今後10年で仕事の半分が無人化!? AIとロボットに奪われる仕事と奪われない仕事

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 囲碁や将棋においてAI(人工知能)はもはや人間が敵う相手ではなくなってしまったのだが、今後は実社会の中のさまざまな仕事がAIにとって代えられることが指摘されている。専門家によれは今後たった10年で世の中の仕事の半分がAIやロボットに代わるというから驚きだ。

■今後10年で今の半分の仕事がAIとロボットに代わる

 中国の有力なベンチャー投資家でコンピュータサイエンティストのカイフ・リー(李開復)氏は、今後10年で現在の仕事の半分がAIとロボットに代わると主張している。急激な速度で社会の仕事環境が大きく変化することになる。

「AIの普及は、これまでの電気の登場、産業革命、インターネット革命、モバイルインターネットの出現を含む、どのテクノロジー革命よりも大きな影響を及ぼします。AIは“判断エンジン”であり、人間にとって代わるものです」(カイフ・リー氏)

 囲碁と同じように、多くの分野でAIは現在すでに人間の能力をはるかに凌駕しているということだ。例えばリー氏が投資を行なったITベンチャーの中には、300万人の顔を同時に認識できる技術や、金融ローンを8秒で分散できるシステムを持っている会社があるという。

「これらは“超人”の能力であり、今後どの産業分野であっても人間がしていた仕事のおそらく50%がAIに代わります。そして人類に莫大な利益をもたらし、貧困は撲滅されるでしょう」(カイフ・リー氏)

 そしてこの人間とAIの“配置転換”は今後10年以内に起ることをリー氏は指摘している。なんとも急な話で戸惑ってしまうかもしれないが、IT業界の重鎮であるリー氏の弁だけに、多くの賛同を得ているという。

 今後多くの仕事がAIにとって代わるのだが、しかしながら絶対にAIやロボットが代われない仕事があることもリー氏は重ねて主張している。それは対人サービス業だ。

「心と心を通い合わせることに(AIが)習熟することは絶対にないと思います。対人サービス業は雇用の中で“ファーストクラス”になります」(カイフ・リー氏)

 今後人間が多くの仕事をAIに明け渡す一方、人間対人間の対人サービスがますます貴重なものになり、高いクオリティが求められるものになりそうだ。

■AIに奪われる仕事10、奪われない仕事10

 では具体的にどういった仕事がなくなり、一方でどんな仕事がまだまだ人間に任されるのか。「HubSpot」の記事では、無くなりそうな仕事とこの先も人間が行なう仕事をそれぞれ10職種紹介している。

●なくなりそうな仕事10

1.テレマーケッター(消滅確率:99%)
 電話セールス業務自体が今後徐々に減ると共に業務が急速にAI化している。

2.専門的な書店員(消滅確率:98%)
 現在でも本の検索はほぼオンラインで可能になっていることもあり今後専門性を持った書店員のニーズは低くなる。

3.給与管理部門マネジャー(消滅確率:96%)
 給与管理部門マネージャー(Compensation and Benefits Managers)の仕事はこの後完全に自動化されるために職種として残る可能性は低い。

4.受付係、フロント係(消滅確率:96%)
 業務そのものは無くならないものの大幅に自動化と無人化が進む。

5.ガイド、案内係(消滅確率:94%)
 AIのほかにドローンなども活用されてやはり自動化と無人化が進む。

6.校正者(消滅確率:84%)
 校正ソフトの進歩がめざましく文書のミスの発見、修正という作業においては人間は必要なくなる。広い意味での“校閲”はその限りではないだろう。

7. コンピュータサポートデスク(消滅確率:65%)
 現在でもかなりネット検索でパソコンの問題を解決できるようになっており、しかも今後カバーする領域が増えるため1人の人間には手が負えなくなるという側面もある。

8.市場調査アナリスト(消滅確率:61%)
 AIを活用した市場の調査分析が主流になるためアナリストのニーズは大幅に下落する。

9.広告営業マン(消滅確率:54%)
 ネットメディアの宣伝広告の効果はすぐさま数字にあらわれ分析が可能になるので、広告営業の存在理由はどんどん希薄になる。

10.各種の小売店員(消滅確率:92%)
 ネットで商品の情報と価格がすぐにわかる状況の中、小売店の店員は今後も減り続けるだろう。

●今後も存続しそうな仕事10

1.人事部長(消滅確率:0.55%)
 人事管理の業務は大幅に自動化されるものの従業員の“人心”の管理と把握のために人事部長の仕事の重要性はむしろ高まるといえる。

2.営業部長(消滅確率:1.3%)
 単なる営業マンの仕事はどんどん減っていくのだが、逆に高いレベルで消費者やユーザーを説得できる営業部長の存在がますます求められるようになる。

3.販売部長(マーケティングマネージャー)(消滅確率:1.4%)
 各種の市場データを読み解き販売戦略を計画することはまだAIには難しく、優れた実績を持つ販売部長の存在感は逆に増してくる。

4.広報部長(消滅確率:1.5%)
 人の心に訴えかける広報戦略もまたデータ分析だけではできないため、広報のスペシャリストはまだまだ重用される。

5.最高経営責任者(CEO)(消滅確率:1.5%)
 幅広い観点から会社の経営戦略を練り、従業員や業界内での求心力を得ることはやはり今のところ人間にしかできない。

6.イベントプランナー(消滅確率:3.7%)
 イベントの企画立案の過程で多くの人に会って話をまとめる仕事はまだまだAIにはできない。

7.ライター、作家(消滅確率:3.8%)
 各種データからニュース記事を作成するAIはすでに活躍しているが、オリジナル記事を制作するのはまだまだ難しい。そしてネットメディアの急成長とともに優れたライターのニーズはますます高まっている。

8.ソフトウェア開発者(消滅確率:4.2%)
 ソフトウェア開発の広範囲の作業をAIにさせるのはまだ難しく、また各種ソフトウェアの需要もますます高まることからソフトウェア開発者は多方面でまだまだ必要とされている。

9.編集者(消滅確率:5.5%)
 優秀な校正ソフトなどで作業を省力化できる環境も整い、ますます本来の編集者としての仕事が求められているということだ。

10. グラフィックデザイナー(消滅確率:8.2%)
 画像デザインソフトの高機能化などでデザイン制作の環境が整うことで、むしろ純粋なクリエイティビティを発揮することがより求められている。

 もちろんあくまでも参考程度のものではあるが、AIにはできない“人間くさい”仕事がまだまだ求められているということだろうか。

■ロボットに仕事を奪われない人の性格特性

 これからの時代にすぐにでもAIに奪われそうな職業と、逆にむしろ重宝がられる仕事の傾向がわかったのだが、最新の研究ではAIに仕事を奪われない人には、特有のパーソナリティー特性があることが指摘されている。いったいどんな特性を持つ人がこれからの時代、AIやロボットに仕事を奪われないのだろうか。

 米テキサス州・ヒューストン大学の研究チームが2017年5月に心理学系学術誌「European Journal of Personality」で発表した研究によれば、現代の自動化が進む社会の中でロボットに職を奪われていない人々は、知能が高く高校生時代に芸術とサイエンスに興味を持っていたというパーソナリティー特性があることを報告している。

「ロボットは複雑でソーシャルな案件について人間と同じようにふるまうことができません。人間はまたルーティーンワークではなくクリエイティビティが求められたり、高度に複雑な作業に対しては機械よりはるかに優れたパフォーマンスを見せます。柔軟性が求められる限りにおいて、人間が行なったほうがベターなのです」と、研究を主導したヒューストン大学のロディカ・ダミアン助教授は言及している。

 研究では34万6660人のアメリカ人の生活を50年以上追跡したビッグデータを分析して、パーソナリティー特性と選択した職業の関連を探っている。これは今後、AIやロボットの導入でますます進む仕事現場の自動化の流れで、どのような人物が労働市場に留まっていられるのかを占うものにもなる。

「家庭環境を問わずに、知能が高く成熟していて、外交的で芸術とサイエンスに興味関心が高い人物は、簡単にAIやロボットにとって代わることのない仕事を選んでいる傾向が高いことを発見しました」(ロディカ・ダミアン助教授)

 この研究結果は、AIとロボットの普及による失業が増えることが見込まれている中にあって、やはり教育と個人の自己研鑽の重要性が再認識されるものになったともいえる。激動期の労働環境にあって、単純な職能はすぐさま陳腐化してAIやロボットにとって代えられるからだ。

 研究によれば、IQが15ポイント高くなれば失業のリスクは7%低くなるということだが、個々人のIQを大人になってから高めるのは容易ではない。そこで重要になるのは社交性を高めることや、生産性の向上、芸術とサイエンスに関わるアクティビティを行なうことなどが挙げられてくるということだ。

 どんな仕事であっても現状のスキルとスキームでこの先も仕事が続けられるという可能性はどんどん低くなっていると言えるだろう。社会人になってからでも広い意味でのスキル獲得、能力開発が今ほど必要とされている時代はないのかもしれない。

参考:「CNBC」、「HubSpot」、「University of Houston」ほか

文=仲田しんじ

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