有名人の不倫や不倫疑惑報道がメディアを賑わせているが、その一方で意外なことに不倫についての科学的研究が深まりを見せていて興味深い。
■浮気グセは子どもに受け継がれる!?
不倫が“文化”であるとすれば、あまり褒められた話ではないが一部では脈々と受け継がれているのかもしれない。一説では既婚者アメリカ人カップルの不倫率は約15~20%であるともいわれている。
テキサス工科大学の研究チームが学術ジャーナル「Personal Relationships」で発表した研究では、“不倫”をしやすい傾向が親から子どもへ継承されることが指摘されている。
合計1254名の実験参加者による3つの調査で、親の不倫は子どもに“移る”傾向が高いことが明らかになった。つまり、親同士が不誠実な関係にあると感じた子どもは、自身が大人になった時にパートナーを騙す可能性が高いということだ。
親の不倫経験は、不誠実さの受容性が高いことを示す印象深いメッセージを子どもに伝えて内在化され、子どもの思考様式の形成に大きな影響を及ぼしていると研究チームは説明している。
家族内で“不倫関係”が受け継がれるとはなんとも残念(!?)な話だが、要するに両親の関係が割り切ったドライな関係であることを実感した子どもには、そうしたパートナー関係もまた普通のことであると“刷り込まれて”しまうのである。やはり我が子の前での夫婦ゲンカなども子どもの発育に無視できない影響を与えるということになるだろう。子どもは親を見て育ち、考え方や価値観において親から大きな影響を受けていることがよくわかる話題だ。
■一度浮気した者はまた浮気する?
英語のことわざには「一度浮気した者はまた浮気する(Once a cheater, always a cheater)」という表現があるが、どうやらこれが科学的にも正しそうであることが最近の研究で指摘されている。
米・デンバー大学の研究チームが2017年8月に「Archives of Sexual Behavior」で発表した研究では、過去5年間に2つ以上のパートナー関係を持った異性愛者の独身男女484人(女性329人、男性155人)の“恋模様”を詳しく分析している。
調査で鍵となった質問は「真剣な交際をはじめてからパートナー以外の誰かと性的関係がありましたか?」である。つまり不倫や浮気を問うものだ。
収集したデータを分析した結果、今は真剣に交際しているパートナーが将来浮気をする確率を占う確かな指標が導き出された。それは「過去の不倫経験」である。過去に1度でも不倫・浮気経験がある者は、まったくない者よりも3倍、将来浮気をしでかす確率が高かったのだ。
今回の研究で教訓になるのは、将来にわたってより良いパートナー関係を結ぶためにも、相手の過去の交際歴に注意を払う必要があることであると研究チームは指摘している。
単純に浮気性のパートナーを避けるという意味ばかりではなく、過去の不倫体験の経緯をカップル間で共有できれば将来のリスクに対処できることにもなる。
これから交際をはじめる可能性のある相手に自分の過去の恋模様や不倫体験を率先して話す者はあまりいないとは思うが、それでも2人で話し合いの機会を持ったときには質問してみたり、相手を知る第三者から間接的に聞いてみたりと“探りを入れる”ことはそれなりに意味があることにもなる。
「恋は盲目」になることも一面の真実だが、「一度浮気した者はまた浮気する」こともサイエンス的事実であることも憶えておいて損はないだろう。
■セックスか愛情か? 不倫における男女の観点の違い
どうして不倫、浮気は痛烈に非難されるのか。当然ではあるが不倫はカップルの仲を決定的に変化させてしまうからにほかならない。不倫はカップル間において基本的には許すことができない行為であるからだ。
「(不倫が)許されたと思っても、実際にはそうではないとすれば、コストは高くなります。そして許されていないと思えば、関係を修復するのにあまり努力しなくなるでしょう」と語るのは、ノルウェー科学技術大学のモンズ・ベンディクセン准教授である。
言うまでもないことだが、パートナー関係はお互いが完全に信頼できるからこその関係であり、パートナーが言うことを100%信じることが前提となっている。しかし不倫は信頼に基づくパートナー関係に致命的な楔を打ち込むものになるのだ。
不倫が発覚した場合でも、それが“初犯”であるならおそらく過半数のケースで結果的には許されるだろう。しかしその後に残る“禍根”はきわめて深刻なものになる。
最終的には許すことになった騙された側のパートナーを最も困らせるのは、二度と起らないという保証がどこにもないことである。この事実によって、騙された側は相手と距離を置くことになってしまうのだ。こうしてセックスレスになるケースも多いという。
そして不倫でよく問題にされるのは“体の関係”があったかどうかなのだが、実はこれはきわめて男性的な考え方で、女性においては“体の関係”それほど重要なことではないということだ。
92人の男女の大学生(異性愛者)を対象とした調査で、女性は感情的な不倫により強い脅威を覚える一方、男性は肉体的な不倫により脅威を感じることが浮き彫りになっている。したがって女性にとって不倫は“体の関係”の有無よりも、そこに“愛情”があったのかどうかが重要であるということになる。不倫における男女の観点の違いが指摘されていて興味深い。
参考:「Wiley Online Library」、「Springer」、「APA PsycNet」ほか
文=仲田しんじ
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