社会人としては相応の身だしなみが求められるが、仕事の現場での女性のメイクについては少しばかり見解の相違があるようだ。
■女性リーダーはナチュラルメイクにすべき?
これまでの研究で、仕事の現場においてきちんとメイクをしている女性は有能に見えることが報告されている。有能に見えて実際にも期待以上の働きをするとすれば出世のチャンスも増えそうだが、女性リーダーになった場合はメイクが与える印象がそれまでとは少し違ってくるようだ。
英スコットランド・アバーテイ大学の研究チームが2018年3月に認知科学系ジャーナル「Perception」で発表した研究では、実験参加者に一連の女性の顔写真を見せてその人物の人格特性を評価してもらう実験を行なっている。
女性の顔は同一人物の中でもいわゆる“すっぴん”から夜遊び向けのゴージャスメイクまで、メイクの濃さを段階的に変化させたバージョンが盛り込まれた。
収集した回答を分析した結果、男性であれ女性であれ、メイクが濃い女性はリーダーシップが低く評価されることが浮き彫りになった。つまりメイクの濃い女性はリーダーには向いていないと見なされているのだ。
過去に発表された研究では、女性のメイクに対してポジティブな見解が多かったのだが、今回の研究で女性のメイクにはネガティブな評価もあり得ることが指摘されることになった。また女性のメイクについては業種や業態によっても評価が分かれそうである。
いわゆる“平社員”や従業員というポジションでは、女性のメイクはそれなりの“威力”を発揮して高評価に結びつくが、リーダーとして人を率いる地位になるとメイクが与える影響がまた違ってくるということだろうか。女性リーダーはナチュラルメイクにすべきだということなのかもしれない。いずれにしても「職場における女性のメイク」に関する研究はこれからも引き続き注目を集めそうだ。
■コントラストを強調したメイクで若く見える
ティーンエイジャーならメイクをすることでより自分をアダルティに見せたいと思うかもしれないが、すでにアダルトな人々の多くにとってはメイクをすることで若々しい印象を与えたいと意図するのではないだろうか。若く見られることで魅力的で健康的な印象を与えたいと考えるのはある意味で自然な欲求であるだろう。
ではどのようなメイクをすれば若々しく見せることができるのか。それは目、鼻、口を目立たせるようにコントラストをつけることであることが指摘されている。最近の研究で、人種に関係なく顔のパーツを目立たせることで年齢が若く見られることが報告されているのだ。
フランスとアメリカ、そして中国の合同研究チームが昨年に「Frontiers in Psychology」で発表した研究では、顔のパーツがくっきりと浮き上がっていると若く見えることを報告している。もちろんシワなどの肌の状態も加齢を感じさせるものになるが、それよりも顔のコントラスト(明暗)のほうが年齢を占う指標になるということだ。そしてこれは人種に関係なくユニバーサルな指標であるということである。
研究では、白人、アジア人、ラテンアメリカ人、アフリカ人女性の顔のコントラストを変えた合成写真を実験参加者(フランス人と中国人)に見せて年齢を推測して回答してもらった。回答データを分析した結果、顔のコントラストの差が大きい写真の方が、約80%の確率で若いと判定されていることが明らかになった。そしてどの人種においても、顔のコントラストが年齢の判断材料になっていることが判明したのだ。
異なる文化にあっても、人々は意識的であれ無意識的であれ、人物の年齢を認識するための手がかりとして顔のコントラストを判断材料にしており、例えば顔の肌色の濃淡を変更して顔のコントラストの目立ち具合を変えることによって、見た目の年齢を意図的に変更できる可能性があると研究チームは説明する。
「見た目の年齢を意図的に変更できる」とはすなわちメイク技術にほかならない。もちろんスキンケアによる肌年齢の維持改善も重要だが、もっとシンプルに目鼻立ちと唇をクッキリと浮かび上がらせるメイクをすることで若々しい印象を与えられるのだ。特に女性においてはメイクの重要性がさらに増してくる話題になるだろう。
■20週間の“顔面エクササイズ”で見た目が3歳若返る
ナチュラルメイクにしても“盛る”にしても、メイクの影響力があらためて思い知らされる話題が続いているが、表情筋を鍛える“顔面エクササイズ”もまた若返りにとって効果的であることが科学的に証明されている。
アメリカの医療研究機関、ノースウェスタン・メディスンが2018年1月に皮膚科系ジャーナル「JAMA Dermatology」で発表した研究では、1日30分の“顔面エクササイズ”を20週間以上続けることで、中年女性の容貌が実際に若返ることが報告されている。
「顔の筋肉のエクササイズがルックスを向上させ、老化のビジュアル的兆候を取り除くといういくつかのエビデンスを今回揃えることができました。エクササイズによって顔面の筋肉が大きくなり強化されるので、顔のトーンがしっかりと浮びあがり若々しく見えるのです」と研究を主導したミュラド・アラン医師は語る。
加齢と共に顔の皮膚が痩せてくるのは仕方のない現象であるが、皮膚の下の筋肉を強化することで、顔の皮膚が痩せていくの食い止めると共にメリハリのあるしっかりしたシルエットの顔になるということである。
実験では40歳から65歳の中年女性の参加者27人に“顔面エクササイズ”の講習(90分)を受けてもらい、次の日から家庭で30分間(正確には32分)の“顔面エクササイズ”を続けてもらった。最初の8週間までは30分のエクササイズを毎日続けてもらい、9週目以降20週までは同様のエクササイズを一日おきに行なってもらったのだ。
この“顔面エクササイズ”には32種類の表情筋のトレーニングが含まれていて、それぞれを1分間行なうものになっている。
8週間経過時と20週の終了時に顔写真が撮影されて、開始時の顔写真との詳細な比較が行なわれた。写真を分析したところ、8週間終了時に平均で0.8歳の若返り効果が認められ、20週終了時には平均で2.7歳の若返りが確認されたのだ。20週間の“顔面エクササイズ”でおよそ3歳若返るとなれば気になる向きも少なくないのではないだろうが。しかも薬品類を使わない副作用の心配がないアンチエイジングとしてもこの“顔面エクササイズ”が注目されているようである。
参考:「SAGE Journals」、「Frontiers in Psychology」、「Northwestern University」ほか
文=仲田しんじ
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