“一生の友”は実在するのか!? 25歳で迎える“人気のピーク”後の友人関係とは

サイエンス

 スマホでのコミュニケーションではSNSやLINEなどの比重が増すため、相対的に音声通話は確かに減少する傾向があるだろう。だが通話のやり取りが減ったのは本当にスマホのせいだけなのか? あまり直視したくない現実かもしれないが、最近のビッグデータ分析では20代半ばで電話で連絡をとりあう友人知人が着実に減りはじめる傾向が浮き彫りになっている。

■25歳が人生の“人気のピーク”だった!?

 フィンランド・アールト大学と英・オックスフォード大学の合同研究チームが2016年4月に発表した研究は、欧州各国在住の320万人の携帯電話ユーザーの通信記録を扱ったビッグデータ分析であった。この研究で、人生において男女ともに“人気のピーク”が25歳であることが明らかになったのだ。つまり、たいていの人は25歳の時に最も電話の着信数が多いのである。

 その内訳もなかなか興味深い。“人気のピーク”である25歳では、電話をする仲にある友人知人が男性は平均19人、女性は平均17.5人である。しかし人気下降の“落差”が大きいのは男性のほうで、ピークを過ぎてから女性を上回るペースで友人を失い、39歳の時点で友人知人の数が男女逆転する。そしてさらに40代半ばまで同じペースで友人知人を失っていくということだ。

 しかし45歳ほどでいったん友人知人の減少に歯止めがかかるという。その後10年ほど、つまり45~55歳までの間、少ないながらも連絡を取り合う仲間の数は一定のまま保たれるのだ。これはおそらく、自身の子どもたちが結婚や出産などを迎えるためにこの時期に頻繁に身内で連絡を取り合っているからだと考えられるという。

 とはいえ残念ながらこの時期を過ぎれば、つまり55歳から再び電話をかけあう友人知人と、着信の回数は減りはじめていき、それが人生の終幕まで続くのだ。

 連絡を取り合う友人知人の側にも変化が見られるという。人気のピークである25歳前後の若い時代は、電話をしあう仲の友人知人は同世代がメインであるのに対し、50歳を過ぎると電話する相手は若者の割合が高くなってくる。これはもちろん、第一には自分の子どもたちのとの電話連絡だろう。最も頻繁に連絡を取っている人物はユーザーにとっての異性であるというデータも出ているが、これはもちろんパートナーや配偶者であり、この点ではなんら不自然なところはない。

 そして研究者たちは、今回明らかになった傾向は電話だけの話ではなく実際に顔を合わせて場を分かち合う対面コミュニケーションにおいても、この“グラフ曲線”に順ずるものであると考えている。さらに、今回の研究は民族や文化に関わらずに適用される普遍的傾向であると見込まれるということだ。

 それにしても早々と25歳に“人気のピーク”を迎えてしまってからのその後の急落ぶりはショッキングとさえ形容できそうだ。そして人気凋落後の人生も長いのである。

■友人が減る時期に見られる5つの事態

 友人知人を失う場合、まさに“自然消滅”と形容するしかないケースも多いだろうが、やはりよく検分してみればいくつかちゃんとした理由がある場合もある。友人を失うことは一概に悪いことばかりではないということだが、良くも悪くも友人を失う時期に直面する5つの事態があるともいわれている。

●警戒心の高まり
 年齢を重ねるほどに、自分が獲得してきたものを守ろうという姿勢が強まってくるのは自然なことだ。そして自分の周囲に垣根を張りめぐらせ、人目につくことを避けるようになるために、友人を失ったり、新しい友人を得る機会を逃したりすることもある。

 だがそんな人物だからこそ、それまで培ってきた人生経験から何かを学びたいと思う若い人々もいる。守りに徹するばかりでなく、周囲の人々との関係の中から新たな興味を見出し、意義のある人間関係を形成すべきである。

●見聞の深まり
 人生経験が増すということは、世界に対する見聞も広まっているということにもなる。知識と技術が欠けていたためにこれまで頼りにしていた人々を、その後は必ずしも必要としなくなる事態にもなる。同じ理由で子どもたちなどこれまで守ってきた人々が庇護を必要としなくなることもある。こうして失う人間関係も出てくるが、決して後を追うことなく自身の新しい生活に乗り出したい。

●新たな“聴衆”
 古くからの友人との間ではありふれた昔話であっても、若い人々には実に新鮮な内容として受け止められることが往々にしてある。これまでの友人を失っても、新たな“聴衆”のために、これまでの体験談を語ることで新たな友人を得る機会になる。

●残された時間の少なさ
 当然ではあるが齢を重ねるほど、今後の残された時間はますます貴重なものになってくる。極論すれば、惰性でつきあい続けているような人間関係などは、貴重な時間をドブに捨てているようなものだ。したがって今後の人生を真面目に考えるほど、一緒に時を過ごすべき人々を自分から選んでいかなければならない。

●率直さが第一
 若い時期にあっては、手の内を明かさない物言いで相手と駆け引きをすることも往々にしてあるだろう。しかしミドルエイジを過ぎてからはこのような回りくどい関係は耐えられないものであり、排除すべきものでもある。そのぶん自分自身にも誠実さが求められるのであるが、この認識を契機にして友人が減ることもあれば、新しい友人を得るきっかけにもなるだろう。

 25歳以降に友人知人を少しずつ失っていくのはある意味では避けられないことであるのだが、一方でそれは決して悪いことだけではない。物議を醸しそうな物言いだが「友人を失わないということは、自分が成長していないということだ」という言い分さえある。中高年を過ぎて以降は、惰性になってしまっているような交遊関係を続けていくことには、お互いの成長のためにも見直すべきなのかもしれない。人生の“人気のピーク”を過ぎてからは、友人を失うことを必要以上に恐れても仕方がないということだろうか。

■自分を見つめ直すことで生まれる新たな出会い

 有意義な関係を築ける友人を中高年以降になってから作ることは可能なのか? もちろん齢を重ねるほど友だちを作ることが難しくなってくるのは多くが実感しているところだろう。しかしそれは決して不可能なことではないという。

 友人を作る最もてっとり早い方法とし思い浮かぶのは、行きつけの店(特に居酒屋やバー、スナック)を作って常連客の仲間入りをしたり、ダンス教室などの習い事に参加することなどだが、こういった安易なアイディアはいったん保留すべきだと「Huffington Post」の記事で主張しているのは、60代向けコミュニティサイト「Sixtyandme.com」の開設者で著述家のマーガレット・マニング氏である。マニング氏はサイトの開設にともない、数百人の中高年(主に女性)の話を耳にしたということで、その話から中高年以降の友人作りを成功させるには重要な4つのステップがあることを見出したという。

●今の自分をよく知る
 新たな友情を求めるよりも先にすることは、決して若くはなくなった現在の自分をあらためてよく知ることだ。

 それには今から過去5年間の生活をよく反芻してみることがよい“気づき”になるという。この5年間で家族のために犠牲にしたと思える物事、置き去りにしていた情熱、精神的に傷つけられた体験、後悔したことなどを思い起こしてもう一度自分を見つめることが必要だという。

 決して自分を卑下する必要はなく、さまざまな制約の中で努力してきた自分を評価して新たな課題を見つけ、活力、勇気、自信を取り戻すことがまず最初に求められるのだ。自分に自信がない状態で新たな出会いがあってもそれは有意義なものには発展しないからだ。

●体力、気力の充実
 自信を取り戻したら、次は体力と気力の充実をはかるべきだという。僅かな時間でもよいから、1日の中でウォーキングやストレッチ、軽いヨガなどの運動を行なうようにしたい。また瞑想などの精神的な修練も同時にはじめてみたい。

●自身が魅力的な人物になる
 友人になりたい人についていくのではなく、自分の中の情熱を追求することを優先したい。趣味や特技を通じて自分を磨いたりするなどして、友だちになりたいと思わせるような人間に自分自身がなってしまえば、確かに出会いは自ずから広がってくるのだ。

●積極的に“仕切る”
 受身の姿勢で出会いの場と機会を求めるだけではなく、自分からイニシアティブを握って人を“おもてなし”する側に回りたい。先の3つのステップを踏んできているのなら、決して難しいことではない。自分から積極的に働きかけていくことで新しく有意義な出会いが生まれてくるということだ。

 新しい友人を求めるということは、新しい自分になるということでもあるのだろう。齢を重ねるうちにおそらく誰もが経験するであろう友人知人の減少だが、自分を見つめ直すことで新たな出会いがまだじゅうぶんに可能であるというのは希望が膨らむ話ではないだろうか。

参考:「Independent」、「Huffington Post」ほか

文=仲田しんじ

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