充実したハッピーライフのためにしてみたいこと

ライフハック

 外食に出る際に「○○のカツカレーが食べたい!」と決めてかかる場合もあれば、「何か美味しそうなものを……」と初めての店やメニューも候補に入れつつ現場で決める場合もあるだろう。どちらであれ期待に適った食事であれば満足できるのだろうが、後々まで印象に残るのは目的の幅を広げたより“理念的”な消費行動であることが最近の研究で指摘されている。

■“理念的”な買い物は幸せが長続きする?

 服を買う時にはじめからアイテムを決めて買う場合もあれば、店に入り現物に魅かれて買う場合もある。無駄遣いや衝動買いを避けるためにははじめから買うモノを決めておいたほうがいいように思えるが、こうしたショッピングにおける態度の違いはアイテムを入手した満足度に何か影響してくるのだろうか。

 米・ミネソタ大学とテキサスA&M大学の合同研究チームが2018年3月に「Journal of Consumer Psychology」で発表した研究では、消費行動における目標設定が後の満足感にどれほどの影響を与えるのかを探っている。

 これまでの研究では、人は具体的な目標を設定してそれに到達することでより大きな満足感と幸せを味わうものだと考えられてきた。例えばマラソンやダイエットの“数値目標”である。しかし研究チームは飲食や商品の購入など、目的が満足感や幸福であった場合、それは当てはまらないのではないかと考えたのだ。

 ひとつの実験で研究チームは参加者たちに過去1ヵ月で最も重要であった買い物について話してもらった。ある人々はその買い物は生活の満足度を引き上げる買い物であったと“理念的”な説明をした。またある人々はその買い物が特定の用途のためのものであったと具体的に報告した。そして参加者は一連の質問に答えてその時の買い物がどの程度の満足感をもたらしたかが突き止められた。

 2週間後、参加者にeメールが送られ再び買い物についての質問への回答が要求された。さらに6週間後にも参加者はeメール経由で質問に答えた。

 こうして収集した回答データを分析すると、“理念的な買い物”をした人々のほうが“具体的な買い物”をした人々よりも、満足感が長続きしていることが浮き彫りになったのだ。生活の満足度を引き上げるという“理念的”な人々の買い物のほうが幸せが続いていたのである。

 研究結果は人々が経験から得た幸福の量を変えることができることを示唆しており、理念的な目標設定はより長続きするポジティブで情緒的な印象を残せるのだと研究チームは説明する。

 また音楽を聴いてもらう実験も行なわれたのだが、この場合も「楽しくなりたい」や「気分を上げたい」など特定の目的を持って聴く者よりも、漠然と音楽を楽しみたいという態度で聴いた者のほうがより音楽を楽しめていることが明らかになった。そしてその楽曲により多くお金を支払うこともまた判明したのだ。

 特定の店の特定のメニューがどうしても食べたくなることもあるとは思うが、たまには初めての店やメニューに気分次第で挑戦してみれば有意義な外食体験になりそうだ。もちろん“マズくなければ”という条件はつくのだが……。

■シンプルに幸福感を得られる6つの方法

 幸せを感じているのは脳である。具体的には脳内神経伝達物質であるセロトニン、別名“幸せホルモン”の分泌が増えることで脳の働きが活性化され、前向きな気分が持続されて心地良さ、満足感、幸福感が得られるのだ。またドーパミンも快楽と幸せに関係しているといわれている。

 逆に言えばこうした神経伝達物質の分泌を促せば幸せを感じられることになる。言い方は悪いがいわば“脳をダマして”神経伝達物質の分泌を促進し、手軽に幸福感を得られる方法が6つあるという。

●散歩する
 米・スタンフォード大学から2015年に発表された研究では、外に出て散歩をすることは人を幸せにし、くよくよと思い悩む時に活発になる脳の領域の活動を抑制できることが報告されている。また別の研究でも、散歩がクリエイティビティを刺激することが示されている。

●他人に親切にする
 神経科学からのアプローチで、利他主義は脳内でドーパミンの分泌を促進していることが確かめられている。カフェでコーヒーをおごるもよし、電車で席を譲るもよし、街角の募金のキャンペーンに小銭を投じるもよし、こうした利他的な行動で幸せな気分をカジュアルに味わうことができる。

●音楽を聴く 
 聴くと“鳥肌”が立つという楽曲はあるだろうか。2011年のカナダ・マギル大学の研究で、音楽を聴いて鳥肌が立つ体験で脳にドーパミンが分泌されることが指摘されている。

●好物をつまむ
 好きな食べ物を食べている時もまたドーパミンが分泌されている。手軽に食べられるチョコレートなどを少し口にすることで気分を高めることができる。しかしくれぐれも食べ過ぎには注意したい。

●ピローファイト
 枕で叩き合う“安全な格闘技”であるピローファイトで盛り上がることができればすぐさま気分が高揚して心拍数があがる。これまでの研究でも適度な有酸素運動がセロトニンの分泌を促すことが報告されている。

●「慈悲の瞑想」を実戦する
 慈悲の瞑想(loving kindness meditation)が注目されている。慈悲の瞑想は自分を慈しみ、他者を受け入れることが主眼に置かれているという。神経科学の側からは慈悲の瞑想によって感情が豊かになり、ポジティブな出来事をより多く楽しめることが報告されている。また他者に対する共感能力も高まるということだ。

 瞑想法を習得するのはそれなりの時間がかかりそうだが、ほかの5つについてはきわめて簡単に短時間で行なうことができる。特に散歩などは気分転換を兼ねて習慣づけたいものだ。

■職場を幸せな環境にするためには

 プライベートのみならず職場でも幸せを感じたいものだが、仕事場を幸せな環境に変えるための鍵となるのが“親切心”であるという。そして職場を親切心で満たすことによってチームの結束が強まり、誰もがチームの一員であるという包括的な社内カルチャー(inclusive culture)を育み、その結果業績も向上するということだ。そこで職場を親切心に溢れた環境にするためのシンプルな5つの言動があるという。

●同僚に仕事のやりかたを尋ねその話に誠実に耳を傾ける。

●周囲に心からの笑顔を見せる。

●同僚の有能さ、ハードな仕事ぶり、斬新なアイディアなどを褒めて感謝する。

●業績には価値があるが、その業績に到った道のりにも同じように価値があることを再確認する。

●自分に対しても親切にする。日々新たな気分で仕事に取り組めるための効果的なセルフケア法を見つけ出しておく。

 米ニューヨークの非営利団体「Kindness.org」の創設者でCEOのジャクリン・リンセイ氏は「親切な職場とは、従業員の精神的、肉体的な満足度を生産性と持続可能性の重要な部分として扱うことを意味します。親切な言葉や行動に基づいた職場では、セクシャルハラスメントやいじめはいっさいありません」と語る。

 自分自身と職場の同僚を優しく扱うことで、より穏やかで、敵対的ではない職場環境を醸成することができるということだ。

 イギリスの劇作家、ジェームス・マシュー・バリーはかつて「常に少しだけ余分に親切であろうとすること」を提唱している。親切の輪を広げることで職場を幸せな環境にできればそれだけ仕事にも身が入るというものだろう。折に触れて親切な言動を心がけてみたいものだ。

参考:「Wiley Online Library」ほか

文=仲田しんじ

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