世界最古の「メッセージ・イン・ア・ボトル」を発見! その伝えたかった内容とは!?

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 一縷の望みを記した手紙をガラス瓶に入れて海に放つ「メッセージ・イン・ア・ボトル」の世界記録が更新された。132年前の瓶入りメッセージには何が書かれてあったのか?

■最古の瓶入りメッセージの新記録達成

 2018年1月に西オーストラリア州の人気のビーチのひとつ、ウェッジアイランドを訪れていたトーニャ・イルマン氏と妻のキムさんは砂丘地帯をドライブ中に砂にタイヤをとられてしまうハプニングに襲われた。

 車輪が空回りするばかりで車は走れそうにもなかった。ロードサービスに連絡したがすぐには来れないということで、せっかくなら美しい砂丘を少し散歩してみることにしたのだ。

 海岸沿いにはゴミや漂着物が目立ったが、イルマン氏はなかなか魅力的な年代物のガラス瓶を見つけて拾って持ち帰ることにしたのだ。本棚の飾りにちょうど良さそうだと思ったという。

 瓶の栓はなくなっていて中は砂で満たされていた。瓶を振って少し砂を出すと、紙巻タバコくらいの大きさの細長い紙の巻物の先端が見えたのだ。

 車の問題も解決し、イルマン夫妻はこの瓶をいったん家に持ち帰ってから詳しく調べることにしたのだが、丁重に巻かれた紙をよく乾かしてから拡げてみると、印刷された用紙であることがわかった。文字はドイツ語で書かれてあり、かすれて判別し難いものの手書きで記入されている箇所もあることが確認できた。

 西オーストラリア州立博物館の専門家に調べてもらったところこの瓶入りメッセージは、1886年6月12日にドイツ船籍の船・ポーラ(Paula)がインド洋上で海流の調査のために海に投下したものであることが判明した。なんと132年前のものであり、記録に残されているこれまでの最古の瓶入りメッセージである108年を優に超える“新記録”達成となった。

 この時代、ドイツは国家ぐるみで海流の流れを調査しており、こうした瓶入りメッセージがドイツの船から数千本も海に放たれていたという。印刷された用紙には船と船長の名前や投下日時はもちろん、座標や航路ルートが船長によって記入されている。また末尾には発見者に対してこの用紙を実験の主催者であるドイツ・ハンブルクにある海洋調査組織に送るか、あるいは最寄のドイツ領事館に渡すことを要求するメッセージも記されている。その際には詳しい発見場所や日時の報告も求められる。ちなみに海に流された数千本の瓶入りメッセージのうち、実際に発見者から送られてきた用紙は662枚で、最も最近のものでも1934年にデンマークで発見されたものだ。

 世界最古の「メッセージ・イン・ア・ボトル」はもはや本来の目的には適わないものになってしまったが、海洋調査が本格化した時代を物語る“メッセージ”であるとも言えそうだ。

■2600年前の“裏メッセージ”とは

 132年前の瓶入りメッセージにはなんともロマンをかきたてられるが、それよりもはるか昔の2600年前の古代人のメッセージが最近になって発見・解読されている。最新鋭のマルチスペクトル映像技術を使って2600年ぶりに日の目を浴びたメッセージとはいったいどんな内容なのだろうか。

 古代ギリシアや古代エジプト、古代イスラエルなどでは今日の紙の代わりに「オストラコン」と呼ばれる陶器の破片に文字が記されて手紙や公的文書として使われていた。

 今から2600年前、古代イスラエルにおいて滅亡直前のユダ王国の前線哨戒基地で書かれたとされる16枚のオストラコンが2016年にイスラエル・テルアビブ大学の研究チームによって解読されている。その内容は、日々の哨戒活動に携わる兵士たちの物資や食品のリクエストなどありふれた日常のことがほとんどであった。

 当時の兵士たちの間にあっても古代ヘブライ語の読み書き能力がかなりあったことが示されることにもなったのだが、実はこのオストラコンには“裏メッセージ”もあったことが判明してさらに興味深い展開を迎えている。

 オストラコンの表には、インクを用いてくっきりと文字が刻まれているのだが、実はその裏側にもインクを用いずに刻まれた“裏メッセージ”が記されていたのだ。

 裏側に記されていたかすかな文字列を検出できたのは、キャノン製デジタルカメラによるマルチスペクトル映像技術のおかげである。異なる光スペクトルをカバーする一連のフィルターを使用して陶器を撮影し、編集ソフトで処理して肉眼では見えない文字列を浮かび上がらせたのだ。

 ではオストラコンの裏に刻まれていた50文字で構成された17単語の意味とは?

「ワインがもっと欲しい!」

 というリクエストだった。この前線基地には常時20~30人の兵士が駐留して任務にあたっていた。いつ敵が攻めてきてもおかしくない前線基地で、兵士たちの士気を保つには食糧と共にワインもかなりの量、必要だったということだろうか。

 2600年ぶりに明かされた歴史的な重みに満ちたメッセージとしては、その実際の内容は脱力モノかもしれないが(!?)、研究チームは今回功を奏した手法を、ほかの歴史的遺物にもいろいろと試してみることを計画している。古代の人々が発していた意外なメッセージが今後も明らかになるかもしれない。

■8000年前の犬もリードで繋がれていた!?

 2017年末には、8000年前の岩絵(ロックアート)にリードに繋がれた犬の姿が発見されている。太古の昔から人間は犬を飼い馴らしていたことを示すメッセージであると言えるだろう。

 ドイツ・マックスプランク研究所の研究チームがサウジアラビアのシュワイミス(Shuwaymis)とジュバ(Jubbah)で多数発見されている岩絵を詳細に分析したところ、少なくとも349匹の犬の絵を特定した。そして個々の犬の描写を詳しく見てみると、首に紐を繋がれている犬の姿が少なくないこともわかった。この時代から人間たちは犬を飼い馴らすノウハウを蓄積していたことが窺えることになる。

 ある岩絵では1人の人物が13匹もの犬を引き連れて弓矢で狩りを行なっている姿が描かれているのだが、犬のうちの2匹は狩人の腰から伸びるリードで首を繋がれている。この2匹はまだ狩りを教えている最中で“見学中”ということなのかもしれない。

 この岩絵が書かれた正確な年代は判明していないのだが、研究チームによれば少なくとも8000年から9000年以上前に刻まれたものであると主張している。現在確認されている“最古の犬の絵”は約8000年前のものとされるイランの陶器の犬の絵なのだが、研究チームの主張が正しければ“最古の犬の絵”の新記録となるかもしれない。いずれにしても“リードでつながれた犬の絵”としてはすでに最古のものである。

 ともあれこの岩絵はアラビア半島での犬が飼われていた実態を示す貴重な歴史的資料であり、狩猟において犬が重要な役割を担っていたことを示すものにもなる。この時代にすでにかなり洗練された犬のしつけが行なわれていたのだろう。犬と人間の深く固い“絆”を感じさせてくる話題だ。

参考:「Science Alert」、「Tel Aviv University」ほか

文=仲田しんじ

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