仕事帰りにスーパーやコンビニに寄るという向きは多いだろうが、睡眠不足が続いていてどうにも眠いという場合の買い物は自粛したほうがよいかもしれない。眠い時、人は買い物のバリエーションが豊富になってしまうというのだ。
■眠い時の買い物はバリエーションを求める
とりあえず黒のボールペンが1本欲しいのだが、売り場で商品を見ているとこの機会だからと赤も買う気になったり、デザインが気になるほかのペンにも手が伸びたりしたことはないだろうか。
こうした“ついで買い”をしてくれる客は店にとっては有難い存在だが、このような上客には眠い時ほどなりやすいことが最近の研究で報告されている。睡眠不足を感じていると目的の品の別のバリエーションにもつい手が伸びてしまうというのである。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学や香港大学をはじめとする国際的な合同研究チームが2019年1月に「Journal of Marketing Research」で発表した研究では、夏時間などによる睡眠不足が消費行動に及ぼす影響を探っている。
研究チームは睡眠不足の人々と、そうでない人々(コントロールグループ)に対して4つの実験を行なったところ、睡眠不足の人々が商品にバリエーションを求めることが浮き彫りになった。これは実店舗での買い物において“ついで買い”が起きやすくなることが示唆されるものになる。
例えば実験参加者は駄菓子屋を想定したキャンディ売り場の前で好きなキャンディを4つ選んで取るように指示されたのだが、睡眠不足の参加者は種類が異なるキャンディを1個ずつ選ぶ顕著な傾向が見られたのである。
どうして眠いとバリエーションを求めるようになるのか、なかなか不可解な現象ではあるが、研究チームは眠気を解消したいという気持ちが、商品選びにおいて幅広い選択肢を検討する行為に向かわせるのではないかと説明している。いろいろな商品を検討することで眠気を紛らわしているとも言えるのかもしれない。どうにも眠たい時には店などには寄らずに真っ直ぐに帰宅して早々に布団を被るのがよさそうだ。
■普段の買い物を“賢く”する4つの助言
睡眠不足の時は極力買い物は控えたほうよいことが指摘されているのだが、ほかにもショッピングの際にいくつか気をつけてみたいことがあるようだ。
●基本的なフードアイテムはじゅうぶんに備蓄しておく
前提として米、小麦粉、乾麺、冷凍食品、レトルト食品、各種調味料など保存の利く基本的な食品は普段から常に多めに備蓄しておく。こうすることで食糧に関してある意味で〝心の余裕”が生まれ日頃の買い物での無駄遣いが減るのだ。こうしたアイテムはネット通販などでも安く購入できるだろう。
また生卵の賞味期限はけっこう長いので、買い物が少ない時などは鶏卵を多めに買ってストックしておいてもよいだろう。
●店が混まない時間帯に買い物をする
買い物で最もストレスに感じるもののひとつが店内の混雑だろう。混み合う時間帯に買い物をしなければならないのは、仕事を持つ大方の生活リズムの上からも仕方のないことではある。
それでも、混まない時間帯に買い物をする機会をまったく作れないということもないだろう。仕事の休み時間に空いているスーパーに行ってみれば意外な発見があるかもしれない。
●週代わりのチラシや割引セールなどを常にチェックする
食料品スーパーの賢い消費者は常に毎週のチラシをチェックしている。新聞を取らない世帯も増えたが、店舗に行けばチラシを入手できるケースも多い。複数の店舗のチラシを入手して比較することで、常に“最安値”の買い物が可能になるのだ。
●今晩のディナーを事前に決める
スーパーの店内に入る前に、直近の献立を決めるべきである。メニューを決めることで無駄な買い物が減り、買い物の時間も節約できる。
ただでさえ買い物は体力を消耗させることが多いだけに、日常生活の中ではできるだけ手短に済ませたいものだ。外食やデリバリー、テイクアウトの選択肢を含めればさらに事前のプランが重要になるだろう。
もちろん時間のある時に娯楽や気晴らしを兼ねてショッピングを楽しむ場合もあるのだろうが、普段の買い物ではお金も時間も無駄にはしたくないものだ。
■規格外農作物の宅配サービスに高い関心
無駄な買い物をしないことは、実は当人だけの問題ではない。必要な物しか買わず、食品の廃棄を最小限に抑えることで環境保護と食品流通の効率化にも繋がる。
環境保護の観点から食品流通を見直すことで生まれた新しいサービスがアメリカで注目されているようだ。それは“規格外”の野菜や果物をデリバリーする食品宅配サービスである。
ご存知のようにスーパーに並ぶ農作物は一定のサイズと形で揃えられている。理由は単純で一定の規格から外れるものは値段がつけられず“売り物”にならないからである。
しかしそうして弾かれた農作物もほとんどのケースで品質や味は変わらない。この規格外農作物に目をつけた米サンフランシスコのベンチャー「Imperfect Produce」は、農家からこうした規格外の農作物を安く買い取り、オンラインで定期購入者を募って配達するサービスを2015年からはじめている。
購入者の玄関先に届けられる規格外の農作物がランダムに入った箱はサイズが選べ、配達頻度も設定できる。あまり買い物に時間を割けない忙しいビジネスマンや専門職の人々に人気で、現在もサービス地域を拡大している。
この新たなサービスは東部のペンシルベニア州フィラデルフィアでも大なわれていて、2018年10月に規格外農作物の宅配サービスを開始した「Misfits Market」は、最初の5ヵ月で顧客が10倍にも増えたということだ。同社によれば顧客は利便性だけでなく、食品廃棄問題に対する関心が高いことを指摘している。
残念ながら日本もまた“食品廃棄大国”の1国であるだけに、こうした新たな試みに関心を持つべきなのだろう。
参考:「SAGE Journals」、「Adoww」、「The BL」ほか
文=仲田しんじ
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