子煩悩な夫はセックスレスに!? カップル間のセックスを科学する

サイエンス

 子どもを授かるや、当人も驚くほど“子煩悩”になってしまう世の父親がいるが、母親にとっては実に助かる存在だろう。しかしこうした子煩悩の夫には“夜の営み”ほうでは不満が募るかもしれないというから興味深い(!?)。

■赤ちゃんが欲しいと望む男性ほど性欲が低い!?

 女性の性欲は単なる生理学的な反応ではなく、さまざまな文化的な文脈や心理学的な要素が混ぜ合わさった複雑なものであることが最近の研究で指摘されているのだが、その一方で男性の性欲についてはこれまで通り刺激に対する生理学的反応で説明されることが多かった。しかし最近の研究では、男性の性欲もまた実はかなり複雑なメカニズムで引き起こされていることが報告されている。

 イタリア・サピエンツァ大学の研究チームは、298人のイタリア人男性の性欲についての詳細な調査を行なった。

 分析の結果、セックスにおいて喜びを感じて楽しむことに慣れていない実態が浮き彫りになった。我々はオーガズムに達することが主目的になり急ぎ過ぎているというのである。

 また性欲が低い男性は従来のイメージよりも多数存在し、特に性的な不安とエロチックな妄想の欠如は、性欲の低さを如実に示すものであることが示唆されることになった。また驚くことに子どもが欲しいという欲望が皮肉にも性的欲望とネガティブな関係にあることもわかったのだ。つまり赤ちゃんが欲しいと強く望んでおり、実際に子煩悩な男性ほど性欲が低いのである。

 この現象を科学的に説明することはまだできないが、研究チームは子どもを授かり親としての責任が増すことで、無意識に不安や恐怖を感じている可能性があることを指摘している。とすれば子煩悩は父親な本人は充実感を感じていても、実は無意識に不安を感じているのかもしれない。そしてこの不安が性欲を減退させているのだ。

 研究チームは不安によって性欲が低下するのは、オーガズムと射精を主目的にした従来のセックス観が強い影響を及ぼしていると主張している。そして不本意な性欲の低下を招かないためにも、性行為をもっとゆっくりリラックスして行い、行為の内容についてももっと多様性のあるものにしなければならないと提案している。つまりオーガズムや射精がない“セックス”もじゅうぶんあり得るということだ。

 確かに“夜の営み”が重荷に感じられてくれば性欲も減退するだろう。男性が「頑張らなくてもいい」性行為への理解と普及が求められているのかもしれない。

■カップル間の性欲についての男女の違い

 一緒に歳を重ねていくほどカップルの“夜の営み”が減ってくるのは、体力面などを考慮すれば自然なことだろう。しかしそこには男女の間で違いがあることが2017年の調査で明らかになっている。

 2017年9月にオンラインジャーナル「BMJ Open」で発表されたイギリスの研究では、過去1年に1人以上のパートナー関係を持つ16歳から74歳のイギリス人1万1700人(男性5000人、女性6700人)を調査することで、カップル間の性的な興味関心がどのように推移していくのかを探った。

 ある意味で自然なことではあるが、カップルの関係が長くなるほど男性も女性も徐々にパートナー間の性的欲望が低下していく傾向が広くみられた。しかしこの様相は男女で違ってくることも明らかになったのだ。

 同棲カップルにおいて過去1年に3ヵ月以上、相手に性的関心を抱かなかった(つまり相手に性欲を覚えなかった)割合は男性の15%、女性にいたっては34%もあることが判明した。同棲カップルにおいては女性のほうが2倍以上、セックスの興味を失う可能性が高いことになる。

 こうした性欲の低下は、男女でその発生時期が違ってくることもまた浮き彫りになった。男性の場合は35~45歳でこの性欲低下が訪れるのだが、一方で女性は55~64歳と中高年期にあらわれてくる傾向があるのだ。とすれば若くしてセックスレスになるカップルは、主に男性の側の問題ということになるのかもしれない。

 マスターベーションについての男女の違いも明らかになった。男性の場合、マスターベーションの回数が増えると、カップル間のセックスの回数が減るのだが、女性の場合はマスターベーションはセックスの頻度に影響を及ぼしていないことがわかったのだ。つまり男性にとってマスターベーションはセックスの代替行為であるのに対し、女性にとってマスターベーションはあくまでも“別腹”なのである。

 こうしたカップル間の性的関係性の推移に、女性の閉経が重要なファクターであるのかどうかは今のところはまだわからないという。ともあれこうした男女の違いを知っておくことで、カップル間の問題によりよく対処できるのかもしれない。

■性欲を高めるフードアイテム10選

 性欲、精力の減退に対処するのにあまり薬剤には頼りたくないものだ。そこで性欲を高めるフードアイテムにはたとえば下記のようなものがある。

1.チョコレート
 チョコレートに含まれているフェニルエチルアミン(phenylethylamine)が神経系を活発にしてエンドルフィン、ドーパミンなどの分泌を高めて性的な興奮に誘う。

2.ハチミツ
 豊富に含まれるビタミンBが男性ホルモンであるテストステロンのレベルを高め、これもまた多く含まれているホウ素が女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を盛んにして性的欲望を高める。

3.イチジク
 フラボノイド、ポリフェノール、抗酸化物質が豊富なイチジクを摂取することで性的興奮が促される。古代ギリシアの時代ではイチジクは愛と多産を象徴していたという。

4.バジル
 バジルの風味には媚薬効果があるといわれている。また血流の流れを良好にして性的な欲望に引き起こしやすくなる。

5.アボカド
 ビタミンEを豊富に含んだアボカドもまた性行為を誘発するフードアイテムだ。ちなみにアボカドの名前の由来は“睾丸”に似ていることから来ていて、ルーツからして性的な意味合いを持つ果物である。

6.トリュフ
 トリュフの香りは異性を惹きつけるフェロモン化合物・アンドロステノンと同じ働きをするといわれていて、本人はもちろん一緒にいる者にも性的欲望を引き起こす。

7.アスパラガス
 ビタミンEとビタミンBである葉酸が多く含まれるアスパラガスは性ホルモンやヒスタミンの分泌を活発にして生殖器の機能を高め性的欲望に導く。

8.ショウガ
 ショウガは性感帯を敏感にするといわれている。特にショウガの独特な香りが循環器系の働きを活発にして性的興奮が誘発される。

9.シナモン
 シナモンは身体を暖める働きがあり、食欲と性欲が共に増進する。

10.カキ(牡蠣)
 亜鉛が豊富に含まれているカキは男性においては精子を増やし、男女双方において性欲を高める。多く含まれているアミノ酸もまた性ホルモンの分泌を促進する。

 もちろんソッチの目的でなくともこれらのフードアイテムは健康食でもある。食べすぎには留意しつつ積極的に摂取したいものだ。

参考:「Science Direct」、「BMJ Open」ほか

文=仲田しんじ

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