全米各地で急激に自然繁殖する驚異で脅威な外来種たち

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 四季折々の雄大な自然の景観と野生に息づく命の姿を堪能できる自然公園――。アメリカ各地の国立公園では今、なかなか大変なことが起っているようだ。

■フロリダで自然繁殖するビルマニシキヘビ

 世界遺産である米・マイアミ州の「エバーグレーズ国立公園」でビルマニシキヘビが増え続けている。

 インドやミャンマーなどが原産のビルマニシキヘビだが、1970年代半ばにエバーグレーズ公園内で見つかり、その旺盛な繁殖力をこの地でも発揮して増え続けているという。成長すると全長3.7mほどになり、体重は110kgにもなる。毒はないものの鋭い歯で公園内の小動物や鳥類などを貪欲に捕食し、シカやワニまで飲み込む個体もいるというから驚きだ。

 ビルマニシキヘビの凄まじい繁殖力と食欲は付近の生態系を確実に破壊していることから、専門家を交え職員やボランティアなどによる大規模な駆除がこれまで何度も行なわれてきたが一向に減る気配を見せていない。ある科学者の予測によれば、今のままのペースでこのビルマニシキヘビが増え続ければ、2100年までには国土の3分の1に生息範囲が拡大するという。その“生息地”にはなんとニューヨークも含まれるのである。

 フロリダ州のマイアミは輸入ペットを扱う業者も多いペット愛好家の一大拠点であり、2008年にペット用ヘビの輸入規制が発案された際、愛好家や業界団体の強い反対がありなかなか実現に到らなかったという経緯がある。しかしオバマ政権に入ってから事態は動きはじめ、2012年にキイロアナコンダ、アフリカニシキヘビ、ナタールニシキヘビと共にこのビルマニシキヘビも輸入禁止生物となった。つい先月にはこれに加えて、アミメニシキヘビ、オオアナコンダ、ベニアナコンダ、マラジョーアナコンダも輸入禁止となった。

 現在政府はさらに多くの種類の爬虫類の輸入禁止を目論んでいるということだが、自然繁殖しているビルマニシキヘビ対策としては遅きに失していることは明らかだろう。エバーグレーズ国立公園をはじめとするこの地ではたして今後どのような対策が執られるのだろうか。

■コロラド州の湖では金魚が激増

 一方、コロラド州の「コロラド州立公園(Colorado Parks and Wildlife)」の湖では現在、金魚が急速に繁殖しあたり一面を泳ぎまわっているというレポートが「USA Today」などから報告されている。

 この金魚の“祖先”は、おそらく数年前に少しばかり違法に放流された金魚と考えられているが、これほど急速に繁殖するとは“実行犯”も思ってはいなかっただろう。あまりにも増えすぎた金魚が生態系を損なうものとして、地域の職員たちはさまざまな対策を考えているということだ。

 この金魚の“増殖”は湖にさまざまな悪影響を及ぼすことが考えられるという。例えば、この湖になかった病気を持ち込む怖れや、水質のpH(水素イオン濃度指数)を下げること、食物を食い尽くすことなどに加えて他の湖にも伝播する可能性や、渡り鳥などがやって来なくなることも考えられるのである。

 有力な解決策は2案あるという。ひとつは一度完全に湖の水を排水してしまうことだ。この場合、排水の過程で在来種を保護し、金魚だけを処分することになる。この選択はかなりの作業を伴うプロジェクトになるため、それなりのコストと時間を要することになる。

 もうひとつはなんと、特別な装備を施したボートによる“電気ショック”で湖の魚たちを一度気絶させることだという。気絶して浮いてきた金魚だけをすくい取って回収する作戦だ。回収された金魚は動物リハビリセンターへ送られ、動物たちの餌として提供されるという。どちらにしても厄介な大仕事になることは間違いない。

■陸ガメをウミガメと間違える悲劇が多発

 場所は再びフロリダに戻るのだが最近、大自然を満喫しにやってきた“親切な”観光客が犯した失態が続いていて見過ごせない問題になっているということだ。

「BBC」などによればその“失態”とは、泳げない陸ガメである「アナホリゴファーガメ」の孵化したばかりの赤ちゃんガメを見つけた観光客が、ウミガメと思い込んで“親切心”から捕まえて海に放り込んでしまうことで、これが決して無視できない件数にのぼっているという。海に放り込まれたアナホリゴファーガメの赤ちゃんの大半は溺れて死んでしまったらしい。

「陸ガメのアナホリゴファーガメは海岸に良く現れますが、足を良く見れば陸ガメかウミガメか判断できます。陸ガメは足の指がありますが、ウミガメは足がヒレになっています。親切心はわかりますが、そもそも野生の生き物には手を触れずにソッとしておいて下さい」と現地の自然保護団体「The Florida Fish and Wildlife Conservation Commission」の代表はメディアを通じて注意を促している。

 ネイチャー系ドキュメンタリー番組などではよくウミガメの産卵シーンに続き、砂浜で孵化した赤ちゃんガメが海に向かう最中に鳥に食べられる場面が描かれて視聴者の涙を誘っているが、実際に海辺で赤ちゃんガメを発見してそのシーンを思い出した観光客の親切心が“一人歩き”してしまった悲劇のようにも思えてくる。

 これからの行楽シーズンで自然に触れる機会が増えることもあると思うが、訪れた景勝地の美観が末永く続くよう、訪問客の側もじゅうぶんな配慮が求められているのだろう。大自然はとてもナイーブであることを今一度、再確認したいところだ。

参考:「New York Times」、「USA Today」、「BBC」ほか

文=仲田しんじ

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