新しく出会った人物にはどんな話題を振れば無難で、潜在的な関係悪化のリスクを回避できるのだろうか――。
■“初デート”の会話で心得たい5つのポイント+1
初対面の人物とプライベートな会話を交わすケースで、もっとも分かりやすいのは“初デート”の状況だろう。エンタメ情報メディア「Pedestrian」では初デートの会話で気に留めておくべき5つのポイントを科学的にアドバイスして興味深い。
●旅のことを話す
クゥアコロジー(Quirkology)と呼ばれる「日常生活における人間の奇妙な行動を科学的に調査する」学問(!?)の提唱者である心理学者のリチャード・ワイズマン氏によれば、映画の話題を話し合ったカップルの9パーセントが次にまた会いたくなるのに対し、旅について話し合ったカップルの18パーセントがその相手とまた会いたくなるということだ。
初めて親交を温める時に旅行話は格好の話題だということになる。海外旅行から身近な場所まで、訪れたことのある場所を振り返り話題のストックを増やしておくべきだろう。
●話をスムーズに続けること
話の内容を二の次にすれば、やはりよどみなく話を続けられる人物は好意的に感じられるといことだ。
今年4月にアメリカで発表された研究でも、お見合いデート(speed-dating)参加者は、如才なくスムーズに会話をする人物を高く評価する傾向があり、その人物の心の温かさと、他者への配慮をより感じるということだ。このような人物はもとより人に好印象を与えているとは思われるが、まさに初デートでもその真価を発揮していたのである。
●ちょっとした秘密を打ち明ける
人間関係の結びつきを強めるためにすでに活用されている知見ではあるが、実に個人的で具体的な“秘密”を打ち明けて相手と共有することで、親近感をより強められることが実験でも証明されている。
●7秒~10秒のアイコンタクトを繰り返す
相手が“OK”な人物同士であれば、会話中のアイコンタクトは結びつきを強めるものになるのは言うまでもない。しかしあまりにも長くジッと見続けることはまた別な意味(支配欲の意味など)を帯びてくるので、7秒~10秒程度でいったん外し、それをまた繰り返したほうがよいということだ。その際、頻繁に周囲にチラチラ目を配るのはあまり良い印象は与えずマイナス評価となる。視線を外すときはそっと下方に落とす程度がよさそうだ。
●あえて一線を越える
初デートに限らず社交の場所で宗教や政治の話はやはりタブーなのだが、あまり害のない分野で“自由な”発言や質問をするのも時には効果的であるという。確かに天気や家族構成の話ばかりでは退屈するというものだ。
行動経済学者のダン・アリエリー氏は、初デートの会話で「これまでの体験人数は?」や「処女(童貞)を失ったときどんな気持ちだった?」という質問もあり得るものだとしている。こうした一見眉をひそめるような質問は、権威に囚われない自由さを表現し、相手との心の溝を埋めるものになるということだ。
●会ったその日に性交渉できる人の特徴とは?
初デートの会話とは直接関係ない話題だが、男女を問わずにリアルに会ったのが初めての相手と仲良くなれた場合、その日のうちに性交渉ができるのかどうか、高い確率で分かる質問があるという。それは実に簡単な質問で、
「ビールの味は好き?」
というものだ。返答が社交辞令でないことが前提になるが、出会い系サイトの「OkCupid」の調査によれば、苦いビールの味が好きな“ビール党”は男女問わずに初デートで肉体的交渉を持つことに抵抗がない傾向があるということだ。一般的な人々より、ビール党の人々は初デートの日に性交渉を持つことができる確率が60パーセント以上も高いというのだ。
あくまでも統計によって浮き彫りになった傾向であり、そこにどんな因果関係があるのかはあまりよく分かっていない。ビールが人を好色にしているのか、好色な人がビールを好んで飲んでいるのかはわからないわけだが、ビール好きにはちょっと複雑な思いがするデータ分析かもしれない。いやむしろ名誉に感じるビール党も多い!?
■恐怖体験を共有した人物には好意や恋愛感情を抱きやすい
定番中の定番でありながらデートで映画を一緒に観るのはやはり2人の結びつきを深めてくれるということだ。しかも一緒に観る映画のジャンルはホラーが最も効果的だという。恐いシーンにさしかかって女性が叫び声と共に隣の人に抱きついてしまうハプニングが期待されているのかどうかはわからないが(!?)、“恐怖”と“魅了される感情”は分かちがたく結びついているというのだ。
また、恐怖は代表的な女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を促進し、性的欲望を引き起こす“発情ホルモン”であるといわれている。さらに“愛情ホルモン”と呼ばれているオキシトシンも恐怖の感情と深い関係があるということだ。
そもそも恋愛対象として見込みのあるパートナーに対面した時、我々の身体には多くの変化が訪れる。心拍数は増え、血圧は上昇し、瞳孔が拡大するのだが、実はこの身体反応は、恐怖や危険に見舞われた時の、闘うか逃げるかを瞬時に計算している「闘争=逃走反応(fight-or-flight response)」とほとんど同じものなのである。したがってホラー映画などで共に恐怖を感じたカップルは、お互いを魅力的に感じ、半ば強制的に恋愛感情を体験させられることになるというわけだ。
恐怖と好意が深く結びついていることを突き止める試みは意外に古く、1974年に発表された論文では有名な「つり橋効果(Suspension Bridge Effect)」が指摘されている。カナダの心理学者であるダットンとアロンによって行なわれた実験では、実験参加者の18歳から35歳までの独身男性が2グループに分けられた。
実験名の通り、つり橋で実験が行なわれたのだが、2グループはそれぞれ、グラグラ揺れて非常に危険に感じられるつり橋と、あまり揺れないしっかりとした作りのつり橋の上で、魅力的な女性からアンケートを求められて回答した。各アンケートの終了後、質問に対する追加の情報や疑問があった際にはいつでも電話をしてくれるようにと、女性は実験参加者に電話番号のメモを渡したのだ。
実験後、女性に電話をかけてきたのは、圧倒的に危険なつり橋でアンケートに答えたグループの男性たちだった。危険なつり橋でアンケートに回答した男性の約半数がその後女性に電話をしたのに対し、安全な橋でアンケートを受けたグループで女性に連絡をしたのはわずか1割だったということだ。つまり恐怖を感じさせる状況を共有した人物には好意や恋愛感情を抱きやすくなることが浮き彫りになったのだ。
実際の恐怖体験は御免被りたいが(言及するには憚られるがもちろん実際の災害を共有することも絆を深める効果があるといわれている)、ホラー映画をはじめジェットコースターやメリーゴーランドなど、ちょっとした恐怖を感じるアトラクションがカップルに人気なのがうなずける話題であるだろう。
■映画館デートやDVD観賞はカップルの絆を深める
初デートでなくとも、カップルにとって一緒に時間を過ごす手段として最も身近なのもののひとつが映画鑑賞だろう。映画館でも自宅でも映画観賞は手軽なカップルの時間の過ごし方だ。一緒に旅行へ出かけたり、スポーツをしたりという積極的なアクティビティにくらべて、映画鑑賞はあまり自慢できる過ごし方ではないようにも感じられるが、決して悲観するなかれ(!?)、映画などを一緒に観ることで実際にカップルの絆は深まっているという研究結果が最近報告されている。
英・アバディーン大学の研究チームが259人の決まったパートナーのいる大学生を対象に行なった調査では、カップルの属性から、相手との親密さの程度、共に過ごす時間の長さ、特に一緒に映画やビデオを見る頻度や時間が細かく分析された。
ここで言うカップルの“属性”というのは、お互いがどれくらい共通の組織やコミュニティに属しているかという度合いである。例えば幼なじみのカップルであれば、共通の知り合いや友人も多くきわめて“ソーシャル度”の高いカップルといえ、一方、それまでまったく接点がなかったにも関わらず何らかの“出会い”で結ばれたカップルは、語弊はあるもののあまりソーシャルなカップルではないということになる。実験参加者にはこの“ソーシャル度”もそれぞれ自己申告してもらったのだ。
結論から言えば、これまで共に映画などを一緒に観る時間が多かったカップルほど、2人の親密度は高いという傾向が浮き彫りになった。映画館デートやDVD観賞は確かにカップルの絆を深めているのだ。
しかしある意味でそれよりも興味深いのは、“ソーシャル度”の高いカップルは、映画やテレビを見て一緒に過ごすことで深まる親近感はごくわずかだったのに対し、それまでは別のコミュニティで暮らしてきた“ソーシャル度”の低いカップルは、映画館デートやDVD観賞でより深い親密感を育んでいたのだ。
この結果が物語っているのは、“ソーシャル度”の低いカップルの“共通の知人”の少なさであるということだ。それを埋め合わせるために、メディアの中の俳優や芸能人を共通の知人に仕立て上げようという意図が、意識しているかどうかに関わらずにそこにあるのではないかということだ。
そう考えればテレビやネットニュースで芸能ゴシップが決して廃れないのも、それらがカップルに限らず微妙な距離感のある人々の間に共通の話題を提供してくれる役割を持っているからかもしれない。そして“共通の知人”は実在する芸能人ばかりでなく、架空のヒーローやアニメのキャラクターなどにも及ぶ。同じキャラクターのファンであることがきっかけで成立したカップルも決して少なくない。したがって少し関係が近づいたと思われる人間関係では、映画や芸能人、各種のキャラクターの話題なども有効に働く可能性があることを気に留めておいてもよいのだろう。
参考:「Pedestrian」、「Psychology Today」ほか
文=仲田しんじ
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