健康にも脳にも良いオリーブオイルで“生涯現役”

サイエンス

 あのバイアグラよりも男性の生殖機能を向上させる“秘薬”が発見された――。それはオリーブオイルだ。

■オリーブオイルで“生涯現役”

 オリーブオイルにはさまざまな健康効果が指摘されているが、男性の生殖機能も高めてくれることが最近の研究で報告されている。なんとあのバイアグラよりも効果が高いというのである。

 新鮮な野菜や果物、魚、オリーブオイルなどを沢山食べる地中海食(Mediterranean diet)は長寿に繋がる料理として注目が集まっているが、ギリシャ・アテネ大学の研究はこうした地中海食の食習慣を持つ660人の男性(平均年齢67歳)を調査したところ、勃起不全の症状を持つ者は20%に留まっていたということだ。

 ちなみに米ジョンズ・ホプキンズ病院の調査によれば、40歳から70歳までのアメリカ人男性の52%が勃起不全の症状を抱えているという。

 研究チームによれば、男性の生殖機能の向上においてバイアグラは即効性があるものの、長い目で見ればオリーブオイルのほうが効果的であるということだ。

「地中海食を実践する男性、特にオリーブオイルを多く消費している男性は高齢期においてインポテンツになるリスクが40%低くなります」と研究を主導したクリスチナ・クリソシュウ博士は語る。

 さらにオリーブオイルは血管の健康を保ち、重要な内臓器官への血液循環を向上させるという。

「オリーブオイルの摂取はバイアグラなどの薬物を必要としない長期的な解決策になります。中年以降の地中海食の食習慣は“現役”でいる可能性を高めます」(クリスチナ・クリソシュウ博士)

「人生100年時代」と叫ばれる昨今だが、バターの変わりにオリーブオイルを用い、ナッツ類や新鮮なフルーツ、野菜、豆類を意識的に食べることで“生涯現役”も夢ではないのかもしれない。

■オリーブオイルは脳にも良い

 オリーブオイルをふんだんに使った地中海食の健康効果が注目されているのだが、一方でオリーブオイルは脳にも良いことが報告されている。

●抗酸化物質が豊富に含まれている
 オリーブオイルには天然由来の抗酸化物質であるポリフェノールが豊富に含まれている。ポリフェノールだけでなく30以上のものフェノール類が含まれており、これらが優れた抗酸化作用を発揮すると共に余分な活性酸素を取り除き身体と脳の酸化を防止する。脳は大量の酸素を消費するので抗酸化物質はきわめて重要である。

●脳に必要なビタミンが多く含まれている
 オリーブオイルには脳の健康にとって重要なビタミンであるビタミンEとビタミンKが豊富に含まれている。ビタミンEはビタミンCと組み合わさって記憶力を維持し、アルツハイマー病と認知症を予防する。また脳卒中後の血液循環を活発にしてダメージを最小限に抑える。

 一方でビタミンKは頭脳の明晰さを保ち頭の“回転”を向上させる。また特に言葉の記憶力を高め、ビタミンEと同じくアルツハイマー病を予防する。

●うつを予防する
 ある研究では、食生活の中でキャノーラ油からオリーブオイルに替えることで、うつのリスクが50%低まることが報告されている。この知見に基づけば、うつの原因のひとつにキャノーラ油に含まれるトランス脂肪酸の摂取があることが示唆されることになる。

●脳の質を高める
 オリーブオイルには脳細胞の形成と修復を行なう脳由来神経栄養因子(BDNF)と、神経成長因子(NGF)の分泌を促進する働きがある。特にBDNFは新たな脳神経細胞の形成を促し、ストレスによって被る脳へのネガティブな影響を緩和する。またBDNFのレベルが低いとうつに繋がることがこれまでの研究で報告されている。

●神経変性疾患を予防する
 オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪(monounsaturated fats)が高齢期において記憶力と認知機能を向上させる。またある研究ではオリーブオイルを多用する地中海食はアルツハイマー病のリスクを40%低下させることを報告している。

 認知症を予防するための新しいダイエット「MINDダイエット」が注目を集めているが、まさにオリーブオイルはこのMINDダイエットの中心的役割を担っている。エクストラバージン・オリーブオイルから抽出された天然有機化合物であるオレオカンタール(Oleocanthal)は抗炎症作用を持つばかりでなく、アミロイドベータたんぱく質が関係するアルツハイマー病の発症の防御壁の役目を果たす。

 脳の健康にもよいというオリーブオイルだが、こうした効果は最高品質の「エクストラバージン・オリーブオイル」の品質規格のもので最も発揮されるということだ。オリーブオイルの品定めは慎重に行いたいものだ。

■オリーブオイルは産地によって風味がかなり異なる

 オリーブオイルの香りが好きだという人も少なくないのだろうが、実はワインと同じようにオリーブオイルも産地によってかなり香りと風味に違いがあることが最近指摘されている。特にオーストラリアではオリーブオイルの産地表記を規格化しようという動きもあるようだ。

 オーストラリアの「クイーンズランド・オリーブ・カウンシル」は、全オーストラリアのオリーブ栽培者のために収益性を高める産地表記システムのプロジェクトを発表している。

 感覚器官の専門家であり、今回のプロジェクトの筆頭研究者であるリチャード・ガウェル氏によれば、同じ品種で同じ時期に収穫されたオリーブであっても産地によって著しく風味が異なるケースがあるということだ。例えばまったく同じ品種のグリーンオリーブであっても、クイーンズランドのオリーブオイルは木の実の風味で甘いのに対し、南オーストラリアのオリーブオイルはユーカリの風味でミント風の味わいになるという。

 同カウンシルは、こうした産地による風味の違いは消費者のオリーブオイル選びを変えるものであることを指摘している。同カウンシル主任のアマンダ・ベイリー氏によれば、消費者にこうした産地による風味の違いを知ってもらうべく、わかりやすく解説したウェブサイトを立ち上げる準備を進めているということだ。そしてオリーブオイル選びはワイン選びと同じであると主張している。

 そしてプロジェクトの試算によれば、オリーブオイルのボトルに産地表記をすることで、全オーストラリアのオリーブ栽培者の94%が収益をアップできるという。場合によっては50%も収益をあげられる“銘柄”が登場するということだ。

 ワインのように細かく評価されてグレードが定められるようになれば、海外からの需要も今以上に高まり、さらに生産者は適正な収益を上げられるようになるだろう。同プロジェクトはまだまだ協議が必要とされているようだが、近い将来にはオリーブオイルの“テイスティング”が普通の光景になっているのかもしれない。

参考:「Mirror」、「Natural News」、「ABC News」ほか

文=仲田しんじ

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