぱりモテる?

 では女性の目から見た男性の魅力的な要素はどこだろうか。最新の研究では現代の女性の好みは、意外なことにまるで古代に遡ったかのように肉体的に“強い”男性であることが指摘されている。具体的にな肩幅のある筋肉質な上半身である。

 オーストラリア・グリフィス大学の研究チームが2017年12月にイギリス・王立協会のオープンアクセス学術誌「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」で発表した研究によれば、今日の高度に技術が発達した社会にあっても女性は上半身がガッチリした“強そうな”男性を好んでいることを報告している。

 実験では男性の全身を写した一連の写真を150人の女性たちに見せて、写真の男性がどれほど魅力的であるかを評価してもらった。そして身体的な強さと身体の魅力の関係を探った。

 収集した回答を分析した結果、身体がどのように強く見えるか、身長がどれくらいか、どれくらい引き締まった筋肉質な身体であるかという3つの要素から、男性の身体がどのように魅力的かをほぼ完全に予測できることが判明した。この傾向は実に顕著で、“弱さ”を示す要素のある男性を好ましいと評価した女性は150人中1人もいなかったのだ。

 もちろん厳密には個々の主観的な判断にはなるが、肉体的に“強そう”に見えることが最優先の要素で、次いで高身長と引き締まった筋肉質の上半身が続くということだ。見るからに強そうなボディであることは男性の魅力の70%を占めるという。

 体型で示されるであろう男性の健康状態や持久力のある攻撃行動、狩猟能力、戦闘能力に女性は反応している可能性があると研究チームは説明している。

 テクノロジーがめざましい進歩を遂げた今日の社会にあって、身体的な強さの必要性はますます低くなっているともいえるのだが、意外にも女性は男性の身体に“強さ”を求めていることが示唆されることになった。SNSの普及など今日急速に進んでいるネットワーク社会の中、ひょっとすると力強い肉体の魅力と重要性がむしろ“復活”しているのかもしれない。

■睡眠不足や疲労が“顔に出る”と敬遠される

 多くにとって“強そう”なボディは一朝一夕には手に入れられないものだが、見た目の魅力のためにはぜひとも心がけたいことがある。それはじゅうぶんな睡眠だ。

 目の下のクマや腫れぼったいまぶたをした人物にはできればあまり関わりあいたくないだろう。スウェーデン・ストックホルム大学の研究チームが2017年に「Royal Society Open Science」で発表した研究では、睡眠不足の人物の印象を探った実験が報告されている。

 研究チームは25人の大学生男女を有給で実験に参加してもらい、じゅうぶんな睡眠を2日連続でとった時点の顔と、2日連続で4時間睡眠だった時点の顔をそれぞれ撮影した。そしてこの計50枚の写真を、ストックホルム市内在住の任意の122人に見せてその人物の外見的魅力、健康状態、眠さ、信用度を評価してもらった。加えて「この写真の人物と社会的交流を結びたいと思いますか?」と質問した。

 回答を分析した結果、多くの人は敏感に写真の人物の疲労や睡眠不足に気づいていることが浮き彫りになった。つまり2日連続で4時間睡眠だった人物の魅力は明確に低い評価であったのだ。そして寝不足の人物とはソーシャルな交流を望まないという回答が多かった。研究チームによれば、この調査結果は進化人類学的な帰結であるという。

 睡眠不足のためかどうかにかかわらず、不健康な顔を見ると病気を回避するメカニズムが活性化する可能性を研究チームは指摘している。言い換えれば進化人類学的にたいていの者は病気である可能性のある人物には近づこうとせず、逆に活気に満ちているように見える人物に多くの魅力を感じるのである。

 睡眠不足や疲労は“顔に出る”ものであり、それを我々はきわめて敏感に気づくことができるのだ。ソーシャルな交流や出会いの機会を失わないためには、しっかりとした睡眠をとり疲労回復を心がけることが肝要のようである。

参考:「Taylor & Francis Online」、「NCBI」、「NCBI」ほか

文=仲田しんじ

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