今後50年で花粉症患者が2倍に!? 世界的に深刻化する花粉の防衛術ベスト10!

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 気候変動により今後ますます花粉症患者数が増え、症状をもたらす期間も伸びて深刻化するという。

■今後50年で花粉症患者が2倍に

 ヨーロッパの花粉症患者が今後50年で2倍に増える――。英イースト・アングリア大学の研究チームから発表された研究が社会に衝撃を与えた。花粉症が今後ますます蔓延するというのだが、その元凶は地球レベルの気象変動である。

 日本では花粉症の“犯人”はスギやヒノキと見なされているが、北米やヨーロッパではブタクサやイネ科の植物による花粉症がメジャーだ。ブタクサによる花粉症はこれまでアメリカやカナダで主に問題にされてきたのだが、昨今の気候変動でブタクサがヨーロッパで急激に増えつつあるという。したがってヨーロッパではこれまでの“主犯格”であったイネ科の植物にブタクサが加わって、今後ますます花粉症患者数が増えるという。

 研究によれば、ヨーロッパで現在3300万人と推定されているブタクサ花粉症患者は、2041年から2060年の間に7700万人にまで増加するということだ。ヨーロッパでこれまで ブタクサ花粉の悪名高い地域としては、ハンガリーやルーマニア、バルカン半島などに限定されていた感もあったのだが、今後ブタクサの繁殖圏が北上することでドイツやポーランド、フランスにも深刻な影響をもたらすということだ。

 ブタクサの繁殖エリアの拡大にさらに追い討ちをかけるのが気候の温暖化だ。これまでは夏の終りと共にブタクサ花粉の季節も終わっていたのだが、温暖化にあわせて花粉が飛び交う時期は徐々に延長されて、試算によれば10月半ばまで花粉シーズンになることが想定されるという。花粉の量が増えて期間も伸びるというのは最悪のシナリオだろう。ブタクサの繁殖を食い止めるなどの方策が重要視されてくると研究は結んでいる。今後世界的に花粉症の問題がさらに深刻化してきそうだ。

■花粉症による社会の経済的損失

 花粉症などのアレルギー関連の医療費はEU内でも大きな財政負担になっている。少なくとも年間約7兆円が支出されておりその経済的損失も無視できない。そして個々の職場でも花粉症がもたらすコストが大きな問題になっていることがイギリスで議題に上がっているようだ。

 イギリス気象庁(Met Office)の調査によると、全イギリスで花粉症によって失われている勤務時間は1年間で合計で2900万日にも及んでいるという。シビアな花粉症を抱えている従業員は平均で年間8.4日、花粉症の症状が原因で欠勤を余儀なくされているということである。

 調査によれば、イギリス人の労働生産人口の41%が花粉症に悩まされており、11%が最悪の場合は出勤できないほどの重症であるということだ。勤労者の10人に1人が、場合によっては欠勤しなければならないほどの花粉症に苛まれているとは確かに深刻な事態である。

 これらの重度花粉症の従業員は、欠勤するしないに関わらず極度に思い症状に苛まれる日が年間で平均11.2日あり、こうした日は労働生産性が最悪の場合は4分の1にまで低下するという。仕事の現場でも花粉症に対する理解が今以上に求められているということだろう。

 花粉症に対する正確な理解に基づく職場環境におけるガイドライン作りが、個人にとっても組織にとっても有益なものになることが専門家から指摘されているのだ。

 重症の日に無理に勤務して生産性を低下させるよりも、柔軟な対応策をあらかじめ用意して経営へのダメージを最小限にすることが組織に求められているといえるだろう。あらかじめ花粉症のリスクを具体的に把握しておくことで不測の事態に備えるべきなのだろう。

■花粉防衛術ベスト10

 アメリカでも人口の20%が程度の差こそあれ花粉症に悩まされているという。やはりこれからやってくる春は最も症状が酷くなる時期だ。近年花粉症は、カビやホコリ、動物の羽毛アレルギーと並んですっかりメジャーなアレルギーになっている。

 花粉といえば通常、美しい花々の花粉をイメージするが、花の花粉は粒子が大きく、多くの場合は昆虫によって運ばれるため花粉症の原因にはならない。風が媒介となる花粉を放出するスギなどの樹木やブタクサなどの雑草類が主な“犯人”だ。

 病院で花粉症の診断を受けると、抗ヒスタミン薬を処方されることが多いが、今のところは根本的な花粉症治療薬は開発されていない。しかし症状を軽くするための方法は各方面で熱心に研究されており、花粉症に対処するための10の方策が紹介されている。

1. シーツを週に1度はお湯で洗う。

2. 花粉シーズンは外出時に花粉が付着するので、帰宅後にお風呂に入るかシャワーを浴び、特に髪を入念に洗う。

3. 特に花粉シーズン中は洗濯物を外に干さない。

4. 外出時はマスクの着用を心がける。

5. 花粉のピークタイムの外出をなるべく避ける。時間帯では午前10時~午後4時の間。気候条件では高気温、乾燥、風の強い日に花粉の飛散量が多い。

6. 身近な場所の花粉の多い地域を把握しておく。

7. シーズン中は基本的に家や車の窓を開けずにエアコンを使う。

8. 部屋の掃除を入念に行なうことに加え、エアコンのフィルター、換気扇、換気ダクトの清掃をこまめに行なう。

9. 浴室をはじめとする湿ったカビの生えやすい場所を特に入念に清掃する。

10. 花粉シーズン中のペットには多くの花粉が付着しているので、ペットをベッドルームに入れない。

 以上のような点にも留意しつつ花粉に対処したいものである。

参考:「 Environmental Health Perspectives」、「City A.M.」、「MedicineNet.com」ほか

文=仲田しんじ

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