不倫中の人物はその声で簡単にバレるってホント?

サイコロジー

 有名人カップルの離婚や破局の話題にはこと欠かない昨今だが、誰しも当事者にはなりたくないだろう。どうやってカップルの仲を良好に維持していけばよいのか。これまで考えられていた以上に、この問題に苦心する人々が多いことが最近の研究で指摘されている。

■“ラブラブ”なカップルが減少中!?

 晩婚化、非婚化がますます進み婚姻件数の減少に歯止めが効かない日本社会だが、その一方で離婚率は下げ止まる気配を見せない。婚姻していないカップルの“破局”もおそらく相当数あるのだろう。

 カップルの冷え込んだ関係に悩まされている人も少なくないと思われるが、こうした悩みは今日においてはもはや普通であることが最新の研究から報告されている。

 キプロス・ニコシア大学の研究チームはキプロス在住の成人女性1116人、成人男性780人に調査を行ない現代のカップル事情を探っている。収集した回答データを分析したところ、全体の半数もの人々がパートナーとこれから親密な関係をはじめること、あるいは現在の親密な関係を維持することのいずれかにおいて困難を感じているという実態が明らかになった。パートナー関係の悩みはもはやごく普通のことであったのだ。

 その中でも全体の5分の1にあたる人々は、親密な関係をはじめることにも維持することにも困難を感じていて、そもそもカップルの関係を結ぶことができそうもないと諦めているという。この傾向は男女の性差にあまり関係なくあらわれていて、年齢にもあまり関係がない。つまり中高年のカップルだからといって、関係改善がうまくできるとは限らないのだ。

 調査からわかるのはパートナーを引き止めて関係を維持することにかなりの困難を感じていたとしても、それは成人のうち2人に1人が同様の状況にあるため決して特別なことではないということだ。そしてそれは当人に非があるわけではなく、社会の人間関係が変化したことが原因であり、これまでのステレオタイプなカップル関係は今の状況には適していないのだと研究チームは説明する。

 カップルや夫婦の結束は、男性間の競争が激しい伝統的な“男社会”において固いものになっているという。しかし今日の多様化した人間関係においては、社会の中では男性間の競争はきわめて限定されたものになり、そのぶん男女のカップルの結束も緩くなっている傾向があるということだ。現代社会の人間関係は良かれ悪しかれ人類学的に“進化”してしまったのだ。

 これまでの研究ではパートナーとの良好な関係を維持できない男性は、幼少の頃に母親との関係が良くなかったからであるという説明が支配的であったのだが、今日の社会が直面している事態はもはやそのようなレベルを超えた人類史的な変化に晒されている。

 価値観と性的指向の多様化に加えて、SNS全盛のネット社会もまたこれまでの古典的なカップルの関係性の維持を難しくしているのかもしれない。いわゆる“ラブラブ”や“熱愛”と評されるカップルはひょっとすると今後どんどん減っていくのかもしれない!?

■不倫経験者はその声で簡単にわかる!?

 カップルの関係悪化の元凶であり、また関係が冷え込んだカップルに起りがちであるのが“不倫”だ。はたしてパートナーがあなたを裏切って不倫をしているのかどうか、実はその声を聞けば我々はかなりの確率でウソが見抜けるというから興味深い。

 米・オルブライト大学の研究チームは実験参加者に、成人の男女それぞれ10人が「ワン、ツー、スリー……」と10数えている声を聞いてもらい、声を発している人物がウソつきであるかどうかを10段階評価で採点してもらう実験を行なっている。10人の男女はいずれも1度以上の異性との交際歴があるのだが、その半数は交際中の異性に対して不貞を働いたことがあると自己申告している。つまり半数が不倫経験者だ。そして20人の声は音声編集ソフトを使って高音と低音に加工したものも用意された。

 結果は驚くべきものであった。声を評価した参加者は、きわめて高い確率で不倫経験者の声を“浮気度”が高い人物であると評価したのである。もちろん、声以外の付随する人物情報は一切知らされてはいない。むしろ、余計な情報がないほうがバイアスがかからずに声だけで正確な判断が下せるのかもしれない。

 ちなみに音声を高音・低音に加工しても、評価にはほぼ影響しなかったのだが、唯一の例外として一般的に男性は低い女性の声をよりセクシーに感じているので、そのぶん“浮気度”が高いと評価する傾向が見られたという。

 我々は先入観を持たずにその人物の声を聞くだけで、“浮気度”はもちろんのこと、人種、社会的地位、性格的特徴から、なんと身長、体重、体つきや顔の左右対称性までをも突き止める能力が本来的に備わっているというから驚きである。しかしこの素晴らしい能力のメカニズムは専門家にもよくわかっていない。

 それでもいくつかの仮説が考えられ、そのひとつに発話の明瞭さが挙げられる。不明瞭な発音で言葉を濁して話す人物は何か隠し事をしているからであり、聴く側も疑わしく感じられるのではないかということだ。

 もうひとつは声と話し方でかなり正確に判別できる外向性である。外向的な人物はもちろん快活で人当たりも良いのだが、実はその声を聴いて評価する側にしてみれば、かなり疑わしさが生じてくるという。つまり外向的な人物の声からは“演技”や“虚飾”がきわめて強く感じられるので信頼感も低まり、その結果“浮気度”が高いと評価されるのである。

 科学的に解明されていないだけで、我々は声でその人物の“人となり”をかなり正確に判別できる能力があることは間違いないのだろう。SNS全盛の時代にあって、ややもすれば“出会い”もテキストのみで行なわれてしまいがちだが、ネット上で知り合った人物とロマンティックな接触をする前には、ぜひとも一度は音声通話やビデオ通話をするべきであると、余談ながらも研究チームは推奨している。どうやらその人物の声から受ける印象をもっと信じてもよさそうだ。

■“ひとめぼれ”は本当の恋ではない

 その人物の見た目やメッセージの内容よりも声からの印象をもっと信用してよいことが指摘されているのだが、それでもビジュアルの影響からはなかなか自由になれないだろう。見た目の第一印象が強く影響した結果に起り得るのが“ひとめぼれ”だが、しかし“ひとめぼれ”にはやはり慎重になるべきであると指摘する声があがっている。“ひとめぼれ”は本当の恋ではないというのだ。

 オランダ・フローニンゲン大学の研究チームが2017年11月に心理学系ジャーナル「Personal Relationships」で発表した研究では、オランダとドイツの学生396人を対象に恋愛事情を探る大規模な調査と実験を行なっている。

 実験の中には、初見の人物の魅力の評価やその人物から引き起こされる感情、さらに「ひとめぼれをした経験がある」かどうかを尋ねる質問などもあった。

 一方で実際に初対面の男女同士で短い時間の“お試しデート(スピードデーティング)”をしてもらい、その後の感想や感情面の変化などを詳細に申告してもらう実験も行なわれた。

 調査と実験から得た大量のデータを分析したところ、“ひとめぼれ”は本当の恋愛感情ではないことが浮き彫りになったのだ。“ひとめぼれ”の根底には性欲があったり、あるいは単純にその人物の魅力的な外見に目を奪われていたり、過去の何らかの体験を思い出すきっかけになったりすることであり、決して愛情があるわけではないということだ。

 調査と実験では32人の学生が49回、いくつかの状況において「ひとめぼれをした経験がある」と申告したのだが、驚くべきことにその“ひとめぼれ”が実を結んだという回答はゼロであったのだ。

「今回の研究で“ひとめぼれ”は、情熱的な愛情でもなければ一般的な恋愛感情でもないことが示唆されました」と研究チームは結論づけている。

 このように“ひとめぼれ”は一種の勘違いなのかもしれないが、もちろんこの勘違いがきっかけで本当の恋が育まれるケースもないわけではないだろう。とはいえ後の後悔を招かないためにも“ひとめぼれ”体験にはくれぐれも慎重になったほうがよさそうだ。

参考:「ScienceDirect」、「SAGE Journals」、「Wiley Online Library」ほか

文=仲田しんじ

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